第五四話 ザ・ラスト
……重い沈黙の中、サダトラが右手をすっと挙げる。
「僕は……行きます。攻撃陣は多い方がいいですよ! 三人で行きましょう!!」
「……サダトラ……」
ハヤブサは一瞬、言葉に詰まる。
若い命を、ましてやまだ回復しきっていない体で――
正直、連れて行きたくはなかった。
あの時のような後悔を、もう二度と繰り返したくない。
だが、その迷いを断ち切るように、今度はアスカが一歩踏み出す。
「私……入る!」
続いて、ユキが前に出る。
「私の父さんも、母さんも、命がけで戦った! みんなを守るために!……私だけ……ここで待ってるなんて……」
拳をぎゅうっと握りしめる。
「絶対に、できない!」
リリーも強いまなざしを向ける。
「そもそも、私がいないと何もできないでしょ! もちろん行くから!」
やっぱり、止めても聞かないよね。
俺はハヤブサに告げる。
「……どうやら、覚悟を決めなきゃいけないのは、俺たちの方だな!」
メンバー全員でポータルを取り囲み、互いの手を取る。そして、ハヤブサが力強く号令をかける。
「みんな!絶対に、ルキアを倒して……」
「生きて帰るぞっ!」
「おおおおおっ!!」
叫びと共に、全員の想いがひとつになる。
シュウウウウ……
全員でポータルに飛び込み、決戦の地"ザ・ラスト"に向かう!!
パタパタパタ……
アオも、羽をパタつかせて、その後を追う!
……ふと気づくと……
一面に広がる闇の空間。それは、どこまでも果てしなく続いていた。
そして、虚空には大小さまざまな浮島がぽかりと浮かび――その中心には、ひときわ大きな島が鎮座している。
俺たちは――
ばらばらに、小さな浮島の上へと放り出されていた。
一歩足を踏み外せば、そこは奈落の底。恐らく、奈落はスキル内の出来事。落ちてもベッドまで戻れるだろう。
――しかし、一つ問題がある。アイテムが全部、失われるのだ!それは、結局……死を意味する。
俺は大声で呼びかける。
「真ん中の大きな浮島に集まるぞ! 落ちると、アイテムロストだ。足場を作って、慎重に!」
「わかった!」
「やあああ、怖いっ!」
慎重にブロックで足場を作り、中央の大きな浮島に全員集まる。
パタパタパタ……!
アオはスキル内でも飛べるので、難なく合流。
浮島は一面、ざらついた砂に覆われ……中央に黒い台座のような建築物が置かれている。その周囲には、八本ほどの高い柱が立ち並び、その先端では、かがり火のような炎がゆらゆらと揺れていた。
俺たちの周囲には――
人の倍くらいの大きさ、黒いカクカクの頭に、細い棒のような体と手足をもった、不思議な生き物が大量に湧き出ている。
「ラストマンだ!」
目が合うと、一斉に襲ってくる――やっかいな存在だ。
持ち込んだ土ブロックで、まずは拠点となる屋根付きの簡単な小屋を作る。取り急ぎ、背丈ギリギリの屋根を作っておけば、長身のラストマンは入ってこれない。全員でその中に入る。
サ……アア…………
その時、不気味なほど静かに、闇の中から紫色の小さな光点が迫ってくる。
「……ラストドラゴン!」
漆黒の闇に溶け込むように、黒い巨大な生き物が姿を現した。
細長い胴体と尻尾に、巨大な羽。
目の前を通り過ぎていくその姿に――誰もが息を呑む。
そして――
闇に溶けるように、姿を見失った。
ズガガガン!
「きゃあああっ!」
次の瞬間! 回り込んだドラゴンが後方から拠点を攻撃。組み上げた拠点は一瞬でがれきと化す。
――その瞬間! ラストマンの群れ、その目が一斉にギラリと赤く輝いた!
「……もしかして!」
スス……スス……
ラストマンの群れが、一斉に瞬間移動を繰り返しながら音もなくすり寄ってくる。
ガスガスガス!
「いててっ!」
「きゃあっ!」
悲鳴があちこちから漏れる。
ラストマンの目は赤くぎらぎらと異様な輝きを見せ……群れをなして次々と襲ってくる。普通なら、ラストマンが集団行動をとる事はない。
俺はこのゲームをやり込んでいたため、その微妙な変化に気づく。
「ここの魔物はルキアが操っている! 死んだら終わりだ。気をつけろ!」
「おう!」
「大丈夫!」
「……行くわよっ! 閃光の剣!」
「まとめて相手してやる! 斬撃の剣!」
アスカとハヤブサ、攻撃陣はスキル付きの剣を構え、一斉に斬り込む!
「きゃあああっ!」
「危ないっ!」
シュアアアッ!
ユキとリリー、守備陣の前にはサダトラが立ち塞がり――群がるラストマンを斬り捨てていく。
「ここは任せて下さい!」
パサ……パサ……
その間、俺は目を凝らして――闇に溶け込みながら、静かに旋回するドラゴンを追う。
いよいよ最終決戦!
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