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29話 訪問

 竜胆は、風邪を引いて学校を休んだ。ラインで連絡があった。それについて僕は心当たりがあった。


 と言うのはエンジェル部は、週末にホームレスを対象にした炊き出しを行なっている。


 その炊き出しは野外で行っている。


 もちろん、テントの下で炊き出しを行っているものの、炊き出しのテントを立てる時と片付ける時は空の下である。


 ちょうど先週の炊き出し時、曇天であった。


 無事に炊き出しが終わり、テントを回収する時に大雨が降ってきた。ゲリラ豪雨と言うやつである。


 その時に、僕と竜胆と日向夏はずぶ濡れになってしまったのである。


 そのままエンジェル部は解散して、各々は家に直帰した。


 恐らく、炊き出しの後にずぶ濡れになった事が原因であろう。


 竜胆が風邪を引いたことは、今日の朝のホームルームの時にも松田から聞かされた。


 当然、放課後も竜胆は来ない。


 僕と日向夏は、部室で二人きり。


 一緒に黙々と折り紙に取り組んでいた。


 部活が終わり、帰宅路。


 放課後、僕は松田に呼び出されたことを思い出していた。


 その時、松田にはこのように言われた。


「桜木、お前に頼みがあるんだが?」


「なんですか?」


「竜胆に今日のプリント渡しといてくれ」


 そのプリントと言うのは、体育祭の日程表であった。


 松田は、続けていこう言う。


「家近いだろ?」


「行ったことないから知らないですけど」


「とにかく、帰りに竜胆の家のポストにでも入れといてくれよ」


「……分かりました」


 そんなこんなで、松田に教えられた住所を元に竜胆の家に向かった。


 放課後に、ラインで竜胆の家に寄ることを伝えたけれども、連絡は来なかった。恐らく寝ているのだろう。


 道中、コンビニに寄ってなにか食べられるものを買う。


 お粥とゼリー。


 あとダカラ。


 僕はダカラ派である。他の類似飲料は認めてない。


 それはそうと、竜胆の家は立派なマンションだった。


 僕は、マンションを見上げた。


 うわぁ。


 めっちゃ高い。


 僕の住んでいるアパートとは大違い。


 松田に渡されたメモには、竜胆の部屋は604と書いてあった。


 マンションの入り口は、オートロックである。


 そして、インターホンがあった。


 僕は、竜胆の部屋のインターホンを鳴らした。


 しばらくすると、竜胆の部屋と繋がった。


「どちら様ですか?」


「正義だ」


「あ、え? 正義くん? 正義くんなの? どうしたの」


「いや、松田に頼まれてプリントを届けに」


「ちょっと待っててね、部屋の前で待ってて」


「お、おう」


 マンションのエントランスドアが開いた。


 僕は、604号室に向かった。


 部屋の前。


 十五分くらい待ってから、ようやく部屋の扉が開かれた。


 竜胆は申し訳なさそうにこう言った。


「待たせてごめんね」


「あ、全然構わないけど」


「わざわざ来てくれてありがとね」


「松田に言われたからな」


 僕は竜胆を見た。


 いつも通りの竜胆。


 ただ違うのは、パジャマと言う点。


 しかし、寝起きという感じはしない。と言うよりも、整っていた。


 わざわざ寝癖を治してきたのだろうか。


 濡烏の髪が綺麗であった。


 ただ、まだ熱っぽいのであろう。息も少し荒い。頬がほんのり赤みがかっていた。


 それ故に、いつもよりなんだか色っぽく見えた。

 僕は、プリントを手渡した。


「とりあえずこれ。体育祭の日程表。それから今日の授業で取ったノートも渡しとく。あと、一応おかゆもゼリーとダカラも買っといた」


「ありがとう」


 授業のノートは、部活中に書いたのだ。


 とにかく。


 これで僕の役目は達成された。


「と言うことで、それじゃあまた学校で」


「え? もう帰るの?」


 竜胆は、不本意そうな顔をした。そして竜胆は僕にこう言うのであった。


「ちょっとうちに寄っていってよ」


 と。


 少しくらいならいいかと思い、僕は竜胆の部屋に上がることにした。

 

 

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