第十五話 イエローキャブ
◇◇◇◇
バサ……バサ……バサ……
俺たちを乗せたドラゴンは軽快に空を駆ける。翼が空気を裂くたび、心地よい振動が体を揺らす。かなり魔力は消費するが……ユキの回復スキルにも助けられて、なんとか品川に到着。
品川駅に当たる場所の北側に、朽ちた高層ビル群に囲まれた広大な土地が現れる。品川車両基地だ。前世ではすでに再開発されていたが、この世界線ではまだ残されているようだ。
その一角で、群れを成すワイバーンが舞い、その下で魔物と戦う人の姿が見える。
「あそこだ!突っ込むぞ!」
俺の合図で、ドラゴンが一気に加速する。巨大な翼が激しく羽ばたき、ワイバーンの群れへ鋭く突っ込む!
「うおおおっ!」
シュアアアッ!
灼熱のレーザー光線が何本も放たれ、敵を焼き尽くす!
「やあああっ!」
ビィィィィッ!
アスカも光のスキルを発動させ――まばゆい閃光が、次々と敵を撃ち落としていく!
「……ダイキ!」
地上ではハヤブサが剣を振り、魔物の群れをなぎ払っていた。仲間たち――スフィーダのメンバーも、傷つきながらも全員がまだ健在だ。
見渡せば、彼らの周囲は魔物で埋め尽くされていた。オーク、ゴブリンの群れに混じって、何体ものゴーレム、白トロールが徘徊する。
バサ……バサッ!……バサッ!
「完全に……地上出口が突破されてるな……」
「ゴーレム!いったい、何匹いるのよ……」
その異様な光景に、思わず息を呑む。
「……ハア、ハア、ハア」
振り向くと、ユキが青ざめた顔で、肩を震わせている。
「……大丈夫か!ユキ!」
「……魔力が……」
ドラゴンの飛翔には、多大な魔力を要する。回復スキルで魔力を供給し続けたユキの体力は、限界に近い。
幸い、ワイバーンの群れはほぼ掃討済み。あとは地上からでも何とかなるだろう。
俺は周囲の地形と、敵の配置を頭に叩き込み、判断する。
品川駅の前にそびえ立つ廃ホテルの合間に、隠れるようにドラゴンを滑り込ませ、静かに着地した。
「……よし、ここを拠点にするぞ!」
残念ながら、品川車両基地は完全に制圧されている。ギルドの仲間たちを救出して、体制を立て直すべきた。
俺は再びスキルを発動する。
「レトロゲームスキル!」
沢山のタイトルの中から――俺は意外なタイトルに目を付ける。今の状況で選ぶべきは……攻撃ではなく、“移動”と“救出”に必要なスキル。
"クレイジードライバー"
街中をタクシーでぶっ飛ばして、客を目的地へ送り届けるイカれたドライブゲームだ。
周囲が光に包まれたのち……
ブルン!ブル……ブルン!ブルン!
光の中から現れたのは……
ど派手な黄色のカラーリング、ゴツゴツと角ばったアメ車特有のフォルムをまとったオープンカー。
アメリカンなタクシー、イエローキャブだ!
アスカとユキが同時に声を上げる。
「……これは……車……!?」
「この拠点に、ギルドのメンバー全員を撤退させる!アスカはユキと一緒にここで拠点を守ってくれ!」
「わかった!」
その前に……俺は拠点の周囲をぐるりと一周して、魔物がいない事を確認する。絶対に、彼女たちを危険な目にはあわせない――!
◇◇◇◇
……その間、拠点で待つアスカとユキ。
ユキが目を輝かせて、車を覗き込んでいる。
彼女は、実は無類の機械マニア。古代の機械を見ると血が騒ぐタイプだ。
「……すっごい!朽ち果てた車はよく見るけど……動くのって、初めて見た!」
「教科書に載ってたね。聖戦前はメジャーな乗り物だったみたいよ」
「ちょっと乗ってみない?」
…………
ユキが運転席に、そしてアスカが助手席に乗り込む。アメ車の内装は無駄にリッチだ。
「やば!ふっかふか!」
「これかな……」
ごそごそ、ごそごそ
カチッ!
ユキがその辺にあるツマミを適当にひねると……
プルルルル、ブルン!ブル!
派手な轟音、エンジンが唸りを上げる。
「うわ!動いた!」
「すごい!……これ何かな」
ユキは調子に乗って、足元のペダルを踏み込む。
ブオン!ブオン!ブオオオオッ!
その瞬間!アクセル全開のイエローキャブが急発進!
「きゃあああ!」
「うわあああ!」
アスカが絶叫する!
「やだ!ぶつかる!」
ドガガガッ!ブロロロロッ!!
「大丈夫、任せて!」
ユキの瞳に鋭い眼光が宿る。
ハンドルを器用に切って、廃ビルの柱をスレスレでかすめながら突き進む!
ブオオオオ!オオオン!
そして、イエローキャブは爆音を響かせてビルの外へ飛び出す。
「ちょ、ちょっ!これ、止まんないの?」
「わかんないけど、操作はできるわ!とにかく、ハヤブサたちのトコに行けばいい……のかな」
ガタガタ!ブロロ!
ガレキを蹴散らしながら、イエローキャブは魔物群がる品川車両基地に向かっていく。
◇◇◇◇
「拠点としては完璧だ!とにかく、リョウコのためにも……あの姉妹には、一ミリたりとも危険な目に合わせない!」
俺は偵察を終えて、意気揚々と戻るが……
「……!?」
ええ!?誰もいないんですけど……
で、車は??
外に飛び出して、周りを見渡すと……
ブロロ……ロロロ……
遠く、土煙を巻き上げて走り去るイエローキャブ。
その先には、魔物で満ちる車両基地――
「ちょっ!どうなってんだよ!」
俺は走って車両基地の方に向かう……
イエローキャブ、乗ってみたい!と思った方……
評価(★)、ブクマ、コメントなどお願いします!




