第2話 仲間との絆と図書館の謎
王宮での公爵事件が解決した翌朝、私はふと窓の外を見つめた。冷たい風が城壁を揺らす。王国の平和は一応守られたけれど、胸の奥には不安が残る。
「王女様、今日も図書館ですか?」
メイドのミアが、にこやかに声をかける。
「そうね。まだ解読していない本が山ほどあるの。」
「また王女様の“秘密の趣味”ですか……でも、危険な匂いはしませんね。」
「……危険かどうかは、触ってみないとわからないのよ。」
ふふ、と笑う私の横で、ルイスが黙って眉をひそめる。
「王女殿下、危険な書物には慎重に――」
「わかってる。でも、知識は力よ、ルイス。」
ルイスは少し赤くなった頬を隠すように目を逸らす。そんな姿も可愛いと思いながら、私は図書館へ向かった。
禁断の図書館は、夜にこそその真価を発揮する。古い棚の隙間から微かに魔法の光が漏れ、空気は静かに震えている。手を伸ばすと、昨日は気づかなかった古びた本が私の目に入った。
『王国の影・続編――秘密の盟約』
ページをめくると文字が光り、頭に情報が流れ込む。そこには、第二王子が公爵と共謀して王国を乗っ取ろうとしている詳細が書かれていた。
「ルイス……やっぱり、まだ陰謀は続いているわ。」
「本当ですか? 証拠は?」
「この本が、全て証明してくれる。」
そこへ、エルが颯爽と現れる。金髪ツインテールの魔法使い。今日も魔法書を片手に、目を輝かせている。
「僕の魔法で、この古文書の呪文も解読できる!」
「頼もしいわね、エル。」
こうして、私たち三人の“図書館チーム”が再結成された。ミアも加えれば、探偵+魔法+サポートの最強布陣だ。
昼下がり、私たちは王宮内で情報収集を開始した。廊下に耳を澄ませ、公爵と第二王子の会話をこっそり盗み聞き。
「王女殿下、危険です!」ルイスが低い声で言う。
「大丈夫。私、前世の知識があるの。」
「……本当に頼もしいですね。」
公爵の隠し部屋を突き止め、エルの魔法で扉を開く。そこには、王国転覆のための文書や暗殺道具が整然と並んでいた。
「これが……証拠ね。」
「王女様、これで国を守れるのか?」
「ええ。でも、重要なのは暴くだけじゃなくて、王族としてどう対処するか。」
私は冷静に文書を分析し、ルイスとエルに指示を出す。まるで前世の司書時代に戻ったかのような気分だった。
夜。王宮の庭で、ルイスと二人きりになる。
「ルイス……ありがとう。あなたがそばにいてくれると、本当に心強い。」
「王女殿下……僕も、ずっとそばにいます。」
二人の間に、甘く温かい空気が流れる。けれど、恋愛に気を取られている暇はない。王国を守る使命はまだ終わっていない。
「さて、次は王宮中庭に隠された暗号ね。」
「王女様……その自信はどこから?」
「前世の知識と、本の力よ。」
こうして、私たちは次の陰謀解明へと進む。夜空に魔法の光がきらめき、図書館の書物たちが微かに応えるように光った。
数日後。公爵事件が公表され、王国は一時的な平和を取り戻した。市民は王女の知略を称賛し、ルイスや仲間たちとの絆も深まった。しかし、図書館にはまだ未知の書物が眠り、王国には新たな危機の影が差していた。
「まだ終わりじゃない……」私は小さくつぶやく。
「本と仲間がいれば、私たちは強い。」
そして、図書館の奥で光る一冊の本が、次なる物語を予告している――。