第五十話 地下の女王エリザベス
ズシン!ズシン!
ギガントスが一歩踏み出すたびに大地がうねるように震える。その巨影が、ゆっくり、しかし確実にハヤブサたちの方へ迫っていた。
バサ……バサ……!
アオに乗って駆けるアスカが上空から叫ぶ。
「ダイキ! いったん戻って! リリーからの伝言、戦力集中!」
「わかった!」
俺は急いでハヤブサたちと合流する。
大きな影が視界を覆い――そのただならぬ威圧感に、背筋がぶるりと震える。
「……来るぞ!」
ギガントスは怪力頼みの単純なタイプ――だからこそ、攻撃の質量と速度が桁違いだ。
ゆるりと巨大な棍棒を振り上げ……
ズシャッ!
「危ないっ!」
アリーナの床が、縦に走る稲妻のような衝撃で真っ二つに割れた。
「きゃああっ!」
「リリーっ!」
吹き飛ばされるリリー、その体をサダトラがギリギリのところで受け止める。
「おおおおっ!」
俺とハヤブサが同時に斬りかかる!
上空ではアスカがアオを操り――巨体めがけて急降下、そして一斉攻撃!羽ばたきが風圧となって砂を巻き上げる。
ズガガアッ!
ガガガッ!
閃光と衝撃。
巨体が白煙に包まれ、あたり一帯が爆ぜるように光った。
グガア……グガアア……!
うめき声が漏れるが……その巨体、びくともしない!
ズシイン!
ギガントスが右足を振り上げ――。大地が沈むほどの一撃を叩きつけた!
「うああっ!」
「きゃあああっ!」
砂煙と衝撃波が渦を巻き、俺たちは全員まとめて壁へと吹き飛ばされる。
「う……ううっ!」
全身が悲鳴を上げ、視界が揺れる。
そんな俺たちへ、待ってましたとばかりに雑魚が殺到する!
「おおおっ!」
ユキめがけて飛びかかるオークの群れ。その正面に、ハヤブサが横から割って入り一刀両断!
「きゃあああっ!」
リリーの所にも……オークの群れが襲いかかる!
「リリーに……手を出すなっ!」
そこに駆けつけたのはサダトラ!
肩口からは血がしたたり、動くだけでふらつくほどの深手。それでも必死に剣を振り続ける。
(まずい……あいつ、出血が多すぎる。このままじゃ……)
俺はよろけながらサダトラの援護に向かおうとするが――頭がガンと揺れ、視界が白く点滅する。
意識が遠のく――それでも、絶対に、あきらめない!
俺は……最後の力を振り絞って、苦しまぎれの賭けに出る。バックパックからとある物を取り出し、サダトラに投げて――叫んだ。
「……それを……リリーに被せろ!」
パシッ!
「……これは……」
サダトラが手にしたのは……ゴブリンキングが落としたボロボロの王冠!
(サンライズで、ヤツは雑魚のくせにA寝台にいた!ひょっとしたら、序列を上げる効果があるかも……)
「リリー! これを!」
サダトラが這うようにリリーに近づいて寄り添い、王冠を被せる。
…………
グア……アア……?
すると……!
押し寄せる雑魚の動きが一瞬、ぴたりと止まる!
「今だっ!」
俺は弓を取り出し、雑魚の群れめがけて……閃光の矢を放つ!
ズガ……ズガアアッ!
爆音とともに、雑魚の群れが弾け飛んだ。
「リリー!危ないっ!」
サダトラがリリーを抱き寄せ、その身を盾にして爆風を受ける。
…………
砂煙が晴れ――。
「……やったか?」
ダメもとだったが……意外と効いたな!
しかし……その間に……
ゆるり
白煙の中から、ギガントスが立ち上がる。そして再び棍棒を振り上げ――
「やべえっ!」
さすがにもう避けきれない!
その時!リリーが毅然と前に歩み出て、叫ぶ。
「控えなさい! 私は地下の女王――エリザベス・リリーよ!」
アリーナに響き渡る一喝。
グ……グア……ア??
ギガントスの動きが一瞬止まった!
効いてる……!?
俺はギガントスの周りを旋回するアスカに向かって叫ぶ。
「目だっ! 目を狙えっ!」
「りょうかいっ!」
バサ……バサ……バサ
アスカはドラゴンを操り、ギガントス正面へと滑空する。動きの止まった、敵の一つ目に狙いを定め……
弓を目いっぱい引いて、放つ!
「いっけえっ!」
シュアアアーーツ!
勝負をかけた光の矢が、一直線に走る。
ズガアアアッ!
ウグア……アアアアッ!
遂に……ギガントスの巨体は大きくバランスを崩し、膝を地に着ける!
「うおおおおおっ!」
ギリギリ動ける、俺とハヤブサが渾身の力を込めて斬りかかる!
「閃光の剣ッ!」
ズシャッアアッ!
ウゴ……オオオッ!
ギガントスは……ひときわ大きな咆哮と共に……ついに息絶える!
「……た……倒した……」
俺は足を引きずりながら奥へ進み、残りのスポナーを破壊する。
その先には、さらに深い階層へ続く階段……。
ひとまず全員、アリーナ入り口に戻り――メンバー全員で集合、状況を確かめる。
アオもふらつきながら着地し、その肩を大きく上下させていた。相当疲れてるようだ。
リリーを守り続けたサダトラの傷が深い。彼女は半泣きで呼びかけ続ける。
「サダトラ、しっかりしてっ!」
「ガーゼ! 傷口に当てて! 止血しないと!」
ユキもギガントスに吹き飛ばされて全身傷だらけだが……震える手で応急処置を行う。
俺はハヤブサと話し合う。
「スポナーは潰した。おそらく次のフロアが最後だ!」
「しかし……ダメージは甚大だな」
そして、いったんギルドに戻る事を決意する。
「ルキアの打ち手も、苦しくなっているように思える。あと少し!――戻って体勢を立て直そう」
俺たちは肩を貸し合いながら地上へ向かう。サダトラはアオの背に乗り、リリーが必死に体を支えている。
俺はその道中、リリーに質問。
「あの……エリザベスって……」
「出まかせよ! 女王っぽいでしょ?」
一瞬でこの判断!さすが司令塔、対応力すげえな……
地下アリーナでの決戦!
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