第四六話 くっつけてみない?
翌朝――
空はすっきりと晴れ渡り、品川ギルドの建物は朝日を浴びて静かに輝いていた。俺は玄関前で、リュウガに今回の成果と今後の予定を簡潔に報告する。
リュウガは腕を組み、うなずいた。
「ブロックの世界か……全然想像つかんな。とにかく、無茶はするなよ!」
「ダイキ! 気をつけてね!」
「が……がんばって!」
ギルドに残るメンバーたちは、今日も負傷者の治療と残敵の掃討に奔走する。その甲斐もあって、品川は、ようやく平穏さを取り戻し始めていた。
あとは……ルキアと、その本拠地を落とすのみ!
この混乱を、二度と繰り返さないために。
そう思った、その瞬間――
「きゃあああっ!」
クワ!クワ!グワッ!
けたたましい鳴き声と、女子の悲鳴がぎるぎる荘の方から迫ってくる。空を切り裂くように飛んでくるのは――新谷姉妹を乗せた、スモールドラゴンのアオ!
クワアアアッ!!
「アオちゃん、落ち着いてっ!!」
「ダイキ! なんか……キゲン悪くて、全然言うコト聞かないの!」
「――ほっとけないし……このままワールドに入って!」
「マ……マジかよ……」
空中で暴れるドラゴン、しがみつく姉妹と悲鳴。
(うーん、まあ、スキル内では馬みたいな感じかな……たぶん……)
「レトロゲームスキル……マインクラフツ!」
アオと共に、いざブロックの世界へ!
メンバーは昨日と同じ――俺、ハヤブサ、サダトラ、アスカ、ユキ、リリー!
◇◇◇◇
まばゆい光と共に、目の前にカクカクのワールドが浮かび上がる。
「きゃああああ!」
クアッ!クアッ!クアッ!
アオは……新谷姉妹を乗せたままワールドを飛び回る!
仕方ないので、俺は彼女たちに変わって牧場のお手入れ。
「ほれほれ、小麦だぞ〜」
ガシガシガシ!
メェェ!モォォ!!
三十匹ほどの羊と牛さんが我も我もと迫ってくる。適当にエサをふりまいていると……
クアアアア……ッ!
その時、上空を旋回していたアオが急降下!
ドスン!!
牛、羊さんを押しのけて、目の前に降り立つ!
クウゥン……
長い首を折り曲げて、頬をすりすりする。
(ひょっとして……)
ガシガシガシガシガシ!!
すごい勢いで小麦をかき込む!
「他にも色々あったな……」
ニンジン、りんご、卵、シチュー、クッキー……
ガシガシガシ!
「なんでも食べるな……」
ひととおり食べ尽くしたあと――
クウ~ン……クウ~ン……
「きゃはっ!くすぐったい」
ご機嫌で皆の頬をすりすりして――
スヤスヤスヤ……
そのまま寝てしましまう!
アスカがぽつりとつぶやく。
「……おなか減ってたのね……」
「それで不機嫌だったのか……」
◇◇◇◇
気を取り直して、作業再開!
皆で夢中になって、拠点整備に励む。
そして昼。
拠点の豆腐ハウスに戻ってみると――
……おや?
「じゃーん!見て見て!」
リリーは建築にハマってたようで……
豆腐ハウスは、いつの間にか二階建ての洒落たログハウスになってる!
「すっごーい!気持ちいい!」
二階には草原を一望できる広いテラス!
ジュウウ……!
かまどでお肉をこんがりと焼き上げる。
ガシガシガシガシガシ!
「う……うまいっ!」
「おいしいっ!」
最高のバーベキュー!
ううん……こんなスローライフもいいかも……
いやいや、世界を救わなきゃ!
ルキアが回復する前に……
昼食を終えた後、俺はチェストの中身を確認する。鉄の装備、たいまつ、食料、ベッド……
最低限の装備は揃っている。しかし、何か足りない気がする。
ハヤブサが覗き込んでくる。
「どうした?考えごとか?珍しいな!」
「いやいやいや、いっつも色々考えてるぞ!」
「このスキルのコトはよくわからんが……順調じゃないのか?」
「ああ。明日には地下に向かってもいいのだが……」
「何か気になるのか?」
「このスキル上での準備は十分だ。しかし……相手はルキア。サンライズのように、想像を超えた手を打ってくるかも……」
「そうだな……せめて、カクカクの世界でも自分のスキルが使えると安心なんだが」
「……スキルか……」
「とにかく、ルキアを回復させたくないな……。明日には出発できそうか?」
「ああ、そのつもりだ。皆にも伝えよう」
◇◇◇◇
午後も拠点で準備に精を出し――
そして日没。
橙色の空に、草原が染まる。
ワールドを抜け、ぎるぎる荘へ帰還。
俺は夕食を終えて、温泉で魔力回復に努める。
ちゃぷん
露天風呂で湯けむりに包まれながら、考えを巡らせる。
準備は順調だが、何かが足りない……
みんなのスキルが使えたら……
その時――
女湯から弾けるような声が聞こえる!
◇◇◇◇
「キャハハハ!」
「リリーちゃんもおっきいね!」
「アスカちゃんには負けるってば〜」
「ねえねえ、くっつけてみない?」
「えええっ!」
ぷるるん
むにゅうっ
「あはあん!くすぐったい!」
「もう、ちゃんとしてよっ!」
「やだあっ!きゃははは!」
「すんごい〜!」
◇◇◇◇
ぶくぶく……
(この世界線の女子は、スキンシップ多めでいいな……!)
…………
俺は湯につかりながら、ぶつぶつとつぶやく。
「……くっつける……」
……
「ちゃんとしてよ……」
ちゃんとして……ちゃんと……エンチャント!
「……これだ!」
ザバアッ!
思わず湯船から飛び上がる。
俺はとあるプランを胸に秘めて、明日の冒険に望む。
女湯の会話、めちゃ気になる!と思った方……
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