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赤髪のアン・シャーリー

 令和時代(むかしむかし)、日本のある所に、アン・シャーリーという少女が住んでいた。彼女はアニメの様に大きい目に、アニメの様に小さい鼻で、痩せこけていて、顔はそばかすだらけだった。そして、髪は鮮血の様に真っ赤で、赤毛よりずっと真っ赤な赤髪を足元まであるかなり太い三つ編みお下げにしていた。アニメキャラのような美女だが、顔はそばかすまみれであった。

 アンは好んでピンクの服を毎日着ていた。そんなアンは病院に治療に来ていた。


「手術完了!これですっきりしたわ!」


 アンはそのそばかすをレーザー手術で全て消したのである。アンの顔は白雪のような美白になった。


「次は胸ね。」


 数日後アンは豊胸手術も成功させた。幻のZカップを実現させたのである。


「義乳…。」


 そうつぶやいたのは、ギルバート・ブライスである。学生時代にアンの赤髪を「トマト」とからかってアンに画板で頭を叩かれた過去がある。画板が粉々になる程の勢いで叩かれていた。それ以来、アンの事を「ハバネロ」と呼ぶようになるが、照れ隠しであり、二人きりの時は「アン」と呼ぶ。


「手術で美しくなれる。便利な時代になったものね。」


 そう言ったのはアンの親友のダイアナ・バリー。黒髪ロングヘアの美女である。彼女も脂肪吸引手術をした事がある。

 彼ら3人はこれから強大な悪との戦いに巻き込まれていくのである。









 彼らの住む日本は隣国の国家主席プー・キンペーの侵略の脅威にさらされていた。熊の着ぐるみを着た謎の人物である。プー・キンペーは恐ろしい独裁者で、国民から幻のお宝や伝説のお宝を接収して私腹を肥やしていた。そして、国内だけにでは飽き足らず、副国家主席のクリストファー・ロビンとともに日本侵略の魔の手を伸ばしているのである。


 そんな緊迫した国際情勢のさなか、アンとギルバートとダイアナは暢気にアルバイトを探していた。

 アンが朗報を持ってきた。


「時給1万円!最高のタイパのバイトを見つけたわよ!」

「ハバネロ。この法外な報酬…闇バイトなんじゃないか?」


 ギルバートが苦言を呈した。ダイアナも続く。


「なんだか怪しいわよ。この求人。」

「大丈夫よ!もし闇バイトだったら途中で辞退すればいいんだし!」

「それもそうか。」


 ギルバートが納得した。結局、3人はアルバイトに応募することにした。

 数日後、3人は面接会場に向かった。

 そこにはいかにもステレオタイプなグラサンをかけた黒服の男が立って居た。


「面接部屋には3人で入って下さい。」

「え?集団面接ですか?」

「入出すればわかります。」


 3人は恐る恐る面接部屋に入室した。


「失礼します。」

Congratu(コングラッチュ)lation(レーション)!」

「え?」

「3人とも合格です。」

「え?どういう事?」


 アンは困惑しながら尋ねた。


「3人とも即採用です。さっそく働いてもらうので付いてきて下さい。」


 3人は言われるがままに面接官について行った。


「皆さんにはここで魔法の訓練をしてもらいます。」

「マジック?」


 ダイアナは耳を疑うように聞き返した。


「手品ではありません。魔法です魔法。」


 ギルバートはアンに耳打ちした。


「闇バイトではなさそうだが…。」

「そう。闇バイトではありません。これはむしろ、光バイトです。」

(しまった!聞こえていたか!)

