第ニ八話 キラービー戦
◇◇◇◇
午前の激闘を終えたばかりだというのに、胸の奥で心臓がドクドクと暴れていた。次はどんな巨大生物が待っているのか……全員の顔に緊張が走る。
次の目的地、北部へ到着すると――
「着きました!」
キリカが周囲を見渡し、首をかしげた。
「……あれ?誰もいない……?」
広がるのは瓦礫の山ばかり。ギルドの人影も、魔物の気配すらもない。
「……う……うう……」
「……っ!」
がれきのスキマ、そこかしこからうめき声が聞こえる。
「エミリア!」
駆け寄ると、エミリアがぐったり倒れていた。
その周りには、品川ギルドのメンバーらしい男女が何人も横たわっている。
「……しっかりして!」
水を飲ませると、エミリアがゆっくりと呼吸を整えた。
「だ……大丈夫……」
俺は顔をのぞき込んで、尋ねる。
「魔物の姿が見えないようだが……何が起きたんだ?」
「キラービーよ」
「……?」
「殺人バチの群れがいるの。強い毒を持ってる。刺されたら……死ぬ可能性もあるわ」
「な……なんだって……」
「なんとか防御スキルで毒は防いだけど、ショック状態でみんなしばらく動けないわ」
「キラービーはどこに?」
「巣まで追い払ったけど……それで精一杯。そこにいる女王バチを倒さないと……」
「……巣はどこにあるんだ?」
エミリアが震える指で指し示した先――
「……あの朽ちた電車の中よ……」
横倒しになった古びた電車の車両。その中に巣があるらしい。
ビィィィィ!
その瞬間、周りの空気がざわっと揺れた。
気付かれた……!
大量のキラービーが空を裂いて襲いかかってくる!
「きゃあああ!」
「うおおっ!」
ハヤブサが剣を振り、ジャネットたちが攻撃スキルを繰り出すが……
「このやろっ!」
ブオン!
パアアア!
すぐに分散するキラービーの集団――ハヤブサの剣が空を斬る。
バリバリ!バリィッ!
さらにジャネットが杖を振り、雷撃が宙を舞うが……キラービーは難なくすり抜けて、メンバーに襲いかかる。
「ウォール!」
「ロック!」
ユキとマキオが壁を作るが……そのスキマから数匹が侵入。
「うわっ、刺された!」
「このやろっ!」
毒に侵され、みるみる体の力が抜けていく。
キラービーの群れは嵐のように襲い、そして去る。全身の力が抜けて、その場に倒れ込むメンバーたち。
モモカの回復魔法で、かろうじて命の危険は回避したが……
ギルドのメンバーは、基本、大型の魔物を討伐する前提で鍛えている。全くタイプの違う、小型かつ高速の相手には対応できない。
……だが、俺には特別なスキルがある。
ミクロの敵には、ミクロの戦い方がある。
そう確信し、ひらめいた作戦を胸に、俺はアスカに声をかける。
「アスカ、いっしょに来てくれ」
エミリアから教わった巣に向かって、瓦礫を踏みしめ進む。
「レトロゲームスキル!」
選んだタイトルは――
「ピクモン3!」
ミクロの世界を冒険するゲーム!
俺たちもサイズを合わせて、さらに「ピクモン」という不思議な生き物を使えば……キラービーと対等に戦える気がする。そして、このゲームは二人プレイも可能だ。
光が二人を包み込む――。
「えっ!? えっ!? なにこれ!?」
次の瞬間、景色が一変した。
目の前にそびえるのは、朽ちた電車のドア……いや、“壁”だ。まるで巨大な砦のようにそり立っている。
ここは、間違いなくミクロの世界!
壁の割れ目から中に入ると――
ドーム状の空洞に、黒い蜂の巣がびっしりと張り巡らされていた。中心には、ひときわ巨大な女王バチ。その周囲を、兵隊バチたちが渦のように旋回している。
ブオォン!
巣に近づこうとした瞬間……渦巻く群れの一部がほどけ、俺たち目がけて襲いかかる。
「ちょっと……気持ち悪いんだけど!」
ビィィィィ!
「こっちこないでよっ!」
アスカが光スキルを発動!
「シャイニング・ソードっ!」
シャアアアッ!
ビイイッ!ビィッ!
相対的にターゲットが大きくなり、アスカの攻撃が命中するようになった!
ゲーム上では、ピクモンと呼ばれる生き物を投げつけるのだが……さすがにリアルな魔物は、それでは倒せないだろう。
「おりゃあっ!」
俺も剣を振り抜き、蜂を叩き落とす。
ビィッ!ビィ!
奇妙な鳴き声とともに、女王の周りを守っていた兵隊バチが、次々と地面へ落ちていく。
残るは女王バチ……!
ジジジジ……
その瞳が充血したように赤く染まる。
次の瞬間!
猛スピードで女王バチが突進!
「あぶないっ!」
ザザザッ!
俺はアスカを押し倒して、地面に伏せる。
「きゃああっ!」
そのわずか頭上を、女王バチが鋭い針をきらめかせて通り過ぎる!
あの勢いで毒針に刺されると、一発アウトだ。
「きゃあああっ!」
「うおおっ!」
さらに何度も、鋭い針が空気を割くように、二人に襲いかかる。避けるたび、空気がヒュッとえぐられる。
何か突破口はないか……!?
俺は昔遊んだ記憶を頼りに、地面に視線を向ける。
いた……!
このゲームの主役は、「ピクモン」という、種に手足が生えたような、不思議な生き物。プレイヤーを色々な能力で助けてくれる存在だ。
俺の後ろにも、いつの間にか何匹かのピクモンが集まっている。その中の数匹――赤い、羽の生えたピクモンをつかんで、ポイポイと女王目がけて投げつける!
アスカが目を丸くする。
「ちょっ……何してんの?」
「羽ピクモンだ! 女王バチの動きを止めてくれるはず!」
びゅんぴゅんと投げられた羽ピクモンたちは、女王バチにまとわりついて、その体にしがみつく!
ブブブブ……ッ!
羽を激しく振って抵抗する女王バチ。しかしどれだけ暴れても、引きはがせない。
ズシン!
女王バチがついにバランスを崩し、地面へ落下。衝撃で目を回している!
「今だっ!リンクするぞ!」
「オッケー!」
俺は女王バチに飛び乗り、剣を掲げる!
同時にアスカが詠唱する。
「ライトニング・ブレード!!」
シャキイイイン!
俺の剣が、まばゆい光に包まれる。
「とおおおっ!」
俺は力を振り絞って、女王の腹に剣を突き刺した。腹が裂け、その切れ目から光があふれ出す!
ビィィィィ!ビイイッ!
女王バチは、断末魔の雄叫びをあげ……そして砕け散ちった!
アスカが座り込んで、放心したようにつぶやく。
「た……倒した……」
ミクロの世界に、ようやく静寂が訪れる。
おおおっ!倒したっ!
あ、ついでに★とかブクマとかお願いします!




