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幼女吸血鬼と取り戻せない程の恋をした  作者: 菜乃音
第三章の一 近づくは幼女吸血鬼と紳士として

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103 会議は終盤、そのご褒美は誰の為に

 結果的に、ポイント制度の解決法に関しては、ポイント勝負でのポイントへ上限をつける、及びにホモのポイント使用頻度を調整することで一時的に話がついた。

 ホモには悪いが、裏生徒会の模範の犠牲となってもらうしかないのだ。無論、その分の補填は後ほどする予定ではある。


 先ほどホモと恋羽がいちゃつき始めたのもあり、かれこれ半は過ぎているので、軽く巻いた方が賢明だろう。


「それじゃあ、今回の会議の本命である――迫りつつある学校行事についてだけど」


 その時、アリアが軽く手をあげた。

 どうしたの、と聞きつつ、アリアに耳を傾ける。


「陽くん、学校行事って何かしら?」

「この学校だとね、毎年夏休み前に学内行事があるんだよ。簡単に言えば……生徒のやる気を底上げするお祭り的な?」

「それを、裏生徒会が引き受けることに?」

「そう言う事だね。本来は表の役目なんだけど……今回は裏生徒会で内容を六月の頭までに決めて、学校行事として賑やかにする、って言うのが生徒の自主性にゆだねられているんだ」


 陽は頭を悩ませつつも、資料の五十三ページを開くように促した。

 この学校では毎年度の恒例行事となっており、ポイント制度以外での活躍の場を設ける機会と思った方が早いだろう。


 他校なりに言うのなら、部外者が立ち入らない学園祭、と考えるべきだ。

 陽的に今回ばかりは教師陣にお願いしたのだが……お願い虚しく却下されたので、諦めて議題に出している。


 断りたかったのは、前回までの生徒会がやらなかったせいで、具体的な案を出せないからだ。

 アリアが知らないのも無理はないと言うよりも、恐らくホモと恋羽も知らないだろう。


 証拠に、なんだそれ、と言いたげな視線を二人から向けられているのだから。


「一応なんだけど……各クラスで出し物をさせるのは不可能だから、裏生徒会が決めた演目に従ってもらう形にはなるかな」

「陽、それって準備とかは?」

「それは学校全体で行うから、皆で出来る、がメインになる感じかな」


 ハードルが上がりに上がっている。そのため、今回の活躍次第では裏生徒会の評価も上がるだろう。

 陽が五点の議題として最初に言ったのは、裏生徒会の評価を上げる、も含まれている。


 現状、生徒会に悪い印象を持っている生徒は多くいるので、陽は頭を悩ませている。


「ねえ、陽?」

「恋羽、どうした?」

「それって、全員、でやることなのかなーって思ってね。確かに全員でやるのは愛があるし、クラスメイトとの交流を増やす機会かもしれないけど、課題に取り組みたい人もいるのかなって?」


