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19話 バザー初日目

 バザー初日目。


 炎天下の中でも、人の活気があった。


 テントを張っていて、その中で僕は物販をやっていたけれども、熱くてバザーが開始してからものの三十分で限界であった。


 であるので、その都度休憩と交代を挟みながら、僕と竜胆と日向夏はバザーに販売員として参加した。


 結果としてバザーは成功であった。


 初日目でも、かなりの商品が捌けた。


 物販のいいところは、売れ残って在庫になっても再販出来るとこらにある。


 逆に、食品は売れ残ると即廃棄になってしまうことが多いので、客入りの分析が難しそうだ。


 ゲストとして、初日はバザー最終時間手前に、地元のお笑い芸人を呼んだ。


 それがかなりウケたようで、かなり好評だった。

 そして、初日目終了。


 テントを片付けて、帰り支度をする。にもかかわらず日向夏はどこにもいない。


 あいつ。


 またサボりか。 


 そう思っていたその時。


 竜胆を呼ぶ声がした。


「あら、栞、こんなところにいたの」


 と。


 僕も竜胆は、声の方に目をやる。


 そこには、女が立っていた。


 すらっとした長身。


 濡烏色の長い髪をしている。


 そして、氷のようなクールな顔つき。


 美人、といった印象である。


 しかし、どこかで見たような顔――


 そうだ、竜胆だ。


 この人、竜胆に似ている。


 ただ、竜胆と違って冷たい印象である。


 栞は、怯えていた。 


「お姉様、こんなところでなんのご用ですか?」


「別に。大学の帰りにお笑い芸人のライブがあるってきいたから、見に来ただけ。私、好きなんだよね、『ざんねんザムライ』」


「そうなのですね」


 女は、こちらを見た。 


「あら、栞のクラスメイトかしら。ご挨拶しないとね。はじめまして、私、竜胆真理亜です。栞の姉です」


「ご丁寧に、どうも。僕は桜木正義です」


「ふーん、正義くんか。正義くんって言うのか。いい名前だね」


「そりゃどうも」


「ところで、あなたたちは付き合ってるの?」


「は?」


 竜胆の祖父にも、似たようなことを聞かれたような気がする。


 僕は、否定する。


「付き合ってないです」


「へぇ、そうなんだ」


 竜胆姉は、淡々と言う。 


「いつ付き合う予定?」


「そんな予定もないよ」


「そっか、私、見る目はあるんだけどな」


 らしい。


 ほんまかて。


 竜胆は、僕を遮るように竜胆姉に問う。


「それでお姉様、なんのようですか?」


「特に何もないよ。たまたま見かけただけ。何してるのかなぁって」


「それは……部活動……だけど」 


「ふーん、なるほど」


 竜胆姉は、顎に手を当てて考える素振りをする。


 そして、こう言った。


「栞、お父様がこんなこと許さないと思うけれど」


 と。


 竜胆は、噛み付く。


「お父様には、関係ないじゃない」


「まあ、そうだけど。面倒なことになる前に言おうと思った、それだけ」


「そうですか、ご助言、ありがとうございます……」


「うん、それじゃあ。あと彼氏くん、うちの愚妹をよろしくね」


 竜胆姉は、それだけ言うと踵を返し帰って言った。


 …………。


 だから、彼氏じゃないって。


 それはそうと。


 僕は、竜胆を見た。


 竜胆は、震えていた。


 怯えているのか、怒っているのか分からない。


 ただならない因縁がありそうだ。


 その時、日向夏が袋を抱えて戻ってきた。


「屋台が閉まる前に、いっぱい屋台から食べ物と飲み物買ってきたで! こっちが焼きそばでお茶もあるで」


 日向夏は、お茶のペットボトルを手渡す。


「しおりん、どうしたん? なんかあったん、まーくん?」


「なんか、竜胆さんの姉とあったんだけど。それからこんな感じ」


「そうなんか……なんかあったら言うんやで、しおりん」


 それからの竜胆は、ずっと口数が少なかった。


 こんな竜胆を見るのは、初めてであった。


 

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