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第五一話 ぐるぐる巻きのサダトラ

◇◇◇◇


 ギギ……

 品川ギルドの扉を押し開けた瞬間、張り詰めていた緊張の糸が切れた。俺たちは倒れ込むように待合室へなだれ込み、それぞれソファーに体を預ける。



 受付で帰りを待っていたキリカとエミリアが駆け寄る。

「サダトラ! ひどい出血!」

「しっかりして!」

「ダイキ! 動いちゃダメよ!」

「ハヤブサ、大丈夫!?」

 ぎるぎる荘からモモカとマキオも駆けつけ、一斉に回復魔法を展開する。


 シュウウ……

 部屋全体が、淡い緑色の光に包まれる。


「サダトラ……私のために……」

 手当を受けながら、リリーが呆然とつぶやく。俺はなんとか体を起こし、彼女に声をかけた。

「安心しろ、出血はひどいが……命に関わるケガじゃない。モモカに任せれば大丈夫だ……」

 そう言い終えた所で、意識がぷつりと途絶えた。


◇◇◇◇


 翌朝――

「うう……ううん」

 品川ギルドの奥に用意された救護室。天井がぼんやりと視界に入った。全身に無数の傷を負っていたが、幸い小さな傷ばかりで――もう痛みはだいぶ引いていた。


 隣のベッドで寝ていたハヤブサが、体を起こす。

「ハヤブサ!動いて大丈夫か!?」

「お前こそな……」



 そこへキリカが朝食を運んでくる。俺たちはベッドの上でおにぎりを頬張りながら、状況を確認した。


「んぐんぐ……他のみんなは?」

「サダトラは、専門の大きな施設に移したわ。アスカとユキは隣の部屋で治療してて……ケガはあるけど軽傷よ」

「そうか、よかった」

「あと……リリーはほとんど無傷! 元気よ」

 俺はその報告に胸をなでおろす。

 東京では……電磁波使いはリリーただ一人。彼女に何かあれば、対ルキアの打ち手がなくなる。


 サダトラが命がけで守ったリリーが、ギルドの運命を切り開く!



 バタン。

 ドアが開き、リュウガが姿を現す。


「ハヤブサ! ダイキ! よく戻ったな……心配したぞ!」

「いやあ……今回もやばかった……」

 俺とハヤブサは、ベッドから半身を起こして、リュウガに昨日起きた事を説明する。スポナー、ボスラッシュ、ギガントス、そして――


「ふむふむ、要するに、最後は地下の女王様が降臨してゴブリン帝国をまとめ上げた、という事だな」


 うーん、ちょっと違うけど……色んな事がありすぎて、俺のコミュ力ではうまく説明できないな……もうちょっと補足しないと!


「ええと……女王様の名前は――エリザベスです!」

「おお! さすが、気品ある名前だな!」

 さらに話がずれたかも……


 見かねたハヤブサが口を挟む。

「とにかく、ルキアはかなり追い詰められている。早く追撃したい所だ」

 ……あ、そうそう、そういう話しないと!


「問題はサダトラだな。あのケガでは……」

「代わりを入れてもいいが……」


 コソコソ……スウ……

 その時、半開きのドアから、静かに部屋に入ってくる物影が……そして、部屋のスミにちょこんと座る。


 俺は自分の意見を話す。

「そうだな……俺はサダトラの回復を待ちたいかな」

「そのとおりですっ!」

 ……?


「リリーのスキルは重要だ。守備を万全にしたい」

「そのとおりですっ!」

 ……?


「しかし問題はあのケガだ。何日もかかると……ルキアの復活を許してしまう」

「もう行けますよ~」

 ……?


 俺とハヤブサは顔を見合わせる。

「……どこから声が……?」


 ふと部屋のスミに視線を移すと……

 二人、声を揃えて叫んだ。

「サダトラ!!」


 そこにいたのは、包帯ぐるぐる巻きのサダトラ。まるで置物のように、部屋の隅にちょこんと座っている。


 リュウガが目を丸くする。

「サダトラ! いつの間に戻ったんだ!?」

「……いや、だいぶよくなったんで、抜けてきました」

「マジかよ! 全然そうは見えないけど……」

「僕には、(リリーを守る)重大な使命があるんです! 寝てる場合じゃないです!」

「おおう……やる気は買うぞ!」


 サダトラの回復は思ったより早そうだ!

 俺たちはいったん、追撃の日を一週間後に定める。

 おそらくここが、ギリギリだろう。


 そして色々話してる時……


 ヒョコ、ヒョコ、ヒョコ


 半開きのドアから、何やら青色の物体が通り過ぎるのがチラリと目に入る。


 ……今日も、なんか騒がしい一日になりそうだ。


無事帰ってきた!

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