第五七話 キズナ
「うわあああっ! サダトラが……サダトラあっ!」
悲鳴のようなリリーの声が、戦場に響く。
彼女は足を引きずりながら、必死にサダトラの元へ駆け寄った。
その周囲を取り囲むように、ラストマンの群れがじりじりと距離を詰めてくる。
リリーは震える手で閃光の剣を握り直し、歯を食いしばった。
「……サダトラに……触れたら……許さない!」
突っ込んでくるラストマンを、渾身の力で切り払う。だが、背後――死角から、別の個体が体当たりを仕掛けてくる!
「リリー!」
ズシャッ!
間一髪、ハヤブサが割り込んで、ラストマンをなで斬りにした。
「仲間に何すんだよぉッ!」
「リリーちゃん!下がってっ!」
アスカが前に出て剣を構え、ユキもすぐ後ろに回り込み、盾を構える。
全員が必死だった。
――何としても、サダトラを守る。
俺も右足を引きずりながら、サダトラの元へ向かうが……
スス……スス……
不気味な気配。上空を旋回していたドラゴンの視線が、ついにこちらへと向けられる。
「……今、来られたら……終わりだ……!」
俺はよろけながら立ち上がる。だが次の瞬間、右足の激痛に耐えきれず、膝から崩れ落ちた。
「くそ……こんな時に!……どうしちまったんだ! 俺の右足!」
バサ……バサ……!
クアアアアッー
その時!俺たちの前に……
スモールドラゴン、アオが立ち塞がり、全身を震わせながら、けたたましく威嚇の声を上げる!
一瞬、ラストドラゴンが怯んで動きを止める。だがすぐに、再び上空へ舞い上がった。
――勢いをつけて、突撃するつもりだ。
俺は思わず宙に向かって叫ぶ。
「ダメだ! アオ! 吹き飛ばされるぞ!」
ズシャッ!
叫んだ拍子に体勢を崩し、俺は砂地に倒れ込む。
ドラゴンはゆるりと首をこちらに向ける。
「くそ……終わりか……」
その瞬間――
倒れた衝撃で、背負っていたバックパックが外れ、口が裂けた。中から、アイテムが砂の上にばらばらと転がり落ちる。ほとんどはグラディオスのカプセル。
だが――。
俺の視界に、赤い卵の形をしたカプセルが映った。
「も……もしかして……!」
俺は必死に這い寄り、赤い卵を掴み取る。
「……アオ! こっちだ! こっち来てくれ!」
抜群に気の利くドラゴンは、すぐに察して舞い降りてくる。俺は息を切らしながら、その背にしがみつき――
「頼むぞ!アオ!」
バサァッ!
アオが、再び宙へ舞い上がった。
一瞬、地上に目を向ける。
「絶対、ここから離れないっ!」
リリーはガレキを背に、倒れ込むサダトラの前に立ち塞がり、盾を構え――ラストマンの突撃を受け止め続ける!
盾を握る手は擦り切れ、血がにじんでいた。
「んもおっ!しつこいっ!」
ユキもその隣で、必死にリリーを支える。
「一文字流、斬撃!」
「ライトニング・ブレード!!」
ハヤブサとアスカが、スキルを込めた剣を振るい、無限に湧き出るラストマンをなぎ倒す。
ハヤブサは雄叫びをあげる。
「俺たちは、最強のパーティだ!!」
ズシャッアッ!
「誰一人、死なせねえっ!!」
アスカも必死に応戦!
「ルキアなんかに……負けるもんかっ!!」
東京ギルドの最強メンバー、一致団結。そのキズナが、運命を切り開く!
――あとはラストドラゴンだ!
俺は、赤い卵を高く掲げ、魔力を込める。すると……アオの体が光に包まれ……
そして現れたのは……
三本の首を持ち、ラストドラゴンにも劣らぬ巨体を誇る、多頭竜!
そう、アオはアイテムでちっさくなってるだけで……これが、本来のパワーアップした姿!
グアアアアッ!
雄叫びを上げて、ラストドラゴンに立ち向かう!
「行くぞ! アオ!」
最後の望みをかけて、鮮やかなブルーの多頭竜が、漆黒の闇を切り開いてラストドラゴンへと迫る!
スアアアア……
すかさず、敵は赤いプレスを放つが……
「ファイア!!」
俺の号令と共に、三体の口から一斉に炎の奔流が放たれ、敵のブレスを吹き飛ばす!
グギギァ…………
ルキア操るラストドラゴンも巨体を揺らして、炎を間一髪で避ける。
「後ろへ回り込め!」
スピードはほぼ互角。右へと回り込み、背後を狙うが……ラストドラゴンは加速しながら上昇。アオも必死で追う。
そして、敵は一気に反転!――高い位置から勢いをつけて、アオ目がけて突進。
「避けろ! 右だっ!」
アオは咄嗟に巨体を右にねじり……その脇スレスレを、漆黒のラストドラゴンが通り過ぎる。
「アオ、反転っ!」
すぐさま首を下に向ける。
ラストドラゴンも、同時に振り返るが――
ほんのわずか数秒、アオの方が早い!
「ファイア!」
――三本の首から、炎の柱が吹き出す!
そのブレスは、敵の羽を焼き……うめき声とともに黒い巨体が地上に落下する!
そこへ、ハヤブサとアスカが駆け付け、同時に斬りかかる!
「行くぞ……リンク……」
「閃光の剣ッ!!」
ズシャッアッ!!
巨大な体が裂け、無数の光の帯が噴き出すように溢れ出した。
「……た……倒した!」
……!!
その直後、俺はまた頭痛に襲われ……
レトロゲームスキルがぐしゃりと折れ曲がる感覚に襲われる。
ルキアは……最後の魔力を振り絞り、またもや俺のレトロゲームスキルに干渉してきた。
頭を抑えながら正面を向くと……
ブワアア……
燃えるような、二筋の真っ赤な帯が目の前を横切る。
「な……なんだ!?」
いよいよ佳境へ!
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