第三三話 ゲートウェイ序盤戦
そして俺たちは、全員で品川ゲートウェイ前へ移動する。そこで待ち構えるのは……総勢三十名ほど、関東中から集まった精鋭部隊だ。
雨は降っていないが、空は鉛色にどんよりと曇り、重苦しい空気が一帯を押しつぶしていた。
ゲートウェイの地下出口に張られた結界の向こう側では、異様な光景が広がっている。
ウゴオ……グゴオオオ……
ガス!ガン!グアン!
地下鉄トンネルの奥、漆黒の闇から大型の魔物たちが次々と湧き出ては、結界を狂ったように叩きつけていた。
アスカとユキは、ぞわっと背中を震わせる。
「なにアレ……」
「気持ちワル……!」
ミシ……ミシ……
嫌な音とともに、結界に細いヒビが走る。
対する品川ギルドの布陣は……
車両基地の中央付近に司令塔のリリー、そして指揮官リュウガ。ゲートウェイ出口に向かって、手前側に俺たち攻撃陣が一列に展開。さらに前方、結界の直下にマキオたち防御陣が陣取っている。
ビリビリ……ミシ……パリ……ッ!
「ウォール・ロック」
シュウウウウ!
防御魔法が重ね張りされ、結界の崩壊を必死に食い止めていた。
リュウガは俺を呼び寄せて、戦況を端的に告げる。
「この勝負、魔力が尽きたら終わりだ。結界を維持し続けると、防御陣の魔力が先に底をつく」
「確かに……このままじゃジリ貧だな」
「攻撃陣の体制が整ったら、陣形を変える。攻撃陣が前に出て、結界を解除。溢れ出る魔物を、一斉に叩き潰す」
「なるほど」
「すべての細かい指示はギルチャで出す。板山のみんなにも、通知を絶対に見逃すなと伝えてくれ」
「了解だ!」
俺は攻撃陣の列に戻り、皆に状況を伝える。
結界解除の合図が、戦闘開始のゴングだ。
緊張で足が震える。
――自分のやるべき仕事を、キチンとこなす。
気負う必要はないんだ。いい仕事をすれば、未来が開ける。それだけに集中しよう。
グォォォ……ッ
ピシッ、ピシッ、ピシッ!!
防御陣は、すでに結界への魔力供給をストップ。
薄い膜のようだった結界は乾いた悲鳴を上げ、蜘蛛の巣状にヒビが広がっていく。
その瞬間――リュウガが腕を高く振り上げ、鋭く叫んだ。
「結界解除! 防御陣は指定位置へ後退!」
隣に立つリリーが猛スピードでスマホにメッセージを打ち込む。
ピロン! ピロン!
戦場にギルチャの通知音が鳴り響く。
「攻撃陣、総員、最前列に並べ!」
「おおおおっ!」
バリバリバリィッ!!
暗闇から伸びる無数のゴーレムの拳が、結界を粉々に叩き割った。破片のような光が飛び散り、のしりのしりと重い足音を響かせて魔物が歩み出す。
攻撃陣は俺とハヤブサ、サダトラ、ジャネット、アスカを含めて十五人ほど。
「一文字流・閃光!」
「明智式・斬光!」
ズバァァァァツ!
ハヤブサとサダトラが魔物の群れに飛び込み、先頭のゴーレムを一刀に断ち斬る。
「ライトニング・ソード!」
「シャイニング・ブレード!」
アスカとジャネットが続いて、雷と光の剣をリンクさせて叩き込む。
ズガガガガッ!
ゴゴゴゴゴッ!!
グアァ……アア……ッ!
轟音と閃光、爆炎の煙――
あらゆる属性の攻撃魔法がリンクする。それは、巨大なエネルギーの塊となってゴーレムに襲いかかった。
出口を突破しようとするゴーレムは次々と膝を折り、そのまま地面に崩れ落ちて霧散していく。
「いける!いけるぞ!」
俺も必死に剣を振る。敵の出方によって戦略が変わるので、まだレトロゲームスキルは使わない。
その頃、防御陣――
ユキ、マキオ、モモカ、エミリアたちは最前線のやや後方へ退避していた。
そこへ次々とギルチャの細かい指示が飛び……最年少のユキを取り囲むような陣形で待機。
エミリアはユキに話しかける。
「前線の様子をよく見て!ダメージを受けた人がいれば回復魔法の準備。攻撃陣をサポートするわよ!」
「はい!」
「それから、また陣形の組み替えがあるから、ギルチャの通知に注意ね!あとは……魔力回復に努めるコト!」
一時間ほどが経過したころ――
攻撃陣は、出口周辺にうごめくゴーレムをほぼ掃討する。
空の雲が流れ、そのすきまから薄い陽光が地上に差し込み始めた。
そして、リュウガが戦局を動かす。
「攻撃陣、撤退! 防御陣、前へ!」
「はい!」
「陣形揃いしだい、結界張れ!」
「了解!」
リリーがギルチャで一斉に指示を出す。
最後のゴーレムを倒し、俺たち攻撃陣は二列目に下がる。
「ユキ、行くわよ!」
「はいっ!」
エミリアの号令で、防御陣は再び一列目に並ぶ。
「ウォール!」
「ロック!」
そして、一斉に防御魔法を唱えて、入り口に新たな結界が張り直される。
リュウガは小走りで戦列を駆け回り、状況を確かめる。
「攻撃陣は次の攻撃がくるまで、魔力回復に専念!」
俺とハヤブサはがれきの上に腰をおろし、荒い息を整える。
ハヤブサが状況を説明してくれた。
「攻撃陣と守備陣が交互に前線に立って、魔力の消費と回復のサイクルを作る。……単純だけど、効果的だ」
「ここまでは順調……かな」
「そうだな、作戦どおりだ。ただ、オークやトロールとか……雑魚がいないのが気になる。普通、ボスには護衛の雑魚もセットで召喚するんだが。……その分、倒しやすかったけど、何を考えてるのか……」
しばらく、二列目から新たな結界の形成を眺めていると――空気が、じわりと変わるのを感じた。
まるで、地下の闇そのものが呼吸を始めたように。
◇◇◇◇
決戦いよいよ開始!
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