「正義のために魔法を研修するのです!いいですね!」


 3人目隠しされ人っ子一人ない荒野に連れていかれた。


「まずここで。皆様の現在の実力を測りたいと思います。」


 教官は3人に魔法のステッキを渡した。


「念じながらこれを振ってみてください。それで誰でも初級レベルの魔法が使えます。」

「じゃあ、歳の順って事で俺から!」


 ギルバートは魔法のステッキを思いっきり振った。


 荒野一帯が吹き飛んだ。


「おかしいおかしい!」

「なんだこの威力は!?」


 教官たちがざわめき始めた。


 ギルバートはきょとんとしている。


「俺の魔法がおかしいのって、弱すぎって意味だよな?」

「それ以外にある?」

「なんの確認?」


 ギルバートは落ち込みながらステッキを置いた。


「まぁ。特訓すれば少しはマシになるだろう。次は赤髪の娘!君の番だ。」

「はい。わかったわ。」


 アンがステッキを振ると地割れが起こり、地面から溶岩が噴き出してきた。


「君は炎属性か。最後、黒髪の娘。君の番だ」


 ダイアナもステッキをふった。すると地盤沈下を起こし、湧水が噴き出してきた。


「君は水属性だな。」

「よし分かった。君達の実力はよーく把握した。これからみっちり鍛錬を積んでもらう。」


 3人は来る日も来る日も魔法の特訓を事欠かないであった。

 変化が起きたのは数か月後。


「君達にはプー・キンペー国家主席直属の諜報戦闘員を討伐してもらう任務を命じる。」

「な、なんですって!?」


 アンは驚く。その衝撃に、ギルバートも逆上した。


「なんだと?!もう一度行ってみろ!」

「言っただろ。『光バイト』だと。正義のために魔法で敵と戦う。それが当社の本来の仕事だ。」

「そ、そんな突然!」

「つべこべ言うな!早くいけ!」


 3人は困惑しながらも給料に満足しているので任務に従った。

 3人は魔法のローラースルーゴーゴーに乘って現場に向かった。時速300㎞以上で走れる優れものである。

 そこには4人の鎧姿の男たちがいた。男たちはアン達に気が付く。


「なんだお前達は!」

「あんた達を討伐しに来たのよ!」


 アンは啖呵を切った。


「僕達を倒す?このゲーム四天王と呼ばれる僕達をか?」

「とんだロマンチストだな!」

「ゲーム四天王のリーダー!エックスボックス!」

「ゲーム四天王のサブリーダー!ゲームキューブ!」

「ゲーム四天王のサブサブリーダー!ゲームボーイ!」

「ゲーム四天王のサブサブサブリーダー!ウィー!」


 四人はゲーム名のコードネームを持っているのでゲーム四天王と名乗っているのである。


「やっちまえー!」


 そう言い放つとゲーム四天王はアン達に襲い掛かってきた。


「いくわよー!食らいなさい!」


 アンは溶岩で攻撃した。


「ぎゃあ!熱い熱い!」

「いいぞハバネロ!効いてる効いてる!」

「なぁ~んちゃって!」

「何!?」

「溶岩の温度は1000℃程度。その程度ならこの魔法の鎧でガードすれば全く効かないぜ!」

「じゃあ次は私の番よ!」


 ダイアナは放水攻撃をした。


「ははは!良い行水だ!しばらく風呂に入っていなかったからちょうどいいぜ!」


 放水攻撃も溶岩攻撃もゲーム四天王には通じなかった。


「次は僕達の番だぜ!」


 ゲームボーイはアンの顔面に魔法の光線を放った。


「きゃああああ!!」

「貴様!女の顔を!」


 ギルバートは激怒した。


「女だからこそ敢えて顔を狙ったんだよ!」

「次はコンボでいくぜ!!!」


 四天王は合体攻撃を繰り出した。


「 クアドラプル・マジック!!!」

「そうは行くか!!!」


 ギルバートは魔法の結界を貼った。しかし、結界は決壊してしまい、アン達は吹っ飛ばされた。アン達3人は大ダメージを受け戦闘不能に陥った。


「まだまだ~~!!」


 ギルバートは精一杯の魔力を振り絞って自分たちの大ケガを回復させた。ギルバートは器用貧乏で攻撃力こそ低いものの多彩な魔法を習得したのであった。


「く、こうなったら一度撤退するしかない!三十六計逃げるに如かず!!」


 ギルバートは気絶しているアンとダイアナを担ぎ上げた。


「くそ~!次こそは~!覚えてろよ~~!」


 ギルバートはそう捨て台詞を吐いて逃走した。


 四天王たちは後追いしてこなかった。


「ふん!今日のところはこれぐらいにしといてやる。」

「あんな雑魚ども殺すまでもない。何度来ても返り討ちにしてやる。」

「弱すぎて放っておいても何もできまい。深追いしてまで殺すのは、時間の無駄だ。」

「『罪を憎んで人を憎まず』さ。例え悪人でもむやみやたらに殺す必要はない。」


 四天王たちはアン達の方を悪人だと認識しているのだった。


 アン達は任務に失敗した為、減給させられていた。


「くそ~!!逆襲してやる!!!」


 ギルバートは激怒した。


「今度は任務に失敗しないように今からさらに鍛え直す必要があるわね。」


 アンは冷静だった。ダイアナも落ち着いて言う。


「特訓が必要ね。」


 3人はリベンジに燃え、臥薪嘗胆の思いで修行をするのであった。












 アンは炎を自由自在に操れるようにどんどん特訓した。ダイアナも水の威力を発揮できるよう特訓を繰り返した。

 一方、ギルバートは…。


「ギルバート。特訓の調子はどう?」

「調味料や小麦粉を自在に操る能力を開花させたぜ!この魔法は分量を量らなくても念じたグラム数で調味料や小麦粉をテレキネシスで運ぶことができるぜ!」

「そう。それは便利ね。もしかして、肉や野菜も念じただけで分量通りにしたりとかできたりするの?」

「それは無理。あくまで塩や砂糖や胡椒や小麦粉と言った粉状のものだけ操れる。粉を意のままに操れる能力さ。」

「使い道が局所すぎるわね。で?それの能力は戦闘ではどう役に立つの?」