 恋羽の意見は予想していたが、まさか恋羽から聞かれるとは思わないだろう。

 ふと思えば、恋羽の交流関係は広く浅いか深い。他者をよく見ている人の考察、と捉えるのなら無下に出来ない質問だ。


 陽自身、先ほどと打って変わって真剣な二人に、若干気後れしていた。そのため、軽く頬を叩いておく。

 口を開こうとした時、優しくもありながら確かな芯のある声がした。


「……恋羽さんの意見は確かにもっともだと思うわね」

「だよね!」

「それなら、違う観点の価値観で考えたらどうかしら?」

「違う、観点に価値観?」

「ええ。勉強ができても、どれほど優秀な学校を出たとしても、社会では関係の無い話なのよ」


 アリアがさらっと闇深い話をしそうになっているので、陽は苦笑するしかなかった。

 顔をひきつらせたとしても、アリアは話を止めようとしていないが。


 その時、おとなしく聞いていたホモが起き上がるように椅子から立ち上った。


「つまりあれか? 臨機応変の対応をしつつ、自分らしく振舞えってことか!」

「ホモ、アリアさんの話を遮るなよ」

「陽くん、別にいいのよ。ホモさん、意見を聞かせてもらえるかしら?」

「つまりは簡単、学校行事と称して体育祭を開催すれば話は早いだろ?」


 陽はハッとした。

 ホモの言う通りで、わざわざ学園祭という枠に絞る意味は無いのだ。

 実際、今回の隠れた名目で、ネノプロジェクトへの勧誘評価も含まれているのもあり、個性を垣間みるチャンスではないだろうか。


「……ホモ、一応聞くが、体育祭は何をする予定だ?」

「私がホモの代わりに答えるね! 体育祭の演目はそのままに、ギミックを増やすのはどうかな?」

「恋羽、それは俺の聖剣が伝説になる可能性もあるぜ」


 語尾に星がついていそうなホモはともかく、ギミックを増やすのは悪くないだろう。

 他の学校では出来ない、ポイント制度という生徒の自由を象徴するような学校だからこそ、の観点のお祭りを開催は出来るのだから。


 陽が微笑みながらうなずけば、恋羽は身体を左右に動かし、ピンク髪のポニーテールを揺らしていた。


「アリアさんはどう思う?」

「ギミック次第ではありじゃないかしら」

「うん。異論が無い者は挙手を」


 と言えば、四人の手は上がる。

 満場一致で話は通しても大丈夫だろう。


 相変わらずのようにテンポが良くなるのは、良くも悪くも、四人の個性ありきと言ったところだろうか。

 流れた川で光る石を見つけるのは難しいけれど、恋羽が拾ってくれたからこそ、今に繋がったのだから。


 全てを振り返れば、恋羽が声を拾い上げ、アリアが価値観を出し、ホモが機転を利かせたのは良い会議なのかもしれない。

 この場では、話の内容よりも、話し合う事に重点を置いていると言っても過言ではないだろう。


 だとしても、会長である陽は何もしていないのだが。

 陽が立ち位置で首を傾げていれば、恋羽がもの言いたげな目線でこちらを見てきていた。


「……恋羽、どうした?」

「陽……成功したらご褒美が欲しいなー。それって愛だよね? まとめるだけ、だった会長さん」


 恋羽がアバウトに人の心を読んできたので、陽は矢がぐっさりと心に刺さった感じがした。


 アリアがちゃっかり口を隠しているのもあり、内心では理解しておきながらも触れなかっただけだろう。

 アリアの優しさには心温まるのに、極寒の地に放り込まれた気分だ。


「なあなあ、会長さんよ。これ、で俺たちにご褒美をくれよ」


 ホモは便乗してか、指で丸を作っていた。

 とどのつまり、陽のお財布からとせがんでいるのだろう。


(……アリアさんはまだしも、二人がやる気を出してくれるのなら、安いのか?)


 仮にご褒美という名の餌をぶら下げてやる気を出すのなら、陽はいくらでも出しても構わないと思っている。


 陽は考えた末、紅茶を一口啜った。


「分かった。例えばだけど、どんなご褒美をご所望で? アリアさんもあるなら言っていいからね」

「私は御二方の考えで充分よ」

「アリアたんは大人だね! 私はね、裏生徒会で修学旅行か合宿がしたい!」

「人の財布にダメージを与える天才か?」


 普通に考えても、予想の斜め上の提案をしてきた恋羽に、陽は頭を悩ませた。


「プラスで場所は身体を休めそうな場所かつ、イチャイチャできる場所だったら最高だよな!」

「ホモ、エッチだねぇ」

「二人の意見をまとめるなら、合宿が近いか……大成功したら手配する、って言ったら体育祭の案を全力で考える?」

「陽、その言葉、忘れるなよ?」

「はるぅ、愛だね!」


 ご褒美をぶら下げたところで、二人が他力本願だったら意味がないので聞いたのだが、余計な心配だったようだ。

 あからさまにやる気を出した二人からは、次の議題に行こうぜ、と言わんばかりの熱意を感じるのだから。


 おそらく事後報告は免れないので、報告書は用意すべきなのかもしれない。

 ふと気づけば、アリアはこちらに椅子を寄せ、深紅の瞳をうるりとさせて見てきていた。

 何か心配なのか、胸元に重ねられた小さな手からも雰囲気は察知できる。


「陽くん、場所の案はあるのかしら?」

「貸し切りにする予定だけど、プール付き、露天風呂付き、娯楽付きかつ、自然豊かな山にある旅館を休憩とした目的で案に――」

「なんだと、聖剣を鞘に締まっている場合じゃねえ!」

「ホモ、静寂の貸し切りは愛のチャンスだよ!」


 満ち満ちたやる気は、まさに青春、という言葉がお似合いだろう。

 陽自身、二人が喜んでくれるのなら悪い気はしないので、内心乗り気ではある。


 視野に入れておくよ、と付け足せば二人の瞳は更に輝くものだから、眩しいにも程があるだろう。

 どっと疲れが出てくるような気もするが、最近はアリアと多くの時間を過ごしていた反動なのかもしれない。


 ホモと恋羽、この二人はアリアと反対の性格……と言うよりも、己の道を行く、が強いので話についていけない時点で疲れるのは確定なのだから。


「陽くん、私がついているわよ」


 そう言って重ねられた手は、ひんやりとしているのに温かかった。

 ホモと恋羽が楽しみに浮かれて案を書き連ねている中でも、アリアは確かに、陽を見てくれているのだから。


 愛だけでは語れない、特別な思いがあるようだ。


「……アリアさんがいつも照らしてくれるから、その下で咲き誇れる自分を今後も見てくれると嬉しいな」

「ふふ、言われなくても、見てるわよ」


 笑みを浮かれば、アリアが誤魔かすように紅茶を啜るので、陽は不思議で首を傾げるしかなかった。


「ホモ、二人を温かく見守ろうか。愛だね」

「悪いけど、俺は初めからそのつもりだ」

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