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ガキのたわごと

優しい人

作者: 窯野 四方木
掲載日:2025/11/09

 人でごった返すショッピングモール。

僕の視線の先にいたのは腰が曲がったおばあさんだった。

「大丈夫ですか」

おばあさんに近づいて僕は聞く。おばあさんは微笑むこともなく僕を見る。

「ああ、どこにケーキ屋さんはあるんですか?孫が気になっているらしく…」

歳下の僕にも敬語を使い接するおばあさんに

「右手の列にありますよ。最近できたので店の前に花が飾られていますよ。」

店の方を指さしながら僕は言った。

人には怖がられないように口角を上げて目を細めるんだ。

「ありがとうございます。行ってみますね。」

おばあさんは応えるように微笑んで去っていた。

店に入っていくことを確認して僕も目的地へ向かうため移動する。


 エレベーターに乗り込んで一つ上の階につく、

先程のようなノイズはあらず静かで安心する。

人助けをした優越化に浸りながら僕は図書館へ足を運ぶ。

図書館も変わらず人が多い。多くとも聞こえる音は電子音と鉛筆を滑らす音。

精巣のような気がした。図書館は僕の帰るべき場所だと思う。


 僕は予約していた自習席に座ってノートを開く。

ノートには僕の視界に入った人の行動を書いていく。

僕の隣に座る女性の「本の内容をメモしている」だとか、

顔を上げた先にいる子供が「絵本を小さな体で開く」とか、

 その横に矢印を書く。

隣には「→ページをめくってあげる」や「→読み聞かせてあげる」と

僕が出来る事を書く。これを元に僕は行動している。

いつ隣の女性の手がなくなるかわからない。

いつ子供が本を落とすかわからない。

そうなった瞬間僕は助けにいく。助けられて安心してもらう。

それは僕が「僕のおかげで一時的な安心を得た人」が好きだからだ。


 幸福を追求する権利は誰にでもある。

安心した人が再び僕が消えることで不安定になれば僕は幸せだ。

僕が幸せになるためにみんな不幸になってくれる。

だって卵巣にゴールできるのは一人だけじゃないか。

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