「特に使い道はないね。」

「じゃあ、駄目じゃない!」

「でも掃除もできるぜ!粉埃を巻き上げて集める事もできる!掃除機いらず!」

「で?それが戦闘でどう役に立つの?」

「立たない。」

「はぁ…。」

「将来は専業主夫にでもなろうかな。ハハハ。」


 何はともあれ3人は鍛錬に鍛錬を重ね続けて、リベンジに燃えるのだった。

 そして、その機会は意外にも早くやってきた。

 敗戦から数か月…。晩秋の乾燥する季節の事である。新たな任務で、ゲーム四天王の討伐命令が下されたのである。名誉挽回のチャンスを得たのだ。

 3人は魔法のローラースルーゴーゴーで、ゲーム四天王のいるアジトに乗り込んだ。3人の逆襲が今始まる。


「今度こそあなた達を倒すわ!」


 アンがさっそく宣戦布告した。そして、アンは火炎放射を放った。


「ぎゃあああ!!!」

「6000℃の炎の舞いよ!!!」


 ウィーは黒焦げになった。


「やったぞ!ハバネロ」


 ギルバートは歓喜の声を上げた。そして、3人で万歳をした。


「ばんざーい!ばんざーい!」

「くくく。下っ端のウィーを倒したのがよっぽど嬉しいようだな。」

「奴は四天王最弱。」

「四天王の面汚しよ。」

「くらいなさーい!!!」


 ダイアナは水の渦を発射した。


「グエーッ」


 ダイアナの発射したウォータードリルはゲームキューブとゲームボーイを貫いた。


「どんなものでも貫くほどの発射威力を得たのよ!」


 ダイアナは自慢げにそう言い放った。

 追い詰められたエックスボックスは悪あがきをする。


「魔法のポケベルで援軍を読んでやったぞ!後10分で到着するぞ!」

「10分もあれば十分よ!文字通り!」


 アンは自信満々にそう宣言した。ギルバートも超余裕である。


「10分も耐えられると思っているのか!?」

「ふざけるな!僕はゲーム四天王のリーダーだ!四天王のリーダーをなめるなよ~!」

「時間を稼がせる訳にはいかないわ!一気に決めるわよ!」

「こーい!」


 アンとダイアナは攻撃を放った。

 エックスボックスは素早くかわした。


「こうなったら10分間逃げ回ってやるぞ!!」

「卑怯よ!」

「そうよそうよ!」

「三十六計逃げるに如かず!そう教えてくれたのは貴様らだぜ!」


 アンとダイアナは攻撃魔法を繰り出すも、エックスボックスは素早くかわし続けた。


「もう!ちょこまかと!」

「当てられるものなら当ててみろよ!!」

「まだ4分!後6分もあるわ!その間に何とかして仕留めないと!」

「僕の逃げ足の速さは宇宙一だ!!」


 如何なる魔法攻撃もエックスボックスは悠々とかわしおおせた。


「俺達は魔法に頼り過ぎていた。」


 そう言うとギルバートはエックスボックスに立ち向かっていった。


「なに!?」


 エックスボックスは意表を突かれた。


「何も魔法だけが攻撃手段じゃない!俺も足の速さには自信があってな!」


 エックスボックスはギルバートに捕まってしまった。


「いまだ!ハバネロ!ダイアナ!撃て!!!」

「馬鹿な!貴様も巻き添えをくうぞ!?」

「俺には再生能力の魔法がある。死ぬのはお前だけだ!」


 しかし、その瞬間突如周りに煙幕が発生した。


「なに!?何が起こったっていうの!?」


 アンとダイアナは視界を失いパニックに状態だ。


「間に合ったか。援軍よ。」


 エックスボックスはニヤリとした。ギルバートは驚愕する。


「そんなバカな!?まだ5分しか経っていないぞ!?」

「この僕が、わざわざタイムリミットを馬鹿正直に貴様らに教えるとでも思っていたのか!?敢えて遅めの時間を言って貴様らを油断させたのさ!」


 不意を突かれたギルバートから抜け出すのはいともたやすかった。


「ま、待て~!」


 エックスボックスは煙幕の奥底に隠れてしまった。真っ白でアン達には何も見えなかった。


「この煙幕は魔法の煙幕だ。ただの煙幕じゃない。味方にだけははっきり見えるマジックミストさ!」


 エックボックスはそう宣言すると、ダイアナの悲鳴が聞こえた。


「きゃああああ!!!」

「この女はいただいていく!」


 さらにギルバートの悲鳴も聞こえた。


「ぎゃああああ!!!!」

「ダイアナ!ギルバート!大丈夫なの?!」


 アンはパニックになっていた。しばらく、すると煙幕は消えた。

そこにはギルバートが倒れているだけでダイアナの姿もエックスボックスの姿もなく他に誰もいなかった。


「無事だったのね!?」

「ああ。なんとか。ダイアナは?」

「それがギルバートと私以外誰もいなくなってしまったのよ。」

「くそ!きっとエックスボックスと援軍の仲間たちがさらっていったんだ!」

「そんな!」


 アンはショックでよろけた。


「大丈夫かハバネロ?!」

「え、ええ…大丈夫よ…。ちょっと気が動転しただけ…。」

「ん!?ポケットにこんな紙が!」


 それは置き手紙だった。


ダイアナは頂いた。

返してほしければ当国まで来て取り戻しに来い。上司には連絡するな。


 そう書かれていた。


「大変だ!助けに行こう!」

「ええ!もちろんよ!」


 アン達はプー・キンペー国家主席が支配する某国へ旅立つ決心をした。


「で?どうやって某国へ行くの?」

「上司でなければ連絡していいんだろう?」

「そうとも読み取れるわね。」

「俺には秘密のコネクトがある。日本の総理大臣・異芝加(いしばか)首相と連絡をとる事ができるんだ。」

「そーなの!?」

「異芝加首相に頼んで貨物と一緒に闇ルートで某国に侵入しよう。」


 こうして、アン達は異芝加首相の計らいで某国に密入国に成功した。

 1日後。某国、某所。


「少し肌寒いな。この国も日本と同じく晩秋の気候だからな。」

「それで、どうやってダイアナを助け出すの。」

