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15話 バザー企画会議 その1

 夏休みも一週間が経った。


 朝から蝉が鳴いていた。例年同様、猛暑が続いている。


 しかし、市役所内は冷房完備されており、寒いくらいであった。


 市役所。


 僕も竜胆と日向夏は、学生支援委員会の会議に出席する為に、会議室に向かった。


 そもそも、学生支援委員会というのは何かと言うと、学校を主としてボランティアを主に活動とする部らの連合体である。


 一体、そのような部活動らで連合を作って何をするかと言うと、大規模な地域発展である。


 そうなのである。


 僕ら聖フェリス学園高等学校エンジェル部を含めた、七校のボランティア系部活から成り立つ学生支援委員会は、夏休みの終盤である八月末に市主催のバザーを開くことが毎年の行事となっている。


 そして、そこで得られた利益は地域発展や市の活性化の為に使われると言う仕組みとなっている。


 本日は、その為の第一回バザー企画会議であった。


 ちなみに、バザーの企画会議は学生が主体である。それは、どうやら市長の意向らしい。


 市長曰く、学生らに真剣に地域発展の意識を持ってほしいと言うことらしい。


 今の市長が市長選挙で初当選したのが七年前で、そこから学生主体のバザー企画が毎年伝統的に行われていると言う。


 そんなことはどうでもいいが、とは言っても企画するのは所詮学生。それもたかだか高校生である。大した企画が立案出来るわけでもない。そもそも、そういった社会経験が不足している。と言うよりは皆無である。


