61.無双した結果、追加アイテムで世界がヤバい
思いがけない場面でフーランと合流できることは嬉しいが、首を傾げたくなる出来事だ。
そんな彼女の不思議そうな様子にソラは気が付き、声をかけた。
「どしたの?」
「同名なのか分かりませんが、知っている名前でしたので……。でも、応答が無いのは不思議ですね。わちきみたいに襲われているのでしょうか」
「応答する余裕が無い、または気配を殺すために隠密に徹しているのかもね。ずっとHPが変動してないから接敵してないとは思うけど」
そう話した矢先、2人に向けて通信が発せられる。
それはちょうど話題に出した味方から送られたもので、ラムネには聞き馴染みある声でもあった。
『こちらフーランですの。長らく通信を無視してしまい、申し訳ありませんでしたのよ。開始から激戦続きで余裕がありませんでしたの』
「あっ、この声と喋り方は本当にフーランさんだ」
「なになに?マジでレモネードさんの知り合いだったの?」
「はい。職場の先輩さんです」
「え~?ゲーム内でばったり会うとか、ソラ様的には気マズい話だな~。つい萎縮して楽しめねーぜ」
この2人の呑気な会話は通信先のフーランにまで聞こえていた。
そのため彼女はレモネードと呼ばれている女の子がラムネだと察し、念のため確認を取るのだった。
『あらま、ラムネさんですの?』
「はい、わちきですよー。今はオモチャ屋さんで遊んでいます。もしかしてフーランさんもお店に居たのですか?」
『実はそうですけれど、ちょっとややこしい揉め事に巻き込まれていますのよ。簡潔に言いますと、この試合で優勝しないとハイピスさんの所業が証拠と共に世界へ拡散されて、ネットリンチされますの』
「よく分からないですけど、その条件を受ける状況に追い込まれたわけですね」
『自称、凄腕ジャーナリストさんの企みですの。とりあえず半数以上のチームは、ワタクシの方で処理しておきましたのよ』
フーランはあっさりとした態度で連絡を済ませようとするが、その戦果は凄まじいものだ。
ましてフラッグ所持者を2回倒す必要があるのに単騎で成し遂げているのだから、それは嘘か誇張した報告だとソラは思った。
「このフーランって人は何を言っているの?しかも開始から間もない時間だし、迅速に倒しきるのはトップのプロゲーマーでも無理でしょ」
『斬ってあげましたのよ。それに銃もワタクシからすれば武芸の1つに過ぎませんの』
「……いや、色々と考えてもソラ様には理解不能だよ。褒めたくても現実離れしていて褒められないって。もしかしてでもしかすると、チートでも使った?」
ソラは少し卑屈気味に言いながら、メニューを操作して戦績画面を表示した。
すると、そこには信じられない数値が叩き出されており、驚愕すると共に仰天した声をあげた。
「はっ!?無傷のまま42回もプレイヤーを倒しているんだけど!?それで20チーム中の14チーム敗退させているし!これ絶対にチートでしょ!」
ソラはゲームの腕前に自信があるような口ぶりだったので、このゲームについて詳しい方だろう。
つまり、そんな熟練プレイヤーの彼女がフーランは卑怯な手段を使用していると言いつけたくなるほど、通常では到底ありえない出来事なのだ。
だが、そこでゲーム内全体へ向けてのアナウンスが鳴り響く。
『ただいまレモネード、ソラ、フーランの女子チームが大量の連続キルを獲得中!それにより待ち伏せなどの試合膠着を避けるため、他チームには特殊な追加アイテムを送ります!これで皆さんガンガン積極的に戦いましょう~!』
運営は試合展開が加速させるために介入し、更には全プレイヤーにこれまでの撃退場面の映像が送られた。
これで行動パターンを読み、それぞれ対策を練る情報のアドバンテージを与えたつもりなのだろう。
