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幼女吸血鬼と取り戻せない程の恋をした  作者: 菜乃音
第三章の一 近づくは幼女吸血鬼と紳士として

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110/214

110 媚薬を口にしてしまった幼女吸血鬼に初めてのキスを

「アリアさん、手伝わせてしまってすまない」

「ふふ、陽くんだけの仕事じゃないのだから、気にしなくていいのよ」


 これでも主なのよ、と言い加えるアリアは、微笑ましい笑みを浮かべていた。


 決まった案件の本文を学校に提出する前に、陽はアリアと一緒に裏生徒会の教室に来ていた。


 保留にしていたポイント制度の改善案……ホモへの抑制だけで抑えていたところを、穴が無いかの確認をしつつ、全体にも適用できる案まで上り詰めたのだ。


 陽自身、財閥関係者やネノプロジェクトの社員を相手にしているのもあり、ビジネスに関しては学校の中だとずば抜けて高い方だろう。

 だからこそ、今を見ているだけじゃなく、この案にすることによる効果……そして未来にどう繋がっていくのか、見込める利益等を考え、文字としてまとめにかかるのだ。


 無論、教員の方々には陽がプレゼンをするので、まとめるのはあくまで企画を通すため、という意味合いが大きい。


「あら? これは?」

「恋羽のやつ、粋な計らいを……アリアさん、丁度いいし、お茶でも嗜みながら確認を進めようか」


 教室に入った時、恋羽から差し入れとしてクッキーがテーブルに置かれていたのだ。

 クッキーはアリアが紅茶と同じく好きなものなので、恋羽のご厚意には感謝しかない。


 陽は持ってきた資料をテーブルに置き、アリアの為に紅茶を入れるのだった。


 紅茶を入れて持っていけば、アリアは待ってくれていたようで、テーブルを綺麗にし、椅子にちょこんと座って待っている。

 ちゃっかりと資料を確認している辺り、微塵の隙も無い。


「アリアさん、イングリッシュブレックファストでよかったかな?」

「まろやかな味わいのある紅茶、庭の花を見て、嗜みながらクッキーを食べたいものね」


 願望を要求してくるアリアに、陽は微笑みながらもティーカップを置いた。

 アリアの隣に腰をかければ、アリアは嬉しそうに笑みを浮かべるので、陽は変に揺れた鼓動にくすぐったさを覚えた。


 放課後で時間があるとはいえ、教員の方々を待たせるのは申し訳ないので、陽は巻きつつ資料を確認していく。


 静寂の中を、ティーカップは音を立て、資料の紙束はめくれる音を立てていく。


 その時、アリアが恋羽のお茶菓子に手を伸ばしているのが見えたので、陽はさり気なくアリアの方に寄せる。

 アリアが嬉しそうにするものだから、紳士としてはこの上ない幸せだろう。


 アリアが手を付けたのを機に、陽もゆっくりと手を伸ばし、様々な形を模したクッキーを一つ手に取った。

 クッキーを口に入れようとした瞬間、確かにクッキーから香った微かな匂いに、陽は表情をこわばらせる。


(……この匂い……媚薬? いや、恋羽特有の香りづけ、媚薬でしかない!?)