「ジャーン!」

「魔法のポケベルじゃない!どうしたのそれ!?」

「エックボックスからこっそりくすねておいたのさ。」

「いつの間に!?」

「ハバネロ。お前の分もあるぞ。」


 アンはギルバートから魔法のポケベルを受け取った。


「この黒い球のストラップは何?」


 受け取ったポケベルには謎のストラップが付いていた。


「さぁな。最初からついていた。」

「邪魔だから外そうかしら。」

「それはやめた方が良い!ほらなんか大事なパーツだったら大変だし……。」

「それもそうね。」

「早速、このポケベルを使おう。」


 ギルバートはポケベルでエックスボックスの部下のピグレットを呼び出した。

 ピグレットは子豚の着ぐるみを着た人物だった。


「エックスボックス閣下。お待ちしておりました。って誰だお前達!」

「私達?私達は日本の光バイトよ!」


 そういうとアンは子豚の着ぐるみを一瞬で消し炭にしてしまった。

 中から出てきたのはちんちくりんのおじさんだった。


「ひいいいい!!!」

「俺達をアジトまで案内しろ。悪いようにはしない。」

「は、はい!」


 ギルバートとアンは某国の基地に到着した。


「着いたぞ。」


 ギルバートがアンにそう言うと、アンはストラップを弄っていた。


「おい!!!触らない方が良いって!」

「ええ。そうね。」

 

 ギルバートはピグレットを縛り上げて拘束し、アンと一緒にアジトに潜入した。

 2人は物陰に身を潜めていた。


「隠れているのは分かっているぞ。すぐに出てこい!」


 そう怒鳴ったのは基地の司令官のティガーだった。

 ティガーは虎の着ぐるみをきた人物だ。


「バレてしまってはしようがないわね!正々堂々相手をしてあげるわ!」

「お前の相手をするのは俺じゃない!こいつだ!」


 ティガーがそういうと人が天井から飛び降りてきて見事に着地した。


「あ!あなたは…!」


 そこにいたのはダイアナだった。アンは安堵する。


「無事だったのね!」

「ああ、体は無事さ。」


 ティガーはニヤリとしながらそう言った。


「どういう意味?」

「こいつの脳には魔法のチップが埋め込まれている!つまり洗脳状態にあるという訳だ!いけ!ダイアナ!!!」

「イエッサー!閣下!!!」


 ダイアナはそう言うと水のドリルをアンに向けて発射した。アンは炎の壁で水のドリルを蒸発させた。


「100℃しか耐えられない水と1000℃以上を出せる炎では勝負が見えてるわ!」

「それはどうかしら?あなたにこのダイアナの体は攻撃できるの?」

「な!?」

「防御はできてもあなたは私に攻撃できないんじゃなくて?」

「そ、それは。」

「こちらは何の躊躇なくあなたを攻撃できるわ!あなたの魔力が尽きるまで攻撃し続けてあげるわ!」

「そっちがその気なら、私にも考えがあるわ!」


 アンは炎のドリルをダイアナに発射した。


「ひゃあ!!」


 ダイアナは波に乗り、ギリギリかわした。ティガーは仰天した。


「親友の体を焼き払う気かよ!!」

「大丈夫よ!こっちには回復魔法の名手がいるもの!たとえ体を大火傷にしても、治療魔法で元に戻せるから、気にする必要はないわ!」


 そう言うとアンは竜の形をした炎を繰り出した。


「そこまでだ!」




 そう声を上げたのはギルバートだった。


「お前の持っている魔法のポケベルに付いているストラップは、魔法のストラップで魔力を吸収し爆発する爆弾になっているのさ!これでお前の魔法攻撃は無力化されたも同然だ!!」


 突然のギルバートのカミングアウトに、アンは動じなかった。


「やっぱりね。おかしいと思ってたのよ。このストラップ。悪いけど、爆弾は解除させてもらったわ!」

「なんだと!?」


 炎のドラゴンはギルバートに襲い掛かった。

 ギルバートはすれすれでかわした。


「仲間に裏切られたのに、なぜそう平然としていられるんだ!!」


 ギルバートはアンを問いただした。


「だって、あなたは、偽者のギルバートだもの。最初から敵だから裏切るも何もないわ!」

「偽物ぉ?誰それぇ?俺ギルバート!鈍いな!俺が本物のギルバートだよ!」

「くどいわね!あんたが偽物な事はもうわかってるのよ!」

「うるさーい!俺はギルバートなんだ!誰が何と言おうとギルバートなんだ!!!俺はギルバートだと言っているのにぃ~~!なぜ信じない!」

「悪いわね。あんたが煙幕のどさくさで入れ替わった偽物なのは最初から気が付いてたのよ。ギルバートは私と二人っきりの時は私の事を『アン』と呼ぶのよ!」

「お前らそういう仲だったのかよ~!!!」

「そうよ!見た目だけ変装して誤魔化そうなんて無理があるのよ!」

「くそー!もう猿芝居ごっこはここまでだ!」


 ギルバートの特殊メイクをはがすと出てきたのは、なんとエックスボックスだった。


「まさか正体がエックスボックスその人だったなんてね。これはちょっと予想外だわ。」

「ふぅん。偽物である事は見抜けても、その正体までは見抜けなかったようだな!僕はもうエックスボックスじゃない!ネオ・エックスボックスだ!」

「ネオエックスボックス?何それぇ?」

「スーパーベジ〇タみたいなもんだよ!」


 ネオ・エックスボックスは洗脳状態の本物のギルバートを召喚した。


「やっぱり本物のギルバートもここに居たのね!思った通りだわ。」

「いくらお前でも3人がかりでは勝てまーい!!」


 ダイアナとギルバートとネオ・エックスボックスの3人でアンに襲い掛かった。

 アンは炎の鞭でダイアナとギルバートを遠くまで弾き飛ばした。


「相変わらず仲間にも容赦ねぇな。」

「いいえ。違うわ。」

「だにぃ!?」

「私が爆弾をただ解除するだけだと思ったの?」


 アンは爆弾をネオ・エックスボックスに投げつけた。


「しまっ……!」


ドカーン!!!


