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幼女吸血鬼と取り戻せない程の恋をした  作者: 菜乃音
第一章 幼女吸血鬼の紳士として

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52 事前連絡と書いて事後報告と読む、お泊り会の始まり

「……それは?」

「えへへ、陽、遊びに来たよ!」

「よっ、陽! 待ちに待った春休みだな!」


 春休みに入った日、昼前から家にやってきたホモと恋羽に、陽は呆れた眼差しを向けていた。


 ドアを半開きにしつつ、二人を入れさせない姿勢を見せているのだが、じりじりとホモは笑顔で距離を詰めてきている。


 遊ぶのは別にいいとしても、ホモと恋羽の持ってきたもの……大きな鞄が気がかりで、家に入れさせる気にならないのだ。


 二人からは遊ぶ事前連絡を受けていないので、余計に謎である。


「それはって言われても、今日からお泊りに来たんだよ?」

「なんでさも当然のように、準備は万端、って雰囲気を出してるんだよ……」


 笑顔を絶やさないホモと恋羽に、陽は息を吐くしかなかった。

 持ってきた荷物がお泊りセットなのは理解できたとしても、恋羽の服装には困惑だ。


 三月で温かくなってきたとはいえ、恋羽はクリーム色の半袖シャツの上から、水色のパーカーを羽織るスタイリッシュな格好をしている。


 ピンクの瞳と髪を持つ恋羽に似合っている色合いと、言動や体型からの明るい雰囲気に合っている服装だろう。しかし、恋羽は女の子だから体調に気をつけてほしい、と思っている陽からすれば曖昧な気持ちが湧き出ている。


 ポニーテールを揺らして、今にでも入りたい、と訴えかけてくる恋羽に、陽は頭を悩ませた。


「一応聞いとくけど、事前連絡は?」

「それは今伝えたから問題ないな! それじゃあ、お邪魔――」


 横を通ろうとしたホモを抑えるように、陽は腕を横に出した。

 その隙をついて通ろうとした恋羽の行動を逃すはずもなく、もう片方の手も出しておく。


 力強い筋肉でホモは腕を押し、恋羽は変態を見るような目で見てきて精神的動揺を誘っているようだ。


「いやいや、事前連絡しろよ!」

「陽、堅苦しい紳士は辛いぞ? だから下の方も――」

「固くないからな? ホモは家の外で虫と一緒に寝るか?」

「はるぅ……天丼ネタは飽きられるよ?」

「お前は誰に言ってるんだ?」


 空を見ながら言う恋羽に、陽はため息をこぼすしかなかった。

 万が一にも備えて連絡を徹底してほしいのだが、この二人には言っても無駄だろう。


 鞄を見せて、急なお願いを許してほしいと乞うてくるホモと恋羽に、陽は笑みを宿し、二人を家に通すことにした。


 もしもの事もあろうかと、二人を泊めても問題ないように布団とかは用意してあるので、陽的には問題ないのだ。


 ただ、アリアがどう思うかが問題だろう。

 今ではキッチンに立つ神様はアリアである。彼女の負荷を考えても、料理を四人分作らせるのは酷だろう。

 アリアが無理と言えば、外食を検討するしかない。


 陽の不安をよそに、楽しそうに話をしてついてくる二人は、相変わらずホモと恋羽らしさが全開である。


「……ホモ、どのくらい泊まる予定なんだ?」

「うーん……数日くらいだな!」

「了解。気分次第、と」

「こまめだねー」

「お前らが猪突猛進で雑過ぎるだけだ」


 戦略としての猪突猛進ならありだが、身内内では避けていただきたいものだろう。

 アリアの確認を取るためにも、陽は先導しつつ、彼女が待っているリビングのドアを開けた。


 ドアを開ければ、香しき優しい匂いと共に、黒いエプロンをつけたアリアがキッチンに立っていた。

 アリアはこちらに気づいてか、てくてくと近寄ってきた。


 アリアの凛とした立ち振る舞いは、この二人に見習ってほしいところばかりだ。


「アリアさん、急な来客なんだけど……大丈夫?」

「恋羽さん、ホモさん、いらっしゃい。白井さん、心配しなくても大丈夫よ。買い出しは必要になるでしょうけど、人数が増えるくらいなら問題ないわ」

「恩に着るよ」

「いやー、二人の愛の巣にしつ――」


 ホモが何かを言おうとした瞬間、恋羽の持っていた鞄が宙を舞ってホモの横腹を殴り、ピンクの風が横を颯爽と駆け抜けた。


 うなだれているホモを横に、恋羽はアリアを見つけるなり抱きしめている。

 くすぐったそうにしているアリアに、羨ましいでしょうといった視線で見てくる恋羽、情報量は絶えず健在のようだ。


「アリアたん、数日間よろしくね!」

「ふふ、ご飯の準備をしてますから、椅子に腰でも掛けて待っていてくださいね」

「やった! アリアたんのご飯楽しみ!」


 エプロンについた香りを吸っているのか、それともアリアの香りを吸っているのか、抱きしめて鼻を鳴らしている恋羽には呆れたものだ。


 恋羽の様子を見つつ、陽はアリアに軽く頭を下げた。


「アリアさん、恋羽とホモに不備があったら自分に伝えてくれ」

「……気遣いが上手いわね。大丈夫よ。二人が来ると思って、準備をしておいたもの」

「流石アリアたん!」

「ホモと恋羽は、連絡をしっかりと入れて、アリアさんの振る舞いを見習ってくれよ」

「いやー、陽はそもそもアリアさんに骨抜き――」

「ホモだけ外で寝泊まりするか?」


 慈悲を乞うように拝むホモは、流石に冗談でも言いすぎだと理解したのだろう。


(……ほんとうに、騒がしくも、頼もしい奴らだ)


 本来であればアリアとのこの空間も、ホモと恋羽が混ざる事で、これ程までに騒がしくなるものだろうか。

 陽はアリアの準備を手伝いつつも、二人に荷物の置き場所を伝え、アリアと二人が寝る場所の話をするのだった。

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