68.仲良しグループの昼食はビュッフェです!
ラムネ達4人はビュッフェスタイルの飲食店に足を運び、それぞれ好きな物を食べながら楽しく会話した。
こうして彼女らが集まって外食するのは初めての出来事だ。
そのおかげでラムネには印象深い思い出となる上、心休まる時間になっていた。
また未知のルールを知る機会にもなるのだが、やはり不慣れなことでリビィが付きっきりで教えていた。
「ラムネお姉ちゃん良い?このソースは、これで掬って掛けるんだ」
「お皿に盛る量の調整が難しそうですね。蓋を開けて、掬って……」
「あぁ!持っている皿を傾けているんだ!?危ない危ない!」
「あぅ~。あれこれと器用にできませんよ~。種類豊富な料理を選ぶ事すら、わちきには大変ですもん。それに落ち着かないです」
ラムネが落ち着かないと言った原因は、知らない人が同じ料理を取るために隣で待っている状況のことだ。
気遣いを優先する彼女にとって、自分のせいで誰かを待たせてしまっている状態は心苦しい。
更に観察されていると勝手に思い込み、不要な焦燥感まで覚えていた。
しかし、それらの要因を抜きにしても、彼女の不器用な手つきは色々と問題があるように感じられる。
「ラムネお姉ちゃんは美術が得意で手先も器用な方だから、そう卑下する必要は無いんだ」
「うーん。多分わちきは順応性が低いんだと思います。初めて挑戦することは、必ずと言って良いほど失敗します」
「それじゃあラムネお姉ちゃんが失敗しても良いように、リビィが頑張ってフォローするんだ。そしてフーラン先輩より相応しいパートナーだとリビィは証明してみせるんだ!」
リビィは声に力を入れて気張る。
それもそのはずで、ラムネがフーランと結婚したいという話をラムネ自身が口を滑らせてしまったせいだ。
当然、その話題が出た瞬間にリビィは強い嫉妬心に駆られたが、同時に自分が不甲斐ないから他の人に目移りされているとも捉えた。
だから今、こうして手本を見せながらサポートに回ることで自分の存在価値を認めさせようとしている。
しかしフーランはその心情を知らずに近づき、そのままリビィの地雷を踏み抜いた。
「ラムネさん。知らない料理ばかりで味が分からないでしょうから、ワタクシが選んで取って来てあげましたのよ」
日常生活ではフーランが手料理を振る舞っているため、彼女だからこそ出来る配慮だ。
そしてラムネの方は感謝の言葉を返しながら受け取る。
もちろんフーランに他意は無い行為だが、リビィは驚愕した顔で叫び出した。
「なっ!?なにぃ~!?ここでポイント稼ぎ!?これは見過ごせない!許せない!リビィも負けられないんだ!」
「あらま、いつものリビィさんの発作が始まりましたのよ」
「こうなったら味変で勝負するしか無いんだ!リビィの味覚センスで舌を圧倒!胃袋を掴むバラエティー豊富な組み合わせ!トッピングにトッピングの上乗せ!飲み物同士の異色コラボレーション!そしてスープとスイーツを掻き混ぜた異彩放つ地獄の一品が誕生ぬわわああああぁあああ!!!」
周りの目を気にせず1人盛り上がるリビィ。
そんな彼女の奇行を尻目にフーランがテーブルへ戻る一方、ラムネは彼女の大胆な盛り付けに別の意味で感心していた。
「初めて知りました。リビィさんの好みは、わちきと全然違うのですね」
妙な勘違いが起きる中、しばらくして彼女ら4人は同じテーブルで食事を進める。
その際にハイピスがサラダを食べながら次の予定について語り出した。
「やはり私個人としては、お買い物に興味を持って欲しいと考えました。つまり可愛い小物や化粧品のコレクションですね。好きな物が身近にあると充足感を味わえて、日常生活に張り合いが出ますよ」
「分かりました。でも、そういう商品はわちき達のお店でも取り扱っているんですよね?」
「そうですが、やはり専門的な知識と技術を持ったスタッフが居て、流行や最先端の情報を前面に取り扱っているので大きく異なりますね。セブンス店長のお店は世間の話題に左右されず、また保管倉庫と大差ないですから尚更です」
「なるほど。そういえばハイピスさん達でも店内の全ては把握しきれてないんですっけ?」
「えぇ、そのためスカウターですからね。それでフーラン先輩は…………あぁ、ここでも激辛料理を食べていらっしゃいます」
刺激的な香辛料の匂いを嗅ぎ、ハイピスは少しだけ辛い表情を見せた。
何かトラウマに相当する思い出があるようだ。
対してフーランはスイーツ感覚で激辛料理を食べており、平常時と変わらない様子で喋り出す。
「ワタクシはスポーツ体験をして欲しいと思っていた所ですけれど、今日は時間が足りないないようですのよ」
「おぇ」
唐突に汚い嗚咽を漏らしたのはリビィだ。
死神少女は突発的な思いつきで料理のアレンジをして、結局は自分で食べている。
ただ誰も彼女の無様な姿を気にかけず、フーランは平然と話し続けた。
「ですから、お買い物の後はカラオケしますのよ。いつでも気軽に楽しめる遊びになりますし、ラムネさんには是非ともストレス発散の方法を覚えて欲しいですの」
「うぇ」
「健康のためにお金を使おうとするところが、長生きしているフーラン先輩らしいですね。先輩はマッサージやストレッチも好きみたいですし」
「ぐぅ」
「万全な状態を維持するためにも、朝の体操と寝る前のストレッチは欠かせませんのよ。そうするだけでストレス社会に対する免疫を得られますの」
「げほっ」
「素晴らしいですね。私の宗教の教えにも取り入れておきます」
「おっおっ、おほっ、お゛ほっ」
先ほどからリビィは1人で呻き声をあげ続けており、ついには一口も食べられなくなってしまう。
さすがに調子が悪そうな様子は見過ごせない。
だから真っ先にラムネが彼女の体調を気遣った。
「リビィさん、大丈夫ですか?」
「お、おいしすぎて変な声が止まらなくなっただけなんだ」
「そうなんですか?でも、凄い涙目ですよ。それどころか血涙を流しているように見えます」
「これは感動の涙で、決して強がりじゃないんだ。別にリビィのダメなところを見せないよう、瘦せ我慢で隠しているわけじゃないんだ」
「それなら、今はちょっとお腹の調子が悪いのかもしれませんね。トイレへ行きましょう。わちきが付き添ってあげますよ」
「うぅ……ありがとうなのだ」
ついにリビィは耐えきれず、自業自得ながらもラムネに連れられてトイレへ行くことになる。
その歩む間も足元はふらつき、ラムネに寄りかかって支えられるほど限界を迎えていた。
そんな仲睦まじい2人の後ろ姿をフーランは眺めながら、武術で培った手捌きで激辛料理をハイピスの口に押し付けるのだった。