 ネオ・エックスボックスは大爆発に巻き込まれた。


「解除した爆弾は私が改めてセットさせてもらったわ。」


 真っ先にダイアナとギルバートを弾き飛ばしたのも爆風から守るためだったのだ。

 それを見たティガーは逃げようとした。


「待ちなさい!」


 アンはティガーの着ぐるみを焼き払った。ティガーから出てきたのは痩せこけたおじさんだった。


「ひいいい!!!」

「ダイアナとギルバートの洗脳状態を解除しなさい!」

「はいよ!わかりやした!」


 ティガーは魔法のチップを2人の脳から取り出した。2人は目を覚ました。


「よくも俺達を洗脳してくれたな!」

「ひぃいい!お許しを…!」

「お前達の目的は何なんだ?」


 ギルバートはティガーの胸倉を持ち上げ問い詰めた。


「アメリカのドナルド・カルタ大統領と弊国のプー・キンペー国家主席が険悪なのはご存じだろう?カルタ大統領が課した相互関税で弊国の経済はガタガタになった。その状況を打破するために、アメリカの不沈空母である日本を乗っ取ろうという事になったのだ。それが我々が日本にスパイを送り込んでいる理由だ。」

「どうして、ギルバートとダイアナだけさらって私はさらわなかったの?」


 アンが疑問を呈した。


「簡単な話さ。洗脳チップはまだ開発されたばかりで、この世に2つしか存在しなかったからさ。」


 ギルバートはティガーをさらに問い詰めた。


「プー・キンペーの居場所はどこだ?」

「そ、それだけは言えない…。」


 ギルバートは拳を上げ、ティガーを殴ろうとした。


「殴られても言えない!忠誠心がある!!!これだけは絶対に言わない。」


 ギルバートは諦めてティガーを離した。


「ピグレット!今だやれー!!!」


 ティガーがそう叫んだ。ピグレットはすぐ抜け出せられるようにエックスボックスが緩く縛っていたのだった。こっそりアンの後を付けて、身を潜めていたピグレットはレーザーのガトリング銃を連射した。

 ギルバートはアンとダイアナを担ぎ颯爽とレーザーをかわした。


「なにぃ!?レーザーより早いだとぉ!?」

「ハバネロ!ダイアナ!今だ!!」


 アンの炎のドリルとダイアナの水のドリルでピグレットを挟み撃ちにした。


「ぎょえええええええ!!!」


 ピグレットは堪らず、絶命した。

 ギルバートは再びティガーの胸倉を掴んだ。


「待て!プー国家主席が要るのは100エーカーの森に隠されている秘密基地だ!」

「ほぉ~。」

「正直に答えたから、許してくれるよな?」

「…。」


 ティガーがこの後どうなったかは読者の想像に任せる。








「さて、プー・キンペーの居場所もわかったし、再び3人揃ったことだし!さっそくプー・キンペーを倒しに行くぞ!」


 3人は100エーカーの森へ向かった。場所は10㎞先という近場であった。


「プー国家主席。侵入者です。」


 そう報告したのはクリストファー・ロビンだった。プーは熊の着ぐるみの上に真っ赤な鎧を着てはちみつをかき混ぜながら寛いでいた。


「おかしいなぁ。なぜここの場所がバレたんだろう。」


 プーははちみつを混ぜるのをやめて不思議がった。


「侵入者を排除して参ります。」


 クリストファー・ロビンは、その場にいたプーの親衛隊を連れて、アン達の排除に向かった。

 その頃アン達は秘密基地を探し回っていた。


「そこまでだ!」


 クリストファー・ロビンが声を上げた。


「副国家主席のクリストファー・ロビンと」

「親衛隊・隊長のミニーと」

「親衛隊・副隊長のミッキーだ!」


 ギルバートはがぜんやる気である。


「邪魔だてする者には容赦しない!」

「そーよ!そーよ!!!」


 そう言うとダイアナは水のドリルを発射した。


「そうはいかないわ!!」


ミニーは電撃を発射した。水はたちまち電気分解されてしまった。


「私は雷属性の魔法の使い手よ!昔から水タイプは雷に弱いって決まってるのよ!」

「く!相性最悪ってわけね!」


 一方、アンも炎のドリルを放射した。


「行くわよ~!食らいなさい!」

「はん!こんなもの!」


 ミッキーは竜巻を発生させアンの炎を飲み込み炎の竜巻として取り込んでしまった。


「そんな!?」

「これでお前の炎は封じたも同然だ!」


 一方でミニーもさらに反撃を開始する。


「10万ワット!!!」


 ミッキーの炎の竜巻とミニーの電撃がダイアナとアンを襲う。


「バリア!!!」


 ギルバートは魔法の結界を貼り、ダイアナとアンを守った。


「なる程、君はサポート特化か。だが魔力は著しく低い。オーラで分かる。」


 クリストファー・ロビンは感心した様子だった。


「しかし、薄っぺらいバリアだ。次の攻撃でそんなの簡単に突破してやるぞ。」

「くっ!」


ギルバートは動揺した。


(図星だ。単純な魔力は最底辺クラスだ。俺には力がない…。力ではない強さが必要だ…。何か手はないか…。考えろ。考えるんだ…。何かあるはずだ…。)


