第三七話 品川決戦!ルキア再来
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………………
「ねえ……どうして……ジャマするの?」
「おつかいを、たのまれたの」
「それだけ……なのに」
………………
――地の底から、濁った“何か”がせり上がってくるような声。がれきの上で仰向けになって休んでいた俺の耳に、その暗い響きがじわりと染み込んだ。
「…誰だ!……」
飛び起きて、周りを見渡す。
近くで休んでいたハヤブサたちが振り向く。
「どうした……?ダイキ!」
「いや……今……声が……」
心臓の鼓動がなぜか早まっている。
その直後、スマホを眺めていたリリーが叫ぶ。
「来るわよ!すっごい、大きな魔力!」
リュウガが怒号を響かせる。
「総員、配置に付け!」
スゥ……とゲートウエイ出口の空気が動いた気がする。
地下出口の奥――真っ暗な闇の間から、どす黒いオーラが溢れ出し、床を這う霧のように迫ってきた。
俺はその黒く、深く、重たい負の感情に、思わず身震いする。
結界のすぐ向こう側に、小柄な影。全身を黒いベールで覆った人物が、静かに立っている。
アスカが叫ぶ。
「……ルキア!」
結界に向かって駆け出そうとするアスカを、俺は慌てて抱き止める。
「危ない!近寄るな!」
「……倒す!ここで、倒してやる!」
ルキアが、ふわりと右手を掲げた。
ガタ……ガタン……ガタン……
地下深くから、地面を揺らす衝撃音。鉄がぶつかるような、独特のリズム。
「来るぞ!」
「退避!退避だ!横に避けろ!」
「アスカ!早く!」
俺はアスカの腕を引き、トンネル正面の線路から飛び退く。
ガタン! ガタン! ガタン!
「E235だ!」
俺は思わず叫ぶ。車両前面のライトが闇を切り裂き――
側面には見慣れた緑のライン、大量輸送の主力、山手線の車両が二編成――並んで迫ってくる!
バリバリバリ!!
結界が一瞬で破れ、破片が白い光になって飛び散る。列車は轟音とともに、出口に立つルキアの横を猛スピードで駆け抜ける。
ルキアの黒いベールが風にあおられ、一瞬めくれた。
一瞬だけ覗いた色白の肌。
そして、闇の奥を映すような漆黒の瞳――眼が合った気がした。
そして、ルキアが静かに前へ右手を突き出す。
「オロチ……召喚!」
シュアアア……!
疾走するE235を追いかけるように、地底から唸り声を上げて、巨大な竜の首が伸び上がってくる。
リュウガが、ゆるりと身の丈ほどある大剣を抜いて、上段に構える。
「役者が揃ったな!行くぞ!ダイキ!」
「おうっ!」
ガガガガ!ガガ……ガタン!
道をつんざくような轟音が響き渡る。
ゆらり……
ズガアアアン!
突進する二編成のE235は――
左右に分かれて、車両基地へと連なる引き込み線を進んだあと、徐々に傾き――
悲鳴のような金属音と共に脱線、急停止する!!
アスカが叫ぶ
「と……止まった……どうして……?」
「石だよ」
「え……!?」
「石を置いたんだよ。これのデカいやつ」
俺はこぶし大のがれきを拾い上げて、ポンポンと叩く。
「サンライズはルキアが魔力で浮かせて、進行方向を操っていた。でも、奴は今オロチの制御に魔力を集中させている。E235を浮かせる余裕はないはず!」
「へえ……」
「レール上を走る、普通の電車を止めるのは簡単だ。ちょっとした障害物で、脱線して止まる」
そう、レール上を走ると読んで、必ず通る引き込み線に石を置いといた!
……すんごい単純だけど、びっくりするぐらい効いたな!
リュウガが叫ぶ。
「まだ車内の雑魚が残ってる! 油断はするな!」
ギルド陣の戦力分散は防げるが、それは敵も同じ条件だ。これからが本番!
止まった列車から、ぞろぞろと魔物が降りてくる。
頭上ではオロチの巨大な首が何本も渦巻き、唸り声をあげる。ゲートウェイ一帯、空も地上もあらゆる空間が魔物で満ちる――まさに地獄絵図。
しかし!この状況は想定済み!リュウガとリリー、素早く指示を飛ばす。
「エルトーロは、電車から降りてくる魔物を掃討!ルキアの護衛をつぶして、ヤツを追い込む!」
「スフィーダは、オロチ本体!」
「ダイキ!一番攻撃力の高い……オロチの“首”を抑えてくれ!」
「よし!行くぞ!レトロゲームスキル――」
俺はスキル画面を開く。選ぶのは、対オロチ用に訓練を重ねたとっておきの一本。
「ドラゴン・スピリッツ!」
ドラゴンの自機を操って魔王を倒す、名作シューティングゲーム!
カアアア……! カアア!
甲高い咆哮と共に、鮮やかなブルーのドラゴンが空を切り裂いて飛来する!
「アスカ!ユキ!乗れっ!」
俺たちはドラゴンの背中に跳び乗り、オロチの首が埋め尽くす上空へ一気に上昇する。
「おっと、その前に……」
いったん、進行方向を地上の雑魚に向ける。
「ファイヤー!」
グア……グアアッ!
ブルードラゴンの口から灼熱の炎が放たれ、オークたちを焼き払う!
その後、地面に色とりどりの玉が転がり落ちる。――ドラゴンは地上ギリギリの低空飛行。そこで俺はいくつかの玉を拾い上げる。
その中から、青色と赤色の玉を選び出して、頭上に掲げる。
すると、ドラゴンが光に包まれ……
クアアアアッ!
見上げると、三本の首を持つブルードラゴンに進化している!
そして、火力もパワーアップ。
オロチに負けない、堂々とした体躯。
アスカ、ユキが思わず息を呑む。
「す……すごい!」
「多頭竜には、これで対抗する!」
(首の数では劣るが、火力と機動力で対抗できる!)
ウガ……グゴアア……
オロチの瞳が血のように赤く輝く。
「……来るぞ!」
グアアアア!
ブワアアア……!
無数の首が一斉に炎を吐き出し、視界は燃え盛る炎で埋め尽くされる。その炎は、空を焦がし、地を焼き尽くす。
「こっちだ! 避けろっ!」
オロチは味方の雑魚も、お構いなしに焼き尽くす。地上は業火に包まれ、ハヤブサたちも必死で逃げまどう。
圧倒的なオロチの力。
「早く、首を封じないと……このままじゃ地上部隊は全滅だ!」
バサ……バサ……バサ……
「おっと!あぶねっ!」
巨大な首がうねり、休む間もなく襲いかかる。
俺は、その中の首一本に狙いを定めて……
「ファイヤー!」
ブルードラゴンの三本の首から、同時に炎柱が吐き出され、オロチの首に命中する!
「グゴココ!ギギギ!」
悶え苦しむオロチ。一本の首がついに封じられた。
シュアアア!
その隙に、後方から別の首が牙をむいて急接近!
「ウォール!」
バチィィィン!
ユキが防御魔法を発動!首ごと弾き返す!
「シャイニング・スピア!」
ズガアアッッ!
アスカが光のエネルギーで作り上げた槍を、オロチに投げつける!
グアアア……アッ
――二体目の首も封じた!
「オロチに弱点はない!こうやって、ダメージを与え続けるしかない!」
「いつまで続けるのよ!」
「ルキアが倒れるまでだ!」
「それ、ちょっと無理あるわよーっ!」
ギリギリの攻防!
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