第十ニ話 ルキアとの死闘
俺たちは一日の作業を終え、板山ギルドに戻った。
二階の応接室へ向かうと――
「リョウコさん! 久しぶり!」
「お久しぶりです!」
ペコリ、ペコリ
部屋に入るなり、アスカとユキは勢いよく頭を下げる。
「知り合いなのか?」
「もちろんよ!」
そして、皆でテーブルを囲んで操車場の様子を細かく報告する。俺は想像以上に被害が大きい事、そしてあのクラスの魔物がまた現れないか心配してる事を伝える。
リョウコは黙って頷き、沈痛な声でつぶやく。
「……そうね。間違いなく召喚士ルキアの仕業ね。でも……ハヤブサからは、まだ報告がないの」
アスカが思わず割り込む。
「ルキア! それ、やばくない?」
「ルキアって……そんなに強いのか?」
「……ルシフェル王直属、最高ランクの黒召喚士よ!」
そうなのか……やっぱ、マンガだけだと知識が浅いな……
「……また現れるなんて!」
「……許せない」
心なしか、姉妹の声が怒りで震えてるように見える。その様子を見たリョウコは、慌てて制した。
「アスカ、ユキ!あなたたちの仕事は、学校をしっかり卒業するコト!ルキアの件は、私たちに任せなさい」
「……はい」
ユキが渋々うなずく。
――その後、俺は彼女たちの“怒りの理由”を、リョウコから聞くことになる。
◇◇◇◇
翌日――
アスカとユキが学校に行っている間、俺は報酬を受け取りにギルドへ立ち寄る。
二階の応接室で、リョウコは時折目を閉じながら、俺にルキアの話を聞かせてくれた。
◇◇◇◇ 十五年前―― ◇◇◇◇
聖戦から三十五年の時が過ぎ……
ロマンシア女王が地下に封じた黒召喚士たちは、徐々に魔力を回復し、ついに本来の魔力を取り戻しつつあった。
そして――地下を完全に制圧。地上への侵攻が始まった。
その最前線となったのが、板山台操車場。
操車場の手前は地下鉄がちょうど地上に出る場所になっており――黒召喚士の操る魔物たちと、板山ギルドのパーティが全面対決する舞台となった。
その戦いの中心にいるのは――新谷姉妹の両親である、新谷ハルトと、サユリ夫妻。そして、ギルドマスターのリョウコ。
グアア……グアアア……
オーク、ゴブリン、トロールの大群。
地下鉄の出口から、黒いオーラをまとった魔物の群れがあふれ出す。
「アースクエイク!」
バキバキバキバキ!
リョウコが両腕を叩きつける!
大地が悲鳴を上げ、無数の亀裂が走る。魔物たちはあえぎ声を上げながら地の底へと沈み込んでいった。
「シャイニング・ソード!」
バリバリバリ!
ハルトの剣が閃き、青白いエネルギーの塊が地を裂く。一瞬で十数体の魔物が焼け焦げた。
「バリア・フォース!」
サユリが詠唱を重ねると――光の盾が味方を包み、迫る敵の群れを弾き返す。
「とおおおっ!」
ズシャッ!
若きハヤブサも疾風のように剣を振るい、次々と敵をなぎ倒していく。
グオオオオ…オオオ
――地鳴り、閃光、爆風。そして魔物たちが発する断末魔のうめき声。板山、いや東京のギルドでも最強のメンバーが集まり、地上への防衛線を死守する。
「やったか……!?」
ハルトが一息つこうとした――その時。
地の底から、さらに邪悪なオーラが迫る。そして、黒いベールをまとった小柄な影が、ゆっくりと姿を現した。
「……黒召喚士、ルキア!」
リョウコが叫ぶ。
「まさか……もう封印が解けるなんて……!」
聖戦でロマンシア女王が命を賭して封じた……最高ランクの黒召喚士。
ベールの奥に細身で色白の顔がわずかに見える。その瞳は氷のように冷たい。
パーティ全員の顔に緊張が走る。
……
スーッ
さらに、不気味なほど静かに、地下鉄出口から歩み出て……
「…………オロチ……召喚……」
小さな声でつぶやいた後、右腕をサッと突き上げる。
シャアアアアーーーッ!
シャア……!
シュアアア……!
「……!」
グアアアッ!
地下の闇を切り裂き、出口から無数の竜の首がうねり出た。重いうめき声と共に、一斉に頭をもたげて襲いかかる!
「……多頭竜だ!」
「うおおお……っ!」
「ぐあああっ!」
竜の一撃が地面を砕き、炎が吹き荒れる。防御魔法を張る間もなく、ギルドの戦士たちが次々と吹き飛ばされていく。
「……ひるむなっ!ここは絶対死守する!」
ハルトが怒号を上げる。
……この背後に立ち並ぶマンション。その一室では、幼いアスカとユキが、彼らの帰りを待っている。
……絶対に、守り抜く。
オロチの前に、ハルトが立ち塞がる。
「おおおおっ!」
「ウォール!」
サユリは防御スキルで必死に竜の動きを抑える。
「シャイニング・ブレード!」
バリバリバリバリ!
光の剣が竜のあごを切り裂き、爆発音と共にウロコが飛び散る。
ヴァアア……ガアア……
だが――オロチは止まらない。
再生し、わめき散らし、さらに暴れる。
ハルトはリョウコに向かって叫ぶ。
「リョウコ!俺たちの力じゃ倒せない……でも封じる事はできる!その間に、ルキア本体を倒してくれ!」
「わかった!」
バリバリバリバリ!
グアアア……!
リョウコは、オロチが剣閃に苦しんでる間に、魔力を集中させて戦場を駆け抜けた。
竜の首がうごめく、そのスキマをすり抜け、必死にルキアを探す。
「……ルキア、どこだ!」
グアアア……グアアアッ!
「うおおおっ!」
オロチの雄叫びと悲鳴が交錯する。ハルトたちももう限界だ。
「ちくしょう!卑怯者!出てこい!」
リョウコは涙を滲ませながら、必死で走り回る。
……!
その時!無数に絡み合う竜の首。そのスキマに、僅かに黒い影が動くのを見つける。
「見つけた……!」
タタタタ……!
「ルキア!逃げるなっ!逃げるなっ!」
必死で追いかけて、大地のスキルを発動する!
「アース……クエイクっ!」
バキバキバキバキ……!
逃げるルキアの背中めがけて、地面に亀裂が走る。
届け……!
届け……!
バキッ!ガラガラガラ……!
「うああああっ……!」
間に合った!ルキアは叫び声と共に、奈落の底に落ちていく。
グアアア………ァ……
主を失ったオロチは、徐々に動きが鈍くなり、やがてその首を地に落として息絶える。
……!
リョウコは急いで出口に走る。
そこで見た光景に、絶句する。
ルキアとの壮絶な死闘。その結末は……
評価(★)、ブクマ、コメントなどお願いします。