「そうだ!!!」


 悩んだ末にギルバートは閃いた。


「ダイアナ!ミニーに放水攻撃をするんだ!ドリルではなくミニーを覆うような放水を!」

「え、そんなことしたところで…。」

「俺を信じろ!」

「分かったわ!」


 ダイアナはミニーを囲むように水を噴射した。


「甘いわね!10万アンペア!!!」


 ミニーは再び、電撃を放った。

 ダイアナの水はたちまち電気分解されてしまった。


「今だ!ハバネロ!お前の炎をぶちかましてやれ!」

「え!?ええ!!!」


 アンは戸惑いながらも、すかさず火炎放射をお見舞いした。

 

ドカーン!!!


 ミニーは大爆発に巻き込まれ爆殺されてしまった。


「水が電気分解されると酸素と水素になる。それに炎を近づけると水素爆発を起こすという寸法さ!!」

「やったわ!!!」


 アンとダイアナは歓喜の声を上げた。


「汚いぞ!炎使いの女の相手はこの僕だったはずだぞ!」

「知らねぇよ。俺達は別に聖人君子な訳じゃないんだぜ!俺はトイレ行っても手も洗わないしな!」

「別の意味でも汚い奴だな!まぁいい。僕1人でお前達を倒してやる!」


 ミッキーは再び風を操り竜巻を発生させた。


「今だ!」


 ギルバートは埃を巻き上げた。


「お前の様に風を操る事はできないが、ただ埃を巻き上げるだけなら俺でもできるぜ!」


 ギルバートが巻き上げた粉埃は竜巻に吸い込まれていった。


「だからどうした!?埃で竜巻が止められるか!」

「今だ!ハバネロ!!炎を解き放て!」

「ええ!!」


 アンはギルバートを信頼し、躊躇なく竜巻に向けて炎を発射した。


ドッッカーーン!!!1


 炎が竜巻に飲み込まれると竜巻はたちまち大爆発を起こした。

 ミッキーは爆発に巻き込まれ爆死してしまった。


「粉塵爆発ってやつさ。乾燥している季節で助かったぜ。」

「さあ。残りはあなたの番ね。クリストファー・ロビン。」


 アンがクリストファー・ロビンにつめ寄った。


「待て!僕は指揮官であって戦闘員じゃないんだ!降伏する!」

「俺達は聖人君子じゃないと言ったよな?お前を許すと思うか?」

「待て!僕なんて殺す価値もないぞ!僕なんかの為に君達が手を汚すことはない!」

「生かす価値もあるまい。それに俺達の手はすでに血みどろだ。」

「待て!僕は命令されただけだ!全てプー国家主席の命令に従っていただけだ!」

「命令されたらなんでも従うのか?だったら死ね。」

「そんな屁理屈!真の敵はプー国家主席だ!一番憎いのは誰だ!一番許せないのはプー国家主席だ!」


 アンは首を縦に振った。


「そうね。秘密基地まで案内してくれたら見逃してあげるわ。」

「お安い御用で!」


 クリストファー・ロビンは秘密基地までアン達を案内した。


「これで僕は解放で?」

「ええ。いいわ。どこへでも逃げなさい。」


 クリストファー・ロビンの逃げてゆく背中を見送ると、アン達は早速秘密基地に侵入した。

 現れたのは守衛のアンドロイドだった。

 アン達は守衛のアンドロイドを千切っては投げ、千切っては投げを繰り返し、躍進しいった。


「こうなったら僕の出番だね。」


 ついにプーが直々に出陣するのであった。

 一方ギルバートは、必死にプーを探している。


「プー・キンペー!どこだ~!でてこーい!」


 アンも後に続く。


「おとなしく出てきなさーい!」

「ぐふふふふふ。僕は逃げも隠れもしないよ。」


 そこに現れたのは熊の着ぐるみのプー・キンペーその人である。


「君達は親衛隊や四天王たちよりはるかに有能だ。組織から寝返って僕の下で働かないか?」

「そんなのこっちから願い下げよ!」


 アンは即答した。


「そうか。いい話だと思うが?そもそも君達の国の異芝加首相も我が国に寝返っているぞ。」

「な、なんですって~~~!?」

「異芝加首相は『魔人プー』のコードネームを持つ我が国の内通者だ。」

「そうだったのね!だから、ギルバートに変装したエックスボックスが異芝加首相とコンタクトをとれたのね!」

「分かっただろう?君達の国はもうとっくに終わっているんだよ。」

「それでも私達は日本市民の為に戦うわ!」

「それじゃあしょうがないな。」


 プーとアン達の最終決戦の火ぶたが落とされた。

 アンはさっそく炎の竜で攻撃した。


「馬鹿め!その程度の魔法じゃこの幻の鎧には効かないぞ!」


 プーは対魔法反射メッキがコーティングされている鎧を着ていたのである。


「幻の鎧ですって!?」

「そうだ!神に選ばれたものだけが手に入れられるという鎧を僕がどこの馬の骨ともわからないような仙人から奪い取ったのさ。」


 ダイアナも水の竜を作り出し襲い掛かった。


「駄目駄目!幻の鎧の前では龍など屁の河童!」

「くっ!どうすればいいの!?」

「さらなる絶望をお前達に与える。僕はまだ全力を出していない。」

「なんですって!?」

「これが僕の本気だ!」


 なんと、プーと鎧は巨大化したのである!


