第四三話 すぐ死ぬ
「レトロゲームスキル……スペランク!」
洞窟の奥深くを探検し、お宝を追う――あの伝説の難易度を誇るゲーム。そして何よりも、この異世界の洞窟と雰囲気が妙に似ている。
そして、ちょっと心配な事が……
洞窟内がまばゆい光に包まれた――次の瞬間。
地形こそそのままだが、断崖絶壁のあちこちに、移動用のゴンドラやロープ、足場がスキルによって生成されている!それは、まるで現実の洞窟にゲーム画面が重なったような……不思議な光景。
「おお……これなら降りられる!」
俺はさっそく、目の前に現れたゴンドラに乗り込み、断崖絶壁のスキマを滑るように降りていく。
カタカタ……カタカタ……
風が岩壁をかすめ、ざらりとした冷たい空気が顔を撫でる。地底めがけて順調に降りていくと、途中、横にぽっかり口を開けた空洞が見えた。
(このまま降りてもいいんだけど……)
昔遊んだ記憶を呼び覚ます。
「確か……ここ、横穴の奥に鍵があって……取らないと後で詰むやつだ」
俺はゴンドラを慎重に誘導し、横穴の斜め上でストップ。距離は拳三つ分――簡単に飛び移れるはず。
「とおっ!」
斜め上から勢いよく飛び込もうとした、その瞬間――
「うおおおおっ!」
全身に痛みが走り、視界が白い光に包まれる。
ドガッ!
「い……いってえ……」
気がつくと、スキルが解除され、俺はスタート地点に転がっていた。
(これは……ミスしたのか)
俺の不安が的中する。
このゲームの主人公は“史上最弱”と言われ……ちょっとした段差から落ちるだけで、即死する鬼畜仕様!
その一方で、名作との呼び声も高い。パターンを見極めて、丁寧に操作していけば、きちんとクリアできるのだ。地底探検の装備や技術を持たない俺としては、ベストのスキルだと思える。
「レトロゲームスキル……スペランク!」
俺は再びスキルを発動する。魔力を消費するので、そう何度もミスはできない。
ゴンドラに乗り、慎重に降りていく。横穴が視界に入るが……慌てたらダメだ!穴にぴたりと寄せて――
「とおっ!」
渾身の力を込めてジャンプ!今度は成功。
そのまま、横穴を進んでいく。
キキキキキ!
洞窟内には、不気味な音が響きわたっている。
ススス……
前方の壁から、白く丸い物体がすり抜けて迫ってくる。
人の上半身ほどの大きさ――
(お……お化け……!)
俺は斜面を駆け下りて、ジャンプで乗り越える!
ヒョン!
ズシャッ!
しかし着地した瞬間――また白い光。……気がつくとスタート地点に放り出されていた。
「いってェ……またやられた……」
(そうだ、下り坂でジャンプすると、"落下死"になるんだった!)
弱い……弱すぎる……!
◇◇◇◇
めげずに再トライ。慎重に横穴を進み……再びお化けと対峙。その時――懐に「マシンガン」が仕込まれているのに気づいた。
「よしっ……!」
タタタタタッ!
お化けめがけて乱射!ようやく退治する。
(今思えば……マシンガンで倒されるお化けって、何者なんだよ……)
そして、さらに奥へ。突き当たりの縦穴には足場があり、一段一段慎重に降りる。底に青色のキーが落ちてたので、拾う。これでOK!
再びゴンドラに戻って下降し、一番下の横穴へ向かう。
ビー! ビー! ビー!
けたたましい音がする方を見ると……
天井に無数のコウモリが!襲ってくるのか……いや、こない!……なんかパラパラと白い粉が舞ってるけど……気にせず下を通過。
ピキイイイ!
「ぎゃあああああ!」
その瞬間!また激しい痛みと共に、スキルが解除されて通路に転がり落ちる。
「いてててて……!」
(そうだ……あれはコウモリのフンで、触れたら即死だった……)
どんだけ汚いフンなんだよっ!
――再びスキル発動。
◇◇◇◇
どうやら、ゴンドラの降りた位置から再スタートできるようだ。頭上のコウモリを無視して、粉に当たらないようタイミングを取りながら進む。
ピキキッ!
「いてええっ!」
それからも……
落とし穴に落ちたり……
噴き出る水蒸気に当たったり……
ツタをつかみ損ねて落ちたり……
イマイチ冴えない理由で何度もミスするが……途中の扉も鍵で開けて……なんとか一番深い所に到達!
「やっと着いた……」
汗をぬぐいながら、周囲を見渡す。
ゲームだったら、ここにお宝があるんだけど……そんなわけないよな。
奥へと続く通路をのぞき込むと……
少し広い空間があり、そこにオーク、ゴブリンの群れが!
そのさらに奥底へ連なる所に扉があり――その前に立ち塞がるのは……
錆びた王冠を頭にかぶって仁王立ちの、ゴブリンキング!
(中身は普通のゴブリン)
サンライズでも重要な場所、運転席を守っていた!この先に敵のアジトがある可能性は高い。
ズキズキズキ……
しかし、度重なるミスで体中に痛みが走り、魔力も尽きかけている。ここでヘタに仕掛けても、戻れない可能性がある。俺は残り魔力を使い洞窟を逆走。ゴンドラを登り、スタート地点へ戻ってスキル解除。
「ダイキ! おかえりっ!」
「遅いよっ! 心配したーっ!」
むにゅっ
アスカとユキが抱きついて出迎えてくれた!
この世界線の女子はスキンシップ多めで、ちょっと嬉しい。苦労した甲斐あったな!
余談ですが、ユキの胸、ちょびっと大きくなってる気がします……
ハヤブサも心配そうに顔を寄せる。
「ダイキ、なんか傷だらけだぞ! 大丈夫か?」
「……いや、まあ……いろいろ大変で……」
「回復魔法、使うよっ!」
ユキの回復魔法に包まれると、体の痛みが引いていく。その間に、俺は地底での状況を報告した。
ハヤブサその報告に反応。
「つまり……この地底に黒召喚士たちのアジトがあるかもしれない、ってことか」
「おそらく」
だが、スペランクは一人用スキル。
全員で同じルートを降りるのは不可能だ。
俺はスキルを見直して、作戦を練り直す必要があった。
「今日の冒険はここまでだな。戻ろう」
そうして、皆でぎるぎる荘へ帰還。
本日のスキルは、読者コメントの感想で頂いたゲームを採用しております!
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