70.鍵を握るのはソラちゃん?彼女を探して3千歩……も歩きませんよ
大事なイベントの写真を失くしてしまったリビィ。
そんな落ち込みきっている彼女は僅かな可能性にも縋りつきたく、自分勝手な願いを口にする。
「最悪なんだ。もうセブンス店長に頼んで、時間操作の魔法で少し前のリビィに注意して欲しいんだ」
セブンスはちょろいが、さすがにスーパーマーケットとは無関係のことで魔法を使ってくれるほど都合は良くない。
そのことを誰もが知っており、ハイピスがより現実的な案を出した。
「復元した方が手っ取り早いですよ。これだけ記録が残っているのなら、寸分狂わず同じ物を作れるはずです」
「無理。模造品は嫌なんだ。模造品を手元に置いても、コピーしたという思い出しか残らないんだ。一緒にツーショットを撮った思い出があるのはオリジナル写真だけなんだ」
「これは相当拗らせてますね……。とりあえず心を落ち着かせましょう。焦り過ぎてしまうと、失くした瞬間を余計に思い出せなくなりますよ」
ハイピスがリビィを慰める傍ら、ラムネは画面に映し出されている画像を眺め続けていた。
そんなとき、ある事を思い出す。
「そういえば、わちきの友達のソラちゃんがイベントに行くと言ってました。これの事かもしれませんし、もしそうなら何か知っている可能性があります。望みは薄いですけど、困っているリビィさんを放置することはできません!調査の基本は聞き込みです!」
ラムネは力強く言いきるなり、急に駆け出してしまう。
思い立った直後に実行へ移すのは、良くも悪くもラムネの素直な性分と思いやりの強さが表れている。
また彼女を単独行動させるのは危険であると考え、すぐさまフーランが後ろを追った。
「ラムネさん、少し冷静になるべきですのよ。婚約者さんのために捜索するのは結構ですけれど、ソラさんの居場所に宛てはありますの?ゲームで一緒に遊んでいた女性ですのよね?」
「そうです。そして、本音を言ってしまうと心当たりすら無いです」
「そうだと思いましたの。であれば、ここはワタクシに任せて欲しいですの。仲間同士で協力することは、もっとも効率的で正しい判断になりますのよ」
フーランは先輩らしく自信満々に言った後、手元に無数の精霊たちを召喚する。
それから疾風の如く動き回る精霊たちを店内の全域へ散らせて、彼女ならではの迅速な人海戦術が行われた。
この百人力以上の助力は心強く、ラムネは感嘆の声をあげる。
「さすがフーランさんです!とっても助かります!」
「周りの人を刺激しないよう精霊を隠しておりましたけれど、今回は特別ですのよ。あと、ついでに写真も探させておきますの」
「えへへっ、ありがとうございます」
仲間のためなら即決で能力を行使してくれるのだから、本当に頼れる先輩だ。
そうして捜索に出た精霊は先にソラを発見して、フーラン達の所まで報告に戻ってきた。
「どうやら、まだこの百貨店に居るそうですの。すぐ彼女に会いに行きますのよ」
フーランはラムネの手を引き、いつもより早足で店内通路を進んだ。
「すみません。通ります」と言いながら行き交う人混みの中を抜けて、2人が行き着いた先はアクセサリー店だった。
ここは偶然にもラムネ達が先ほど入店した店舗だ。
そして再び入店しようとした直前、店舗内から騒がしい声が聞こえてきた。
「にゃっはぁ~!?このリボンって1億もするの!?経費で落とすにしても金額が高すぎるよぉ~!」
「あっ。この声、ソラちゃんです」
ソラの焦っている発言内容に対して、どことなく愉快で面白味ある物言い。
加えてソラと思わしき人物は他の客の目を気にせず、大胆な要求を始めた。
「店員さん!こうなったら値段交渉しよう!このミファ様が夜の雑談配信でお店の宣伝を執行!更にアクセサリーのデザイン、コーディネートを考えるから値段を安くして!」
ソラの言い分は店側に得があるように見えて、実際は一方的な値引き要求でしかない。
そのことをギャルっぽい女性店員も分かっているらしく、包み隠さない態度で即答した。
「ちょ、それはマジで無理よりの無理難題~。それにただのリボンじゃなくて、世界単位で1点物のマジックアイテムだしぃ~。あと値引きは受け付けるなって、店長から言われちゃっているんだよね~」
「うぐぅ……じゃ、じゃあ店長さんと直接交渉させて!このミファ様と話せば気が変わるから!」
「店長ってか私の兄なんだけど~。それで、お兄ちゃんはお宝の発掘とか言って街で遊び回っているから無理難題~。つーか、連絡が付かないから多分ナンパでもしているかもね~。とりま、私からお手軽価格のアクセサリーをオススメしてあげる~」
「にゃは~、なんて手強い店員!このミファ様のおねだりアタックが通じないなんて!もしかしてでもしかすると、こいつ無敵か!?ここまでの手応えはアカネちゃんとのタイマンバトル以来だよ!」
店員とソラの会話は少なからず建設的であるはずなのに、他の人からすれば異次元に等しかった。
特にラムネは理解できない単語の多用に困惑して、彼女ら2人のマイペース過ぎる会話に割って入る勇気を振り絞れなかった。