「これで僕の勝利は完璧にゆるぎないものとなった。」

「くっそ、力には頭脳だ!!」


 ギルバートはまた何か閃いた。


「炎の竜と水の竜で同時に彼を攻撃するんだ!!!」

「ええ!」

「わかったわ!」


 ダイアナもアンもギルバートの企みは分からない。しかし、ギルバートを信じて疑わなかった。


「駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ェーーーッ!何をやったって駄目さ!」

「それはどうかな!」


 ギルバートは球形のバリアでプーと2体の竜を覆った。


「未だ2人とも!二匹の竜を融合させろ!!!」


 アンとダイアナは声を合わせた。


「フュージョン!はっ!!」


ドカーン!!!!!


 竜が融合した瞬間にバリアが粉々に割れるほどの大爆発を起こしたのだ。


「水蒸気爆発ってやつさ!!!」

「ばんざーい!ばんざーい!ついにラスボスを倒したわ~~!!」


 と、喜んだのもつかの間。


「なかなか痒い攻撃だったぜ。」

「そ、そんな!」


 なんとプーも鎧も無傷だったのである。


「今度はこっちから行くぜ!!!」


 プーはエネルギーの塊を放った。


「きゃああああ!!!」

「あああああああん!!」


 アンとダイアナは前後真っ二つになった。


「ハバネロ!!ダイアナ!!!」


 ギルバートはすかさず真っ二つになった2人の身体を再生させた。


「魔力は弱いがなかなかの厄介者だな。まずはお前から消してやろう。」


 プーがそう言うと、黒い靄がギルバートの身体を覆った。ギルバートは溶けてしまった。


「ギルバート!!」


 ダイアナが叫んだ!同時にアンも叫んだ!!!


「ギルバートオオオオオオオオオオオ!!!!!」

「心配するな。お前達もすぐ天国に送ってやる。」


 アンは激しく動揺した。


「そ、そんなぁ!噓でしょ?!」

「ところがどっこい!嘘ではない!これが絶望だ!」

「いやあああああああああああああああああああああ!!!」


 アンの身体が真っ赤に光った。


「なにぃ!?」


 そして、アンの手元に光が収束し、そこから剣が現れた。


「ば!馬鹿な!あれは魔力を高められるという幻の魔剣!まさか!この者も神に選ばれたというのか!!」

「あなたはもう謝っても許さない!」

「謝るのはそっちの方だぁ!!!!」


 プーは黒い靄を放った。しかし、紅蓮に光る幻の魔剣が靄を吸収してしまった。


「そんなアホな!」

「覚悟しなさい!!!」

「この赤髪ィイイイ!!!!」

「はあああああああああああああああああああ!!!」

「ヒョエエエエエエエエエエエ!!!」


 アンはプーの鎧をばらばらに切り裂いた。


「くそおおおおおおおおおおおおお!!!!!!くそおおおおおおおおおおお!!!」


 プーの鎧は剥がれプーは元の大きさに戻り地面に激しく叩きつけられた。


「魔力高められる魔剣…!これさえあれば!!!」


 アンは真っ黒い液体と化したギルバートの元に駆け寄った。


「あなたの魔力を高めるからあなたの再生能力も増幅させて!!!」


 紅蓮の光が黒い液体を包み込んだ。すると見る見るうちに液体は人型になっていき、ついにはギルバートの身体を再生してしまった。


「ギルバート!!!」

「ありがてぇ!おかげで超再生能力が覚醒したよ!俺は不死身だああああ!!!!」

「お礼を言うのは私の方よ。あなたのおかげで勝てたわ。」

「それは違うぜ。皆のおかげでつかみ取った勝利だ。」

「そうね。」

「こうはしていられない!プーはどうなった?」


 プーは倒れて動かなかった。もはや戦闘不能である。


「正体を見せてもらうわよ!」


 アンはプーの着ぐるみをはいだ。


「何これぇ!?」


 なんとプーの着ぐるみの中身はアンドロイドだったのである。ギルバートも魂消る。


「どういうことだ!?」

「このロボットを操ってる別の誰かがいたってこと!?」


 アンドロイドは断末魔の様に叫んだ。


「ぐふふふふ!!!今更気が付いても手遅れだ!!!僕は、僕の正体を唯一知っている真の黒幕を逃がすための目くらましにすぎなかったのだ!!もう真の黒幕は逃げて仰せてしまっているさ!!!」


