第四八話 キングゴブリンの落とし物
◇◇◇◇
俺たちは再び、ゲートウェイをくぐり抜け――ルキアのアジトへと続く地下洞窟へ足を踏み入れた。
既に道はできてるので、あっという間に地底に到着。
ヒョコ、ヒョコ、ヒョコ
スモールドラゴン――アオも、長い首を折り曲げてきゅうくつそうに、最後尾からついてくる。意外と器用だな……まあ、狭い地下ダンジョンでは、活躍の機会はなさそうだけど。
ヒュン!ヒュン!
その時、ハヤブサが叫ぶ。
「スケルトンだ! 盾を構えろっ!」
岩陰から矢の雨が降り注ぐ。
カン! カン! カン!
盾に当たって弾け飛ぶ金属音。
前回とは違い、完全に防ぎ切れている。ノーダメージだ!
俺は素早く弓を構える。
ギリ……ギリ……と弦を引き絞り――
「閃光の矢っ!」
シュタッ!
シュウウウウッ!
閃光をまとった矢が、一筋の白い彗星のように、岩陰めがけて伸びていく。
ズガン!
ズガアアッ!!
グアアアァァ……!
岩ごと、スケルトンを吹き飛ばす!
「……これは……エンチャントさえしていれば、他人のスキルも使えるんだ!」
グォ……オオ
唸り声と共に影の中から、ゾンビの群れがぬらりと現れる。俺は剣に持ち替えて、構える――ハヤブサの物理スキル「斬撃」を付与した、最強の剣!
「とおおおっ!」
ズシャアッ!
衝撃波が空間を揺らし――
わずか一振りで、ゾンビの群れがなぎ倒される!
……ていうか、みんなのスキル、超気持ちいい!
「やああああっ!」
ハヤブサたちも武器を構え、突っ込む!
「ええいっ!」
普段は戦闘に参加しないリリーも、ノリノリで敵を斬りまくる。
「一気に攻めるぞ!」
地下の空間にひしめいていた魔物たちは、瞬く間に姿を消した。
そして、更なる奥へと続く洞窟の前に立ちはだかるのは……王冠を被ったキングゴブリン!
シャキン!
俺はアスカの光スキルを付与した「閃光の剣」を構えて……一気に切り込む。
クキキキィッ!
タタタタタ……!
キングゴブリンは金切り声をあげながら、洞窟の奥へと駆けていく。
アスカがその背中を見て叫ぶ。
「ああっ!逃げた!」
俺は剣をしまいながらつぶやく。
「ほっとけ。中身はただのゴブリンだ」
「ええっ!ダサっ!」
ボスっぽいけど、めちゃ弱いんで……新スキルで瞬殺しようと思ったけど、根性もないようだ。残念!
あれ?
洞窟の入り口に鈍く光るモノが落ちてる。……逃げる時に王冠を落としていったようだ!
俺は、錆びてボロボロの王冠を拾って、手に取る。
「おいおい、アイツ……これがないとホントにただのゴブリンだぞ」
「次会った時、返してあげたら?」
「はははっ! それいいなっ!」
アスカと軽口を叩きながら、奥へと進む。
ザッ、ザッ、ザッ
たいまつの火が揺れ、岩壁に影が踊る。
さらに洞窟の奥に進んで行くと……
「ダンジョン……?」
突如、石のブロックで組まれた迷路に突き当たる。はぐれないように固まって通路を進むと……
グギギァ……
突如、オーク、ゴブリン、トロールの群れが通路から溢れ出るように迫ってくる!
最前列を歩いていたハヤブサが叫ぶ。
「でたなっ! サダトラ、行くぞ!」
「はい! みなさん、下がって下さい!」
「リンク……斬撃閃!」
通路の両端に立ち、お互いの剣を真横に突き合わせる。
「とおおおおっ!」
そして一気に、敵の群れる通路を駆け抜けた!
グアアアアッ!
真横に閃光が走り、雑魚の群れが上下真っ二つに分かれる!
ユキが感嘆の声を漏らす。
「す……すご……」
一撃で、通路の敵が霧散する!
「ナイス!」
「やっぱスキル使えるの、最高だな!」
俺はハヤブサ、サダトラとグータッチを交わす。
その先を進むと……下に降りる階段。
そこでも、まだ迷路が続く。
「とおっ!」
ズシャッ!
時折現れるゴブリンを切り捨てながら進む。
そこで俺は皆に説明する。
「こいつらは、明らかにルキアが召喚した魔物だ。湧き出る方向を辿ろう!」
そうして、その方向に進んでいくと……明らかに敵の密度が濃くなってくる。
「とおおっ!」
「ええいっ!」
「やああああっ!」
ズシャッ!
この階はやや通路が広いので、全員で雑魚を倒しながら進む。そして、さらに敵が密集する、少し広めの部屋に行き着く。
ズシャッ!
ここの敵も片付けた後……現れたのは、さらに下への階段。
ザッ、ザッ、ザッ
長い階段を降りて、苔むした石の岩で囲まれた通路を進む。この階は一本道だ。突き当たりから横に入ると……
「……!」
視界が一気に開ける。
サッカーコートほどの広大な部屋。天井も、ビル五階建て分くらいある。部屋というより、体育館……いや、大型アリーナくらいの規模だ!
その奥には、鉄の枠で囲まれた――膝下ぐらいの大きさ、立方体の箱が等間隔に十個くらい置かれている。
鉄枠の中では……ぱちぱちと不気味な音を立てて燃える炎が、チラチラと見えた。
俺は思わず叫ぶ。
「スポナーだ!」
アスカが聞き返す。
「何それ?」
「あのブロックから、敵が湧き出てくる!」
「えええっー!」
ジジジジ……ジジジジ
不気味な、火のはぜる音が箱から漏れ響く。
すると……その中の一つがまばゆい光を放ち……
現れたのは、天井いっぱいにそびえ立つゴーレム!
フォン!フォン!
他のスポナーも次々と光を放ち……
地下アリーナが徐々に魔物で満たされる!
ルキア……なんという適応能力!
「やつは……俺のスキルを分析してる!――敵が湧き出るスポナーの性質を利用して、最小限の魔力で魔物を召喚してるんだ!」
オーク、ゴブリンらの雑魚に混じって……岩ゴーレムや白トロール、ブラッディベアなどボスクラスも次々と現れる。
「おいおい……ボスラッシュじゃねえか!」
昔のシューティングゲームで、最後の面で今までのボスが全機勢揃いで襲いかかるコトがある。そんな感じ!容量に制限のある昔のゲームではよくあったな……
……とか懐かしんでる場合じゃない!
地下アリーナで決戦の幕が上がる!
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