 クッキーを口にする前に気づけたのは、不幸中の幸いだろう。

 陽はすかさずアリアに謝りを入れてから、お皿にあるクッキーの匂いを確認した。


 クッキーは陽が取ったやつから匂いはしたものの、お皿に盛られているクッキーは正真正銘、媚薬が盛られていないようだ。


 陽は一瞬安堵したが、瞬時に一つの過ちに気が付いた。


「……自分が取ったのは一つだけど、アリアさんの! アリアさん、そのクッキーはまだ食べちゃ――」


 アリアの方を見た時、既に手遅れだったと、陽は確信した。

 アリアは上品に片手を小皿にして、欠片がこぼれないようにしてすでに半分かじっていたのだから。


 アリアが媚薬入りのクッキーを食べた可能性……それは、バレンタインに恋羽からチョコを貰った出来事を思い返させてくるようだ。


「あ、アリアさん……大丈夫?」

「はる、くん……」


 まるで火照ったような瞳で見てくるアリアに、陽は確信した。彼女は確実に、数あるうちの中から、媚薬入りのクッキーを口にしてしまったのだと。


 とろけるような口に、にやりとした笑みを浮かべるアリアは、媚薬の影響で酔っているのだろうか。

 アリアがこちらに手を伸ばそうとしてきたので、陽は問答無用……と言うよりも、アリアを止めるために、付けていた腕時計を露わにした。


「アリアさん、許し……」

「はるくん、駄目よ。悪い子ね」

「落ちついて聞いてほしいんだ。君がさっき食べたのは、恋羽特有の媚薬が入っ――」


 アリアを止めるためとはいえ、立ち上がったのは間違いだったのだろう。

 アリアが倒れ込むように近づいてきたのもあり、テーブルに置いていた資料は風圧で浮かび上がっていた。


(つ、強い!)


 アリアは歯止めが効いていないのか、押してくる腕は強く、陽はなすすべなく後ろへと後退してしまう。

 あろうことか、辿り着く先が運よく設置したてのソファなのは、ある意味不味いのではないだろうか。


 陽は以前、アリアが媚薬を口にしてしまった際、早急に眠らせるほど、アリアは媚薬に耐性が無いと理解している。

 媚薬に耐性が無いと言うよりも、恐らく恋羽の媚薬に、が正しいだろう。


 体に優しい毒もあると言うが、恋羽の媚薬は明らかにアリアに対しては毒である。


 ソファに押し倒された陽は、上からとろけた瞳で見てくるアリアを見て、静かに息を呑んだ。


「……はるくん、体が熱いわ。……脱いじゃおうかしら……?」

「アリアさん、それだけは――!?」

「今日はわがままね」


 唇が当たってしまうのではないか、と思う程に顔の距離を縮めてきたアリアに、陽は驚きのあまり言葉が出なかった。


 うるりとした深紅の瞳に映る姿から、自分は焦っているのだと、陽は重々理解している。だからこそ、アリアを止める考えを模索してしまう。


 アリアに不本意なことをさせたくない、と言うのは明らかにエゴであるのは自覚している。

 だとしても、アリアの威厳や気持ちを考えても、服を脱がれるような真似だけは避けたいのだ。


 そんな避けたいと思っていたのも束の間、アリアは陽の上に被さるように乗ったまま、既にブレザーを脱ぎ、ワイシャツに手をかけていた。


「アリアさん、本当に駄目だよ……」

「おじおじしている陽くん……かわいい……好き……」


 よしよしと頭を撫でてくるアリアに、理性が残っている可能性を求めるのは不可能だろう。


 酔っているアリア……ましてや理性があいまいなアリアを止めるのは不可能だと、陽が一番理解している。

 瞬く間もなく、アリアのワイシャツのボタンは一つずつ外されていき、胸元が静かに開いていた。


(おとなっぽい……じゃなかった!)


 ワイシャツを脱がれていないだけましだが、はだけたシャツの隙間から見える黒いブラは、確かなふくらみも相まって、陽の興奮を促すのには十分だった。

 腹部に目を移したとしても、程よく肉がついた引きしまった白いお腹が映ってしまい、心臓に悪い事この上ない。


 アリアに馬乗りにされているのもあり、陽は男だよな、と自分に言い聞かせたくなっている。


 完全にソファに押し倒されている状態なのと、もう片方の手がアリアの際どい所に触れそうなのが相まって、陽は考えがままならなかった。


「陽くん、触っても……いいのよ……」

「いや、アリアさん、絶対に駄目だから……自分は確かに男だけど、本心からの承諾の無い行為は、紳士として絶対に避けなきゃならないんだ」

「ご褒美にあげる、って言ったら、私の胸……触る? 男の子は、大好きなのでしょう?」


 気づけば、アリアはスカートに手をつけていた。

 瞬く間もなく、はらりとスカートを脱いだので、上品な黒いパンツが露わになってしまっている。


 虚しい気持ちはあれ、変に興奮してしまうのは、男の性と言うものだろうか。

 今のアリアは、彼シャツ姿のパジャマで現れた時よりも露出が多く、心臓の鼓動がこれでもかと速まっている。


 気になっている女の子が、今目の前で自分の上に跨ぎ、実質シャツ一枚のような格好で居るのは、異性に慣れていない陽からすれば大問題だ。


(空想状態とはいえ、アリアさんを傷つけないで、一瞬の隙を作れる、言葉は無いのか)


