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第三四話 寝台特急サンライズ

 ゲートウェイには再び強固な結界が張られ、地下でうごめく魔物たちの侵入を阻んでいた。


 時刻はちょうど正午。

 交代で昼食を取りつつ、各自が魔力回復に努める――緊張を張りつめたままの、嵐の前の静けさ。



 だが、その静寂は長く続かなかった。


 スマホを眺めていたリリーが、目を大きく見開き叫ぶ。

「来る……! おっきい魔力……しかも猛スピードで!」


 その瞬間、全員がゲートウェイ出口へと視線を集中させた。



 ゴトン……ゴトン……


 低く腹に響くような音。

 ダイキには馴染みがあるが……この世界の住人には想像すらできない音だ。


「……この音は……」


 ゴトン! ゴトン! ゴトン!


 それは次第に強く、早く、地鳴りのように迫ってくる。同時に、闇の奥から二つの光点が鋭く浮かび上がる。

「……」

 プアアアアン!


 耳を破りかねないほど大きな汽笛の音が、地下を揺らしながら接近する。次の瞬間、闇を切り裂き疾駆してきたのは――


「……電車!?」

 ガタン! ガタン! ガタン!


 ベージュと赤のツートンカラー。

 所どころに金の装飾が施された、あの気品あるシルエット。特急列車が地下から突っ走ってくるなど誰が想像しただろうか!


 プアアアアン! プアン! プアン!

 ズガァン! ガガガガッ!! ガンッ!!


 警笛が鳴り響くと同時に、振動で大地が震え、轟音がとどろく。


「サンライズだ!寝台特急、サンライズ!」

 俺は思わず叫ぶ。前世では、唯一残っていた定時寝台列車。こんな所で見られるなんて!


 ズガァァッ!

 ガアン!!


 ビキ! ビキビキ!

 防御結界が悲鳴を上げるように軋み、透明な膜に無数のヒビが走る。

 そして一瞬で、結界は光の破片と共に崩れ去る。


「破られる! 危ない!」

「正面から来るぞ! 避けろ!」

「うおおおっ!」


 ガタン! ガタン! ガタン!


 結界に衝突した列車は一瞬スピードを落とすが、再びスピードを上げて、一気にゲートウェイを走り抜ける!


 特急列車はそのまま、車両基地の引き込み線を駆け抜け――


 カタン……カタ……カタ……

 基地のほぼ中央で停車した。


 白昼の車両基地に、不気味な静寂と共に鎮座する特急車両。


「な……なんだあれは!」

「電車……? 教科書にのってた……」

 ギルドのメンバーは皆、呆然とその異様な光景を眺める。


 プシューッ!

 突然、空気を吐くような音がもれ、そしてその直後……

 各車両のドアが一斉に開き、オーク、トロール、ゴブリンなどの魔物が一斉にドアから降りてくる!


「……」

 俺もその光景を、息を呑んでみつめる。一人旅にハマってた時期があるので、電車には多少詳しい。


 サンライズの席は、A寝台、B寝台と値段でランクが分かれている。その中でも、個室じゃない「のびのびシート」という席があり、そこは寝台料金なし、格安で乗れて人気だ。


 よくよく観察すると……


 のびのびシートの車両からゾロゾロ降りてくるのは、ヒョロヒョロのいかにも雑魚、みたいな魔物。

 B寝台個室から降りてくるのは、ガタイのいい、ちょっと強そうな面子。A寝台からはまだ誰も降りてこない。


(魔物にも序列があるんだな……)

 いやいや、そんなコトに感心してる場合じゃない!


 掃討したはずの車両基地に、再び魔物が満ちていく。


 グア……ア

 魔物の咆哮が車両基地を揺るがす。


「リリー、作戦変更だ……」

 リュウガの声に、焦りの色が浮かぶ。

 ゲートウェイの地下出口で敵を叩く作戦は、あっという間に崩れ去る。しかし、冷静に魔物の位置を確かめて指示を飛ばす。

「防御陣はゲートウェイ前面に出て結界を張り直し! 攻撃陣は車両基地の雑魚敵を掃討!」


 ゲートウェイから出てくる魔物と挟み撃ちにならないように、ゲートウェイの守備とサンライズとの戦闘を並行して指示。


「とおおっ!」

 ズシャッ! ズガッ!


 ダイキたちはサンライズの停車位置に駆けつけて、雑魚敵を次々となぎ倒していく。


 プシューッ!

 ガタ……ガタン……

 数十体の魔物を吐き出したあと、乾いた空気音とともにドアが閉まり――サンライズが再び動き出す。


 ハヤブサが叫ぶ!

「動くぞ!ジャネット、避けろ!」

「くっ!」


 正面の線路上で杖をふるっていたジャネットが、間一髪で電車を避ける。


 ガタン、ガタン、ガタン!


 サンライズは基地の北側まで突進した後、身をくねらせるように進路を変え、今度は東側へ疾走!!ポイントもルキアが操っているのか?いや、よく見ると線路の上を走ってない!


 完全に魔力で進路をコントロールしてるようだ。これでは、線路を破壊しても効果がない!



 ガタ、ガタ、ガタン!

 プシューッ!

 Vタワーを正面に臨む東端で再び停車、さらに大量の魔物を吐き出す。


 剣を振るうハヤブサにも焦りの色が浮かぶ。

「まずいぞ。あちこちで魔物をばら撒かれると……戦力が分散される!」


 さらに、A寝台からは――

 巨体をかがめながら、体調ニメートルほどの白トロールや黒ゴブリンなど、中ボスクラスの魔物が降りてくる。


「次は東側だ! ボス級が降りてきてる! ここで叩かないと、結界が破られるぞ!」

 そうなると住人にも被害が出る。


 ギルド隊は既に統率を失いつつある。何としても、魔物をまき散らすサンライズを止めなければ!


 俺はハヤブサに向かって叫ぶ。

「電車は俺が止める。スフィーダ、雑魚の掃討は頼んだぞ!」

「わかった!」


「アスカ、ユキ、来てくれ!」


 俺はここでレトロゲームスキル、クレージードライバーを発動。

 ブロロロッ!

「ユキ!運転を頼む!」


 プシューッ!

 カタン……ガタン……


 サンライズは魔物を吐き出し終えると、再び北側へ向けて走り出す。ご丁寧にも、車両基地全体をカバーするように指示されてるようだ。


 ブロロッ!ブロン!

 イエローキャブはサンライズの横にピッタリ張り付いて、並走する。


「アスカ!窓ガラス割れるか!?」

「オッケー!」

 後部座席のアスカがスキル発動!

「ライトニング・ブレード!」


 シュッ!

 パリリリ! パリン!

 閃光が横一線に走り、窓ガラスが砕け散る。


「とおおおおっ!」


 俺は車体に飛びつき、割れた窓から強引に乗り込む。そして、並走するアスカとユキに叫ぶ。


「そのままキャブでリュウガの所に戻れ! サンライズは俺が止める!」


 キャブで並走するアスカとユキは一瞬目配せして、うなずく。



 ガタン! ガタン! ガタン!


 サンライズは暴れる大蛇のように、身をくねらせながら暴走する。


(キャブよ!アスカとユキを味方のいるトコまで運んでくれ!それまではスキルなしで耐える!)


まさかのサンライズ登場!

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