27話 二人三脚
放課後。
部室に向かう前に、日向夏に呼び出された。
誰もいなくなった教室。
日向夏は僕にこう言った。
「ああゆうの、やめへん?」
と。
僕には、日向夏の言う「ああゆうの」について検討がつかなかった。
日向夏は、続けてこう言う。
「ああゆう、自分が嫌われものになればいいってゆうのやめてや」
「お前には関係ないだろ」
「関係あるよ!」
日向夏は、強い口調で言う。
「確かに、うちがリレーにでやんようにしてくれたのは嬉しいよ。けど、それでまーくんが傷つくんは違うやん」
「…………」
「だから、あーゆうのは金輪際やめにしやへん?」
「分かったよ」
「まーくん、そういうところあるから」
…………。
日向夏は、どのことを言っているのだようか。
いつのことを、言っているのだろうか。
日向夏は、続けてこう言った。
「まーくん、自分の事を大事にしてへんから」
「…………」
図星であった。
でも、仕方がないだろ?
僕には、自己肯定感はない。
僕が犠牲になってうまくいくならば、それでいいじゃないかと思っている。
日向夏は、語る。
「まーくんは、いつもうちたちの為に頑張ってくれとる。バザーの時も、しおりんが輩に襲われた時も」
「ああ」
「けど、まーくんが傷ついてる姿を見て、辛くなる人もいることも分かってね」
「…………」
僕は黙る。
今まで、僕にそんな経験はなかった。
なぜかならば、今までは僕以外の人間が敵だったからだ。
僕は、いつも傷つけられていた。
他者に、踏み躙られていた。
だから。
だからこそ、こんな事を言われることが新鮮だった。
日向夏は、にっこり笑ってこう言った。
「だって、うちまーくんに助ちゃんいつも助けられとるから、今度はうちがまーくんの助けになりたい」
「別に助けてないよ」
「まーくんがそう思っても、うちは助けられたとおもっとるからええの。それはそうと……」
日向夏は、一瞬口を継ぐんだ。
「それはそうと、二人三脚の練習しやへん?」
「急だな!」
急であった。
日向夏は、こう言うことがよくある。
僕は日向夏の気まぐれに、いつも振り回されっぱなしだ。
「けど、竜胆が怒るだろ? 部活来るの遅いと」
「大丈夫、もうしおりんには言ってあるから」
「そうか、けど二人三脚なんて当日ちょっと練習するだけでいいだろ?」
「でも、どーせやったら勝ちたいやん」
「まあ、そうだけど」
「せやで、ええやろ?」
「あー、もう、分かったよ」
それから僕と日向夏は、校庭のグラウンドに出て行った。
紐を足にくくりつけて、肩を組む。
身体と身体が密着する。流石に胸がどきどきした。
僕と日向夏は、足並みを合わせて歩一歩足を進めた。