 基本的に、例年どのようなバザーが行われているかのフォーマットを参考にしめ企画書を作成するのが通例であり、竜胆曰く毎年似たようなバザーであると言う。


 しかし、今年はそう言う雰囲気ではないらしい。


 会議室。


 スクール形式に席が組まれており、各校の名前が書かれた三角席札が置いてあった。


 僕は、自分の席に着いて周りを見回した。


 参加高校は、以下の通り。


 聖フェリス学園高等学校。


 西邦高等学校。


 光ヶ丘高等学校。


 桜見高等学校。


 心学館高等学校。


 藤ヶ丘学園高等学校。


 慈徳高等学校。


 今年の実行委員長及び進行役は、僕らが聖フェリス学園高等学校エンジェル部長――竜胆栞。


 書記及び議事録――桜木正義。


 日向夏は、とりあえず庶務をやってもらう。何も出来なさそうなので庶務という名の雑用係を投げておいた。


 実行委員長は、各学校順番に担当することとなっている。今年がたまたま聖フェリス学園高等学校であった。故に僕たちの席は一番正面の席で、他校と向かい合う形となった。


 皆が揃い、竜胆が挨拶をする。


 そして、会議を始めた。


 異変はすぐに感じた。


 会議と言っても毎年決まっていて、例えば各校ごとに部活で今まで集めた古着を販売するとか、福祉施設から委託されたハンドメイドの品や絵を販売するのが通年である。


 しかし生徒の意見から、今年はバザーに拘らず例年と違うことをしたいと言う意見が出て来たのである。


 ある程度まともな意見だと、例えば、


 プチ遊園地のようなアトラクションを設置したい。


 規模の大きい露天喫茶を開きたい。


 グルメ・フードフェスがしたい。


 等。


 演劇の公演や、自主制作映画の上映などという、時間的にも予算的に非現実的な意見も出た。


 そんな感じで、一部の学校が自分の言いたいことを言い始めたので、その他の学校もだったらと僕も言った感じで話がまとまらなくなって来たのである。


 会議は踊るされど進まず、か。


 竜胆は、困っていた。


 僕は、竜胆に耳打ちする。


「これやばいな」


「そうね、皆んな話を聞いてくれないわ」


 僕は、日向夏の方を見た。


「おい、日向夏。お前はどう思う?」


「ん? うちは肉フェスにしたい! お肉いっぱい食べたい!」 


 …………。


 やっぱ聞かなきゃよかった。


 そいういえば、コイツはただのバカだった。


 皆んなが話を聞いてくれないで、竜胆は涙目になっていた。


 とは言え、所詮は学生の企画だ。実現が困難な企画は市役所側から没になるであろう。


 しかし――


 竜胆を見ていると、なんだか哀れに思えて来た。

 いつも人の為に一生懸命な竜胆が困っているのを見て、助けたいと思った。


 これは、心変わりではない。


 僕は今でも竜胆のことを、苦労知らずなお嬢様で、おせっかいで面倒臭い奴と思っている。しかし、竜胆の悲しい顔を見ると何故か不愉快な気持ちになる。


 さあ、どうしようか。


 場の空気を変えよう。


 一つ、案がある。


 しかし、こんなことをしたら他校からの顰蹙は免れないだろうけれども、そんなことはどうでもいい。どのみち僕は嫌われ者である。


 いつも、一人である。


 今更人に嫌われたところで、関係ない。


 それこそ、どうでもいいことだ!


 僕はその場に立ち上がり、テーブルを両手で強めに叩いた。そして、こう言った。


「あのさ、それそろそろいい加減にしないか?」


 と。 


 静寂。


 会議室は完全に静まり返った。


 そして僕は、こう続ける。


「今は、そんな話をする時間じゃないだろ。みんなでこういう企画がいいって押し付け合う時間じゃないはずだ。でないと、建設的な話が出来ない。まずは、どう言うバザーにするべきかを聞きたい」


 そう言うと、皆んな納得したように首を縦に振った。


 しかし、それとは別に挙手をする男の姿があった。確かこの男は会議が始まってすぐに、バザーに拘らず例年と違うことをしたいと言った奴だ。


 三角席札には、慈徳高等学校と書いてある。


 僕は、男に問う。


「はい、どうしましたか?」


 男は、立ち上がって言う。


「僕は、慈徳高校三年生の豌豆勝と申します。先程のあなたの意見ごもっともだと思います。ごもっともだと思いますが、少し頭が硬すぎるのではないかなと思いまして。あなた、お名前は?」


「桜木正義だ」


「なるほど、桜木くん。そう呼ばせてもらうね。さて、せっかく議論が盛り上がっているのに、それを止めてしまうのはもったいないと思ったのですよ。はい。それはそうと、桜木くんは書記ですよね? ここの委員長は竜胆さんですね。自分の意見を言うのでしたら、竜胆さんに筋を通すべきでは?」


 それはそうだ。 


 ただ、最初に竜胆の進行を無視して脱線したのはお前達だ。


 言われる筋合いはない。


 僕は、豌豆に言う。


「そうかもしれない、そこは否定しない。だけど今年の実行委員は僕らなんでね。大体、竜胆の進行無視したのはお前らだし。あと書記、議事録は僕だからさ、どうでもいい議論されると記録するのが困るんだよね」


「そうかい?」


 豌豆は、あまり気にしてなさそうだった。


 そして。


 そこで、会議は終了の時間となった。


 会議の続きは、次回に持ち越しである。


 帰る準備をしていると、竜胆が僕に声をかけてきた。


「さっきは助けてくれてありがとうね」


「別に助けたつもりはないが、結構大変な会議になりそうだな」


「そうね……」


 僕と竜胆との心境とは裏腹に、日向夏はこう言うのであった。


「そう言えば、なんでまーくんは急に怒ったの?」

 と。


 やれやれ。


 もはや、日向夏の空気の読めなさ加減は癒しである。


 そう思っていると、帰り自宅を終えた豌豆がこちらにやって来た。


「いやぁ、さっきはとてもいい議論が出来たね。非常に楽しかったよ。是非次も頼みたいものだね。次回ももっと盛り上げていこう。よろしく頼むよ!」


 そう言って握手を求める豌豆。


 僕と竜胆と日向夏は、苦笑いで握手をした。


 …………。


 やはり次の会議は、大変になりそうだと思った。

 


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