しかし、この映像が教えてくれたのは絶望的な戦力差だ。
それは残った他プレイヤーどころか、同じく映像を見れたソラまで同じ感想だった。
ゲーム内では、キャラクターに設定された身体能力以上のことはできない。
その代わり操作技術や反射神経などは本人の能力が反映されているのだが、フーランの動きは明らかに格が違った。
未来が見えているレベルで先読みし、動作フェイクを入れながら撃破した後、敵が仕掛けたトラップや囮を看破している。
更に姿が消えたと錯覚させるほど隠密と視線誘導の技術も卓越しており、他のプレイヤーが単なる的に見える始末だ。
そのせいでソラの口からは乾いた笑いが漏れる。
「にゃはは~……、頼もしいけど禁止レベルでしょ。ナイフで銃弾の軌道を逸らしているし、フーランが撃った弾は跳弾で相手の急所を抜いているし……。真正面で勝つあたりチートより質が悪いって」
対してラムネはフーランの活躍を知り、子どもっぽく感心した。
「凄いですね!まさに一撃必殺です!確かにこういうことができるなら、げーむって面白いです!」
「いやいや、こんなの例外中の例外だから。……もしかしてでもしかすると、レモネードさんの職場って秘密組織なの?それなら納得できなくもないけど」
「えっ?ただの販売店ですよ」
「はぇ~………」
ラムネが嘘を吐いて無いと一目で分かるため、もはやソラは理解できないと分かって思考停止する。
そうしている間にもゲームが進行する中、フーランの戦績の方に死亡回数が1増えるのだった。
「にゃっは?フーラン死んだの?」
無敵だと思った仲間がやられたので、ソラは逆に驚いた様子で呟いた。
とは言え、単独行動なのだから凌ぎきれない場面が訪れるのは当然ことだ。
「もしもーし?こちらソラ様だぞ~?フーラン、応答して~。あれ~……ありゃりゃ。なんでか知らないけど、またもや応答無しだよ」
「どうしたのでしょうか」
「ジャミングかな。まぁソラ様的には、あれだけ無双していた人が即死させられたことの方が悩みの種だよ」
対等に渡り合えるチームがいるとすると、それはチート同等に脅威だ。
だから少しでも状況を知ろうと、ソラは手早くマップを開いて先ほどまでフーランが居た場所を調べようとした。
しかし、マップには不可解な表記がされている。
「放射汚染って出てる……。範囲が異常に広大だし、核兵器を撃ち込まれたのかも。巻き添えを受けて消えたチームもいるなぁ」
「凄い武器があるんですね」
「多分、さっきのアナウンスで言われていた特殊アイテムでしょ。普通に核兵器が配置されていたら、獲得した人が勝ち確になるから」
「はぇ~」
「何にしろ、運営は贔屓し過ぎな気がするかな。もし全プレイヤーが核兵器を保有したら、それこそ核戦争だよ。……にゃはは、まぁさすがにそれは無いか」
ソラは喋りながらも足を進めていた。
それでようやく暗闇エリアを抜けたとき、一気に視界が広がる。
ただ彼女らを待っていたのは信じられない光景だ。
無数の宇宙艦隊が空を埋め尽くす規模で飛んでおり、無人兵器やNPCの兵士まで出撃させていた。
この事態には唖然するというより、呆れる気持ちが勝ってしまう。
「……もしかしてでもしかすると、これも追加アイテム?一応無双していたチームが言うのもなんだけど、ゲームバランス悪くない?やり方が極端だよ、極端」
「ビュンビュン飛んでいてカッコイイですね!」
「勝利に執着してないとしても、これで喜べるレモネードさんが羨ましいよ。ソラ様的には、事前に期待していた駆け引きの楽しみが奪われた気分だもん。あーあ、これなら航空機を墜落させなければ良かった」
こうしてソラが愚痴る間にも戦況は移り変わっており、2人に向かって戦闘機が飛んでくるのだった。




