第三九話 飛べ!スモールドラゴン
俺はリュウガとリリーを呼び、急ぎ作戦を練り直す。
「オロチの総攻撃がもうすぐ来る……俺はルキアを直接叩きに行く。リュウガは、攻撃に……なんとか耐えてくれ」
「うむ。負傷者含めて、ギルド全員を一ヶ所に集めよう。そして、防御魔法で覆えば……何回かは耐えられるはずだ」
「よし!それで行こう!」
ザッ、ザッ、ザッ
その時、E253の雑魚を掃討したハヤブサが駆け寄ってくる。
「ダイキ! 無事か!?」
「おお、ハヤブサ!」
俺は手短かに今の状況と、これからの作戦を伝える。
「そうか、頼んだぞ! お前のスキルは特別だ。その役割、ダイキにしかできない!」
「おう、その言葉……心強いな!」
「それから……コレを持っていけ」
ハヤブサは、懐から小袋を取り出し、中からカプセル状の薬を手渡す。
「……これは?」
「集中力を高める薬だ。困った時に使え」
「ありがとう!」
そしてユキとアスカを呼び寄せ、作戦内容を伝える。
「ユキ、残りの魔力全て、防御結界に回して欲しい! ギルド陣を守ってくれ!」
「任せて!」
「アスカは……」
クウゥン……! クウゥン……!
スモールドラゴンが小さく鳴き、翼をパタパタさせながらこちらを見つめている。アスカはその姿をじっと眺めながら、ダイキに呼びかける。
「ダイキ!ルキアを倒しに行くわよ! でも……これ……乗れるの?」
止めても……聞かないよね。
ルキアの周りに護衛がいる可能性は高い。スモールドラゴンに火力は期待できないので……アスカの光スキルが必要だ!
「……たぶん乗れる……かな?」
クオオン……
なぜか尻尾をフリフリするドラゴン。
癒し系にしか見えない……
「とりあえず乗ってみるか!」
俺はドラゴンの背中にひょいとまたがった。
「私も!」
ひょいっ!
むにゅっ!
小型バイクに無理矢理二人乗りしてる感じ。
落ちないように、アスカは体を密着させて、俺の背中を抱きしめる。
背中に……何か柔らかい感触……
いやいや!こんな時に何考えてんだ!
「よし、飛ぶぞ!」
バサ!……バサ……!
クウゥ……
両翼が小刻みに震えるが、地面から飛び立ちそうにない。
「…………」
「やっぱ、乗せるのは無理か……!?」
「お願い! 飛んでよっ!」
「ひょっとしたら、魔力が尽きてるかも……俺たちもバナナで何とか復活したからな……」
「……バナナ!」
アスカが思い出したかのように、バッグパックをガサゴソとあさる。
「ダイキ、これ!」
「……!」
ひとふさ丸ごとのバナナを取り出して、手渡す。
ふさ単位でキープしてたのか!
「きっとお腹減ってるのよ! あげてみて!」
「……ドラゴンって、バナナ食べるのか?」
クアッ!
その時!ドラゴンの目がキラリと光り……
長い首をぐにゅっと折り曲げて、バナナを奪い取る!
そして――ふさごと丸呑み!
ング、ング、ング
ごくん
カアアアア……ッ!
一瞬、体全体が淡い光に包まれ……
甲高い咆哮が空に響く!
バサッ!!
一気に双翼が広がり、地面に旋風を叩きつけた!
「おおおおっ!」
「きゃああああっ!」
バサッ!バサッ!
スモールドラゴンは跳ね上がるように上昇し――ついに、ルキアの元へ向け飛翔を開始!
ザザ……、ザザ……!
バッサ! バッサ! バッサ!
天空でとぐろを巻くように折り重なる竜の首。そのスキマを、小さなブルードラゴンが彗星のように駆け抜ける。
「……来るぞ!」
オロチの瞳が漆黒から、燃えるような赤へ変色。ギルド陣を半壊させた、あの“一斉攻撃”の兆候だ。
「頼んだぞ……ユキ!」
グオオオオ……オオン!
グガガガアアアアア!
全ての竜が、世界を震わせるような咆哮を放った後……
ブワアアアア……!
一斉にその口から、轟音とともに火炎流を吐き出す!
暴れ狂う竜の首と、宙に乱れ舞う炎の柱。ギリギリのスキマをぬってスモールドラゴンが滑るように舞う。
幾十にも重なる炎のトンネルをくぐり抜け、ゲートウェイへと近づく。
俺はチラリと地上を見る。
地上も流れ落ちる業火に包まれているが……その一角に、キラリと輝く防御結界に守られたギルドの一団が。
総勢30名ほど。半透明の膜が人々を包み、炎を弾き返すたびに波紋が走る。
ブオオオオ!
うねりを上げて襲いかかる竜の首、そして燃え盛る業火を、結界が跳ね返し続けている。
(頼む!耐えてくれよ!)
結界の中では、リリーが叫びながら指示を飛ばしていた。
「ユキ! 右斜め、ヒビ入ってる! 張り直して!」
「任せて!」
「マキオ! エミリア! 左後方からドラゴン! 結界強化して!」
「オッケー!」
「モモカ! 重症者に回復魔法を!」
「うんっ!」
全員が死力を尽くして、オロチの猛攻を耐え切っている。
仲間が必死に繋いでくれているこの時間――絶対に無駄にはできない!
読み通り――スモールドラゴンは当たり判定が小さい分、膨大な火力の中でもギリギリ回避可能!
アスカが周りを見渡して、叫ぶ。
「左からドラゴン! 右によけて!」
「おおおっ!」
「上からフレア! 高度下げて!」
ブオオオオッ!
炎の奔流を紙一重でかわしながら、スモールドラゴン進撃!
徐々にゲートウェイに迫る!
日が暮れて夕闇が迫る。炎に照らされた戦場は、不気味な明るさに包まれている。そして……俺たちはついにルキアの潜む地下入り口、ゲートウェイ正面を視界に捉えた。
バサ、バサ、バサ
ドラゴンの小さな翼が、力強く大気を叩きつける。
「見えたぞ!」
闇の奥へぽっかりと口を開く、地下への道。
その手前――
巨大なオロチの本体が横たわり、完全に入口を塞いでいる。
バサ……!バサ……!
旋回しつつ高度を上げ、突入ルートを探る。
トンネルの入り口は広く拡張されている。天井ギリギリまでは塞げないはず――
うごめく首の合間に、ほんのわずかだけ、抜けられそうな道があった!
緊迫の空中戦!
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