第三八話 地獄の業火
品川のトップギルド、エルトーロの部隊はE235に張り付いて、車内から続々と吐き出されるオークやゴブリンの群れを必死で掃討する。
「ルキアの所には行かせん!」
リュウガが鬼神のような形相でゲートウェイ前に立ちふさがり、押し寄せる敵の奔流を食い止める。
「行くぞ!……リンク!斬撃、疾風っ!」
サダトラと共に、敵の集団を挟んで風の如く戦場を駆け抜ける!
スパアアアアッ!
グアアアッッ!
駆け抜けた直後に――雑魚たちの体がきれいに上下真っ二つに割れる!さすがの連携!
「デス・ヒーリング!」
シュア……シュアアア……
グ……グゴア……
エミリアは最大出力で回復魔法を“敵”に降りまく!――なんと、オークたちは瞬く間に老化し、干からびて消滅する。攻守を極めたエミリアならではのスキルだ。
バサ……! バサ……!
上空では、俺たちのブルードラゴンが、三体目の首に狙いを定める。
「ファイヤー!」
ズガア!ズガン!
爆風が爆ぜ、大気がねじ切れそうな轟音。激しい攻防が続く。
グア……ア
地上では、板山最強ギルド、スフィーダのメンバーがゲートウェイ入り口に立ち塞がる“オロチ本体”と対峙していた。
ここを越えなければ、ルキアには辿り着けない――。
「リンク! 電撃・斬ッ!」
雷をまとったハヤブサとジャネットの剣が、オロチの巨大な胴体に突き刺さる。
ゴゴ……ゴオオオ!
「危ないッ!」
「ロック!」
ズガアン!
うねりながら襲いかかったオロチの首を、マキオの防御魔法がぎりぎりで弾き返す。
「ぶつぶつ……」
モモカはがれきの影で膝を抱え、丸まってガタガタ震えている。彼女は魔力尽きた時の、最後の切り札だ。
バサ……バサ……!
上空を駆けるブルードラゴンは、うねり狂うオロチの首をすり抜けて旋回――
俺はちらりと地上に目を向け、戦況を伺った。
リュウガ率いるエルトーロは、順調に雑魚を掃討しているようだ。しかし……ハヤブサたちスフィーダはオロチ本体に防戦一方!
俺たちが封じた首は二つ。しかし、それも時間が経てば復活する。
……攻略の糸口が見えない。
「くそ……オロチには勝てないのか……!」
ウガ……アアア……
低く重たい咆哮と共に、オロチの瞳が再び真紅に染まった。
「一斉攻撃の合図だ!来るぞ!」
ブオオオオオッ!
六本の首が一斉に暴れ回り、灼熱の炎を撒き散らす!
「くっ! つかまってろっ!」
「きゃああああっ!」
ブルードラゴンはその身体を回転させながら、ギリギリで炎の束を避ける。天地が何度も入れ替わり、視界がぐわんぐわんと揺れた。
「うわあああ!」
その時、地上部隊の悲鳴が戦場に響き渡る。地獄のような業火は――車両基地そのものを飲み込もうとしている。
リュウガは燃え盛る炎柱を間一髪でかわして、転がり込みながら周囲を見渡すが……その惨状に目を見開く。黒焦げのオークとゴブリンの死体。その隙間から、ギルド仲間の苦しげなうめき声が漏れ出していた。
「大丈夫か! 防御陣、ゲート前に集まれ!」
「みんな……死なないで……!」
モモカが駆け寄り、震える声で回復魔法を放つ。
この時点で、ギルドの半数近くは戦闘不能に。
――わずか一回の一斉攻撃で!
ギルチャを通して、地上部隊の苦境が伝えられる。おれたちの魔力も限界に近い。
「……降りるぞ……」
俺は唇をかみ、オロチの首を避けながらブルードラゴンの高度を下げていく。
バサバサバサ……
がれきの隙間にある小さな空き地へ、ドラゴンを滑らせて着地させた。
俺たちは膝をつき、荒い息で座り込む。
「ダイキ! 無事だったか!」
「アスカちゃん! ユキちゃん! 心配したよっ」
近くにいたリュウガとリリーが駆け寄る。
「ひどい有様だ。……次の攻撃が来たら、総崩れだ」
オロチの圧倒的な一斉攻撃。人間の力では、なす術がないのか……
その時、リリーがスマホを眺めながらつぶやく。
「うーん、でもねえ……オロチはほっといていいんじゃない?」
「……え?」
「これ見て! 変だなと思ったの」
リリーは、魔力を表示するアプリを皆に見せる。
「コレがオロチ。こんなでっかい円見た事ない! これは倒せないよ」
「確かに……」
「で、この後ろのちっちゃい点がルキア。やっぱり、本人はほぼ魔力ゼロよ!」
リュウガがうなずく。
「ふむ……やはりルキアに的を絞るべきか。しかし、それはヤツも十分警戒してるはずだ。オークらに護衛させるプランは崩れたが……」
俺もゲートウェイの方をチラリと見て答える。
「やはり、入り口に立ち塞がるオロチをなんとかしないと……」
バサ!バサ!
その時、羽を休めていたブルードラゴンが、動き出す。
(そういえばスキル解除してなかったな……でもこのドラゴン、なかなかタフだな……!)
オロチを倒さずに、直接ルキアを狙いたい。
しかし、何をするにも……そもそも魔力がもう切れる寸前だ……いや、待てよ!
俺はバッグパックをガサゴソする。そして、取り出したのは……
マジカルバナナ、魔力30%増量!
ちょうど三つあるので、アスカとユキにも手渡す。
もぐもぐ
体に魔力が満ちていく。少しの時間ならいけそうだ!
そして、バックパックにもうひとつ、見覚えのあるものを見つける。色とりどりのドラゴン強化アイテム。
雑魚を倒した時に拾ったが――同時に使えないアイテムが多いので、しまっておいたのだ。そして、「S」と刻印された赤い玉を取り出す。
「スモールドラゴン!」
アイテムを掲げると、ドラゴンが再び光に包まれて……
シュウウウッ……ポンッ!
光の中から出てきたのは、仔馬くらいの大きさに縮んだ、スモールドラゴン!
「ええええっ!」
アスカとユキが目を丸くする。
バサ! バサ! バサ!
小刻みに羽を揺らし、愛嬌のある動きでぴょこんと跳ねる。
その仕草がなんとも愛おしい。
アスカが覗き込みながら言う。
「なんかカワイイ! でも……デカい方が強くない?」
「この大きさなら、オロチのスキマをぬって、ゲートウェイを超えられるかも……」
「なるほど、で、直接ルキアを叩くのね」
「その通り!」
このゲーム、首三体のドラゴンが最強だが……実は当たり判定も大きくて、実際は使いづらいのだ。スモールドラゴンの方が、クリアしやすい!
切り札、スモールドラゴン登場!
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