 無理に押しのける行為はしたくないので、考えを巡らせるしか方法は無いのだ。

 好き勝手にされる前に、アリアの隙を作れる、そんな大切な一言。


 アリアに性の知識が無いに等しいとはいえ、遺伝子という名の本能は喜ばす意味を理解している可能性もあるので、でたらめな言葉を口にするのは許されない。


 アリアの手が陽の手に触れ、自身の胸を触らせようと運ばれていく時、陽はある言葉を思いついた。いや、言葉にしようと思えたが正しいだろう。


「ねえ、アリアさん、一つだけいいかな?」

「はるくん、なにかしら」

「……一緒に歩みたい気持ちは今も燃え続けているから、自分と相対した気持ちが一緒になったとき、自分の方から触れさせてほしいんだ。紳士としてじゃなく、アリアさんを愛したい気持ちを言葉に出来るようになった後にでも」

「……いっ、しょ……陽くん、から……」


 アリアが一瞬緩んだ隙を見逃がさず、陽は腕時計の中に隠していた一粒のカプセル状の薬を手にした。


 アリアに飲ませようとしたのだが、アリアは拒むかのように口を開こうとしない。


「……アリアさん、責任はとるから……」


 最終手段ではあるが、陽は自身の口にカプセルを含んだ。


「はる……くん……!?」


 唇は触れ合った。そして陽はカプセルをアリアの口の中に移すため、舌で優しくアリアの唇を撫でていく。

 とても柔らかい感触は、陽自身、正直理性を保つだけでも精一杯である。

 何度かアリアに頬にキスをされてきたが、直接触れ合わせるとは思っても見なかったのだから。


 焼けてしまう程あつい。脳が支配されそうな柔らかさ。アリアが異性だからではない、アリアでしか味わえない、唇の熱。


 気づけば「うぅん」とアリアからはとろけるような声が漏れていた。


 アリアは酔っていたとしても理解が追い付いていないようで、目を細め、陽にゆだねているようだ。

 そんなアリアを、陽は離さないように腕を背中に回し、ぎゅっと抱き寄せる。


 アリアの口元がほどけた瞬間、陽はそのまま舌を使い、アリアの口の中に薬を移していく。


 唇が離れれば、間には銀の糸が引いていた。

 糸がプツリと切れると同時、アリアは目を閉じ、陽の方へともたれかかってきた。

 ゆっくりと支えれば、アリアは力が抜けているようで、小さく寝息を立てている。


(……紳士として……いや、エージェントとしての基礎が役に立つとは……ファーストキス……アリアさんにしちゃった)


 嫌では無いのだが、罪悪感はあるだろう。

 アリアが吸血鬼を恋愛相手に選ぼうと考えていたのであれば、その口に自身の唇を触れさせ、柔らかさを知ってしまったのだから。


 ちなみにアリアが眠った原因は、飲ませた薬に解毒作用と睡眠の効果が含まれていたからだ。


「というか、アリアさんに服を着せないといけないのか……」


 アリアは媚薬に理性を飲まれていたとはいえ、起きたら騒ぐ可能性があるので、身なりは整えなければいけないだろう。

 陽は「ごめんなさいごめんなさい」と何度か謝りを入れ、アリアの身なりを整えながら制服を着させていく。


 気になる女の子の素肌や下着を、故意的では無いにしろ見て、ましてや軽く触れると言うのはどれだけ業が深いのだろうか。


(にしても、あの好き、って意味はなんだったんだろう……)


 その後、陽は罪滅ぼしと言わんばかりに、資料の完成を一人でし、案件の提出をするのだった。

 それでも忘れられない感触は、責任を取ると言った自分への罪なのだろう。

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