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16話 バザー企画会議 その2

 豌豆勝は、慈徳高等学校の三年生である。


 竜胆曰く、大企業の御曹司であるとのこと。言葉遣いから育ちが良さそうなのが滲み出ている。しかし、おぼっちゃん特有の上から目線的な話し方が嫌いである。竜胆とは違う意味で……。


 とにかく豌豆は、意識が高い。


 僕はそう思った。


 それも、悪い意味でである。


 あれだ――自分が納得したようにしないと気が済まないタイプだ。


 竜胆曰く、豌豆は仕事はよく出来る男らしい。


 去年、竜胆は彼と一緒にバザーに参加したのだけれども、真面目で素直で働き者であったそうだ。


 なぜ、それがどうして今年になってしゃしゃり出てくるようになって来たのかと言うと、それは三年生で発言権を得たからであろう。


 去年までは豌豆は下級生であった。けれども、今年からは最上級生である。


 今年が最後の高校生活だからか、或いは自分が大企業の御曹司だからかどうかは分からない。元々、豌豆は野心家だったのかもしれない。


 本当のところは、誰にも分からない。


 本人にしか分からない。


 ただ分かることは、豌豆は例年までのバザーではなく、全く新しバザーにしたいと言うことである。


 イノベーション。


 どうやら豌豆は、それを起こしたいとのことらしい。


 とにかく。


 八月中旬。


 前回のバザー企画会議から一週間が経ち、今日二回目のバザー企画会議が行われるのであった。 


 今回の会議で、大まかな方針が決まることになっている。故に、会議では市長も見学に来ていた。


 会議の進行は、前回と同じく竜胆。


 まず本会議では予算、支援団体及び協力団体、出店希望団体、個人参加希望者等の確認をとった。


 そこまでは、順調に会議は進んでいった。


 しかし、本題のバザーの企画段階に入ってから、やはりと言うか予想通りと言うか、豌豆が意見してくるのであった。


「僕はね、例年のような普通のバザーも悪くはないんだけど、世の中は常に移り変わる。それに対応していかないといけないと思うんだ」


 と。


 竜胆は、豌豆に質問する。


「具体的には、どのように対応するのですか?」


「そうだね。去年、一昨年のバザーを見た感じだと、参加者に偏りがある。主婦層と年配者が多いイメージだ。それ以外の客層を呼び込むのにはイノベーションしかありません」


「そうかもしれませんね。それで、具体的にどのようなプランでその客層を呼び込むのですか?」


「そうですね。僕のプランとしては、例えば以前までのフリーマーケット型のバザーではなくて、市のご当地グルメを大々的に売り出したフードフェス型にすれば、主婦層、年配層ならびに若年層も呼び込めると思います。また、SNSを活用することによって他県からの呼び込みも可能と思われます」


「なるほど……」


 確かに、そうである。


 それだったらば、多く客層を呼び込むことが可能である。


 今では、SNSでも顧客の呼び込みも出来る。


 問題は、今月中にプランが間に合うかどうか。


 コストとリターンの採算が合うかどうか。


 である。 


 竜胆は、豌豆に質問する。


「具体的には、どのようにするのですか?」


「そうですね……出店団体に関しては、そのまま出店しますが、我々学生が出店する店舗を全てグルメフェスにすれば良いと思います」


「え」


「皆さんはどう思いますか?」


 豌豆は、他の学校に意見を促した。


 反応は上場であった。


 確かに、楽しそうである。


 楽しそうではあるのだが、やはり具体性には欠ける。


 まるで社長が、思いつきの企画を社員に言うみたいだ。


「僕の案、賛同意見も多いみたいだね」


「そうですね」 


 竜胆は、流され気味であった。


 僕は、立ち上がった。


 そして、こう言う。


「急にそんなこと言われても困る」 


 と。


 豌豆は、鼻で笑う。


「温故知新。常に僕たちは新しいステージを目指さないと、時代に取り残されるよ。それから、桜木くんは委員長じゃないよね、ひっこんでて」


「豌豆さんも実行委員じゃないでしょ。そもそも、そんな予算はどこにある? 採算が取れる保証はどこにある? 時間は? もしグルメフェスにするにしても誰がどうやって何を作るんだ!」


「もちろん予算内でやる。かかるのは食材費だけだからね。採算が取れるかどうかは試してみなきゃ分からないじゃないか?」


「だとしても、バザーは二週間しかないんだ。ご当地グルメと言っても何を出すのか具体的な案はあるのか?」 


「ある。天むす、手羽先、味噌カツ、ひつまぶし、台湾混ぜそば、きしめんあたりかな? それを各七校で分担して作れば良いと思う」


「誰がそれを認めると」 


「皆んなに認めさせるんだよ」


 とその時。


 ぱんぱん、と市長が手を叩いた。 


「まあまあ、熱くなってるとこ悪いけどそこまでね。この楠十蔵、白熱した議論でわしの胸も熱くなってしまった」


 そして市長は、こう続けた。


「意見がまとまらないね。ワシはどっちの意見も良いと思う。例年と同じバザー。新しいバザー。どちらも結構じゃないか。しかし、どちらも意見がまとまっていないようだから、決議は来週にしよう」


 と。


 豌豆は、首を横に振る。


「バザーはグルメフェスにすべきです!」


「でも、全員が納得したわけではないね? 聖フェリス校側の意見を支持している校もある」


 そして、市長はこう続ける。


「だからワシは、こうしたい。来週の最終会議で聖フェリス校と慈徳校の代表者が、バザー企画をプレゼンしてもらう。そしてその後に討論会をして、各校の投票でどちらの案を採用するか決めよう」 


 と。


 いつの間に、ややこしいことになってしまった。


 会議後。


 帰り道。


 竜胆は、僕に問う。


「どうしたらいいと思う?」


「どうしたらって、フェスなんか無理に決まってるだろ」


「私もそう思う」


「大体素人がどうやって料理するんだよ? 発注は? 準備は? 提供方法は? 保存は? そう言うのきちんと固めないと何も出来なくなるぞ」


 な?


 と日向夏に促す。


「えー、うちは天むす食べたいなぁ」  


 日向夏は相変わらずバカであった。

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