20話 バザー二日目 前編
バザー二日目。
この日は、曇りであった。
雨が降りそうな空模様であったが、かえってそのおかげで昨日よりは気温は低かった。
と言うか、生暖かかった。
ムワッとする感じ。
暑いよりはマシだけど、汗が吹くにまとわりついて気持ち悪い感じ。
それはそうと、二日目のバザーも好調であった。
しかし、アクシデント発生。
ハプニングである。
十六時頃。
テント、拠点。
視察に来ていた橘市長が僕の元へ駆け寄って来た。
「桜木くん、まずいことになった」
「なにかあったんですか?」
「やばい、柿山栄三郎が来るのが遅れる!」
「え、まじですか?」
柿山栄三郎。
超人気宴会歌手である。
高齢者御用達である。
年寄りのカラオケ聞くと、みんなこれ歌ってるイメージ。
カラオケスナックの横通ると、かなりの頻度で聞こえる。
どうやら橘市長は、柿谷栄三郎と同級生だったようで、友情出演してくれたようである。
僕は、橘市長に問う。
「ちなみに、来るのにどれくらいかかるんですか?」
「そもそも出発が遅れた上、東京から高速でくる途中で事故渋滞にあったらしい。予定時刻よりも二時間かかる」
二時間か。
それはやばいな。
開演予定時刻が十八時。
二時間遅れると、到着時刻は二十時か。
多くの参加者が、柿山栄三郎を待ち望んでいる。
僕は、竜胆と日向夏を見た。
竜胆は、こちらの様子に気づいたようだ。
……って、日向夏はどこだ? 見当たらない。
多分、いつものようにサボりだ。
僕は、竜胆に柿山栄三郎の件を耳打ちした。
「え、どうしよう!」
「こっちのセリフだよ、困ったなぁ。お客さん怒るだろうなぁ」
「そうよね」
とは言え、今回の件はしょうがない。
後で放送で、柿山栄三郎のコンサートは中止になったという旨を流そうか。
そう考えていると、慈徳高等学校の豌豆もやってきた。
「桜木さん、聞きましたよ」
「柿山栄三郎のことですか?」
「そうです。どうするおつもりなのですか?」
「どうするとこうするも、中止にするしかないんじゃないか?」
「そう言うわけにはいきませんよ。お客さん、怒りますよ」
「だろうなぁ」
「じゃなくて、企画を考えたのは桜木さんでしょ? なんとかしてくださいよ」
「え?」
…………。
人任せかよ。
分かったよ。
思考。
僕は、口を開く。そして、みんなに促した。
「コンサートの為に、カラオケロボがあっただろ? それでのど自慢大会できないか?」
と。
意外にも、橘市長はこう反応だった。
「いい案だ! すぐにやろう! 今すぐやろう!」
僕は、すぐに行動に移した。
十七時までには開始しないと。
そうすると、柿山栄三郎が到着するまで三時間あるから……。
曲は、一曲四分前後か。表彰に三十分程度かかるとして、参加者のステージの転換と考えると、募集はざっと三十人くらいか。
上位入賞者には、賞金を出した方が参加者希望者を集そうだ。
僕は、指示を出した。
「市長は、柿山栄三郎が遅れることと、代わりにのど自慢大会をやることを放送で流してください。参加者は三十人くらいまでで、参加費二千円で」
僕は、続けてこう言った。
「竜胆さん! とりあえず僕は賞金の商品券でも買ってくる。十七時までには始められるようにしてくれ!」
「わ、分かったわ!」
僕は、走る。
テントから、売上の六万円を握りしめる。
近くの金券ショップに行き、六万円の商品券を買った。
バザー会場に戻る頃に、十七時前。
僕の指示通り、のど自慢大会が始まろうとしていた。
参加人数は、三十二人。結構集まった。
ここからが、正念場である。




