28話 不機嫌
部室に行くと、竜胆が不機嫌そうに待っていた。
明らかに顔に出ていた。
そうなのである。
いつも二重のぱっちりした竜胆の目が、今はなんだか睨め付けるように細い。
挨拶しても、うんと返事をするだけで反応が薄いのである。
僕は日向夏を見た。
日向夏は、知らぬ存ぜぬと言った感じで折り紙を作り始めた。
気まずい。
嫌な空気である。
そりゃ、そうだよな。部活サボったら誰だって怒るよな。
僕は、息が詰まりそうな空気の中で折り紙に着手した。
そんなこんなで部活が終わり、下校。
帰り道。
帰路を歩いていると後ろから声をかけてくるものがいた。
竜胆であった。
「ちょっと待って、今日は一緒に帰ろ!」
「別にいいけど」
「嫌だった?」
「嫌ではないけど」
僕は意外に思った。と言うのは今まで下校は各々別々に帰っていたからだ。
竜胆は続けてこう言った。
「やっぱり凪さんと仲良いね」
「そうか? 普通じゃない?」
「普通なの?」
「知らないよ。僕に聞くな」
そう言うと竜胆は不貞腐れたような顔をした。
「正義くんなんて知らない」
「なんでだよ」
「知らないったら知らないもんね」
「だからなんでだよ」
「体育祭、弁当も作ってあげない」
「それは嫌だなあ」
実のところ、竜胆の料理は美味しかった。
看病してくれた時に素うどんを食べて薄々感じていたが、竜胆は抜群に料理が上手である。
まるでお店の料理みたいであった。
「また竜胆の弁当食べたいなぁ」
「食べたい?」
「ああ」
「どれくらい食べたい?」
「めっちゃ」
「全然感情こもってない」
「すげぇ食べたい」
そう言うと、竜胆は嬉しそうにこう言うのであった。
「じゃあ、駅まででいいから私とも二人三脚の練習しよ」
と。
僕は、首を横に振る。
「なんでそうなるんだよ」
「別にいいじゃない? それとも凪さんとは良くて私とは嫌なの?」
「そう言うわけじゃないけど、ここでやるのか?」
「下校時間も過ぎてるから、誰も見てないわよ」
「そういう問題なのか?」
「やらないんだったら、体育祭の時お弁当作ってあげない」
「それは嫌だなぁ」
僕は、やれやれと頭を掻いた。
腹を括る。
歩道。
駅まであと十分ほど。
ここで二人三脚やるのか。
すると竜胆は、僕に髪留めを手渡した。
「これを足に括って」
「お、おう」
僕と竜胆は片足ずつ前に出して揃えた。
僕は、右足。
竜胆は、左足。
そしてその両足首を髪留めで留めた。
お互い、肩を組む。そして一、ニと声を合わせて前進した。
途中、こけそうになりながらもなんとか駅まで辿り着いた。
というか。
なんつー羞恥プレイだ。
たまたま、人通りの少ない時間だったから誰にも合わなかったけれど、同級生に見つかったら恥ずかしいにも程がある。
駅の改札前で、僕達は髪留めを外した。
竜胆は、笑う。
「いや、面白かったね!」
「どこがだよ」
「全部」
「そうか、よかったな」
竜胆はご機嫌であった。
学校での不機嫌が嘘のようであった。
今日は、途中まで竜胆と一緒に帰った。
先に竜胆が電車を降りた時、竜胆は僕に手を振った。
笑顔の竜胆は可愛かった。