 そう言うと笑顔のままアンドロイドの機能は停止した。


「くそ!いったい誰が黒幕なんだ!」


 ギルバートが悔しがった。


「このアンドロイドを調べてみましょう。」


 3人はアンドロイドを分解して魔法で解析した。


「どうも電磁波を受信するような機能はないようだな。」

「完全に独立した自律式ロボットって事ね。」

「遠隔操作機能がないこのロボに命令を出す為には直接入力するしかない。」

「って事は、裏で糸を引くにはこのロボの近くにいる必要があるわね。」

「それに、プーは自分が真の黒幕を逃がすための目くらましだと口を滑らせていた。この基地にいた人物が黒幕なのは間違いがない。」

「そうよね。」

「ロボットのプーを他の誰にも疑われることなく近くから操作できる人物…。」

「そんなの1人しか居ないわ!」

「ああ。」


 そうその人物は…。


「クリストファー・ロビン!彼しかいない!彼こそが真の黒幕だ!」


 そう。クリストファー・ロビンが某国を支配する影の独裁者だったのである。


「なんてこと!あの時見逃さなければよかったわ!」

「心配するな。俺に考えがある。」


 ギルバートの考えとは…。









「#△!□§〇¶×ЁЗз?жЖ⁉×□♪▽!!?」

「よかった。まだ息はあるな。」


 ギルバートは棺を掘り起こしていた。


「ヘルプミー!ヘルプミー!!」


 口枷を咥えさせられながらも必死に叫ぶ声が聞こえてきた。口枷と目隠しをされ全身縛り上げられた状態で棺桶に詰められて生き埋めにされていたのである。


「助けてやってもいいぞティガー」


 そう。生き埋めにされていたのはティガーだったのである。


「まだ酸欠で窒息していないようでよかったぞ。」

「助けてくれるのか?」

「お前さんの働き次第だ。クリストファー・ロビンの居場所を知りたい。彼が逃げるとすればどこだ?」

「クリストファー・ロビンが逃げただと!?潰したのか100エーカーの森の秘密基地を!」

「質問しているのはこっちだ。彼の逃げ場に心当たりはあるのか?ないのか?」

「あるあるアルよ!」

「どこだ!?」

「この国の首都にある国際空港の日本便。その中の貨物の中に隠れているはず。魔人プーが匿ってくれる手はずになっている。」

「有益な情報ご苦労。お前の身柄の安全は保障してやる。」


 アン達は首都の国際空港に向かった。そして、無事国際空港に到着した。


「どうやってクリストファー・ロビンを探しだすの?」

「ハバネロ!火を放て!ボヤ程度のな。」

「分かったわ!」


 ジリリジリリジリリ!!!


 火災報知機が鳴った。


「火事だ~~!火事だ~~~!!!」

「皆さん落ち着いて避難して下さい!」


 空港は一時騒然となった。


「火事だと!?いったん抜け出さなくては!」


 クリストファー・ロビンは隠れていた荷物から飛び出して、貨物保安所から抜け出した。

 だが、アン達は貨物保安所の出口で待ち伏せしていたのである。


「見つけたわよクリストファー・ロビン!」

「ばかな!お前達!あのプー・キンペーロボを倒したというのか!」

「そうよ!この幻の魔剣でね!」


 そう言うとアンは鞘に納まった魔剣を見せつけた。クリストファー・ロビンは考え込んだ。


「作戦ターイム!」

「3分間待ってやる。」


 ギルバートはクリストファー・ロビンの作戦タイムを認めた。クリストファー・ロビンは作戦を練り始めた。

 タイムリミットが近づくと、クリストファー・ロビンはそっと窓を開けた。


「そよ風が気持ち良いねえ。」

「後、30秒よ!」


 アンにそう言われるが、クリストファー・ロビンは動じない。


「君が持っているのはプー・キンペーを倒した幻の魔剣なんだろう?ねぇ?見せてくれない、その魔剣を。」

「バレてるなら隠す必要ないわね。参ったわね、こっちの手の内を読まれてちゃぁ~。」


 アンは魔剣をクリストファー・ロビンに投げ渡した。


「へぇこれが幻の魔剣かぁ。」


 クリストファー・ロビンは魔剣を鞘から抜きその刃を観察した。


「僕はね。さっきからずっとこの魔剣を倒す方法を考えていたんだ。でもなかなか見つからなくて。でもようやく見つけたよ。こうすればよかったんだ!」


ブンッ!


 クリストファー・ロビンは魔剣をアンに向かって振り下ろした。


ガシ!


 アンは魔剣を真剣白刃取りした。


「ば、馬鹿な!この魔剣さえあれば僕でもこの連中に勝てるはず!!」

「剣だけでは私との実力差は埋まらなかったようね。」


 アンはクリストファー・ロビンにトドメを刺そうとする。


「あ、あなたが神か?」


 クリストファー・ロビンはおだてる作戦に出たがアンには通じなかった。アンは一瞬でクリストファー・ロビンを消し炭にしてしまった。クリストファー・ロビンは悲鳴を上げる間もなく焼死してしまった。


「終わったわね。」

「うん。終わったな。」


 3人は日本に帰国後、プー・キンペーのアンドロイドを分解して解析したデータを提出し、異芝加首相のスパイ行為の証拠として突き付けた。それを受け、異芝加首相は外患誘致罪で緊急逮捕された。


「今日も日本は平和だなぁ~。」

「私達3人のおかげで平和な日本を取戻せたものね。」

「誰か一人でも欠けてたら今の日本はなかったわ。」


 アン・ギルバート・ダイアナの3人は暢気に話している。


「アン!お前が今回のMVPだ!」

「え?今私の事アンって呼んだ?」

「もう照れ隠しするような仲じゃないだろ。あれだけの死線をともに乗り越えた仲なんだからな。」

「人前で私をアンって呼ぶなんて、あなた、また偽者なんじゃないかしら?」

「いやややややや、俺は本物だよ!」

「ふふふ。冗談よ冗談!」

「もうええわ!」


 お後が宜しいようで。

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