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村の異世界スーパーマーケットへいらっしゃいませ~新人の鬼娘が入りました~  作者: 鳳仙花
・4章~ラムネの夢と目標はみんなと自分のために~
51/75

51.都会のコンビニは凄い防犯対策されています

リビィはラムネを強引に連れ歩いた後、途中で見かけたベンチへ座らせた。

それからリビィは再び彼女の全身を丹念に観察しながら、不安そうな声色で問いかける。


「ラムネお姉ちゃん、気分は大丈夫なんだ?」


「わちきは大丈夫ですよ。突然1人になったので、色々と驚いちゃったですけど」


「あれはちょっとした転移の失敗なんだ。それより、あの軽薄な野郎にエッチなことはされてないんだ?」


「えっち?」


「卑猥なこと。例えば体を触られたとか、嫌な言葉をかけられたとか」


「そういうのは無かったです。むしろ、わちきを気遣ってくれていました」


そう言ってラムネが愛想笑いを浮かべるものだから、リビィの幼い心は少しだけチクッと痛む。

この痛みの正体は、小さな嫉妬心の芽生え。

加えてリビィは(こら)え性を培って無いため、どことなく不満気に喋った。


「やっぱりラムネお姉ちゃんは……、ああいう男性が好みなんだ?」


「あの、どうしたのですか?リビィさんの目が怖いですよ」


「まずはリビィの質問に答えて欲しいんだ。ラムネお姉ちゃんは、見た目がカッコイイ男性の方が好きなんだ?」


「うーん?いきなり訊かれても、わちきには難しい質問です。わちきって相手の好み以前に、誰かとお話したり仲良くした経験が少ないから……」


「むぅ~、それはちょっとズルい。答えになってないんだ」


「あっ、でも!リビィさんと一緒に居る時はいつもワクワクですし、ドキドキしていますよ!あとドンドン頑張らなきゃと思ったり、ポカポカ気分にもなります!なので、リビィさんみたいな人の方が大好きです!」


この場しのぎの答えに聞こえてしまうが、一緒に居て楽しいというのは紛れも無い事実で本音だ。

ただ、その一言だけでリビィの不安は解消されず、様子を探る眼差しで訊き返した。


「それは……本当なんだ?ラムネお姉ちゃんの心から出てきた言葉なんだ?」


「もちろん本当ですよ!だから、えいっ!」


ラムネは勢いよくベンチから立ち上がる。

同時にリビィの指を絡めながら手を握った。

言わば、恋人繋ぎの握り方だ。

当然ラムネは親愛の気持ちを示そうとしただけで、この握り方の意味を把握しているわけではない。

また、これまでの馴れ合いに比べたら子どもじみた愛情表現に過ぎない。

しかしリビィにとっては宝石をプレゼントされたように特別な出来事で、無性に嬉しくて表情が緩くなっていた。


「うぅラムネお姉ちゃん……ふふっ、えっへへ……。突然こんな……あはっ、ふふふ……」


「こうすると本当の姉妹みたいですよね!よくロゼラムお姉ちゃんがしてくれました!」


「えっ?あっ……あれ。そ、そっかぁ。ラムネお姉ちゃんの場合、姉妹っぽい握り方ってだけなんだ。ちょっと残念かも……」


リビィの表情は照れ気味のままだが、ほんの少しだけ落胆する。

なぜなら自分が特別だと思っているだけで、相手は軽いスキンシップくらいにしか思ってないという認識の差を感じてしまったからだ。

その微妙な違いに気を落としかけた矢先、ラムネは自慢そうに話してくれた。


「この握り方は安心するので大好きです。でも、わちきはいつもお姉ちゃんに握って貰うのを待つだけでした。そんな受け身ばかりのわちきだったけど、今日は初めて自分から握りました!」


「ふ、ふぅん?初めてなんだ?」


「はい!なので、この事はずっとずっと覚えておきますね!わちきがお姉ちゃんらしく、大好きなリビィさんの手を握った大事な瞬間です!」


「えへへ……。さすがに大げさなんだ。でも、リビィも嬉しいから写真を撮っちゃうんだ。白昼堂々と街中で恋人握り、いぇ~い」


リビィは上擦(うわず)った声で言いつつ、いつもより落ち着かない素振りでスマホを取り出す。

それでラムネとの恋人繋ぎをアピールしながら写真に収めた後、1人で満面の笑みを浮かべるのだった。


「むふふぅ~。これはセブンス店長どころか、みんなに自慢できる写真なんだ。高価な額縁に納めよーっと」


「あははっ、リビィさんも大げさですね」


「リビィにとっては一生の思い出なんだ!毎晩この写真を見ながら熟睡して、永眠するまで必ず大事に観賞する!これはリビィに()された使命なんだ!」


「あ、圧が凄いです。……ところでリビィさん。フーランさんとハイピスさんを見かけませんでしたか?多分わちきみたいに、あの2人もどこかへ行ってしまったんですよね?」


「あの2人とは連絡が取れているから安心して良いんだ。ただ、ユリユリ合衆国にまで飛ばされたみたいで合流するのは遅くなるんだ」


「なるほど。……その、つまり?」


とりあえずラムネは理解したつもりで頷いてみせたが、当たり前のように固有名詞を使われても理解できるわけが無い。

そのことにリビィは遅れて気が付き、言い方を変えた。


「海を越えた別の国にまで行っちゃったから、2人との合流は昼頃になるんだ」


「おぉ、分かりました!では、それまでどうしますか?色々と予定を組んでいると、フーランさんから聞かされていたのですけど……。この調子だと難しいですよね」


「リビィだけではプラン通りに行動するのは困難だから、お昼まで自由行動にするんだ。ひとまず近くのコンビニに行くんだ」


こんびに(・・・・)!わちき、知ってます!セブンスさんに教えて貰いました!こんびに(・・・・)は不良の溜まり場で、ぷりぺいど(・・・・)詐欺などの悪徳商法が蔓延(はびこ)っていると!」


「どんな偏見にまみれた情報を教えられたんだ?コンビニは、ただのお店なんだ。何ならセブンス店長のお店より健全なんだ」


「えっ……?わちきの職場って、実は不良の溜まり場で悪徳商法なんですか?」


「そう言う事じゃなくて、昔のコンビニは違法の温床になっていたから、今は防犯完備されているなんだ。とにかく来てみれば分かるんだ」


どうやら言葉だけでは説明しきれないらしく、リビィはラムネを連れて歩き出した。

すると歩いてから数分()らずで、複数の巨大ロボットと戦闘機が巡回する要塞へ辿り着いた。

その要塞は鋼鉄の塊としか言い表しようがなく、見上げきれないほど高く巨大だ。

また大量のレーザー砲が設置されていて、この前の遺跡探索を思い出させる建造物となっていた。


「リビィさん、これは何ですか?もしかして軍事基地ですか……?」


恐る恐るラムネが訊くと、死神少女は真顔で即答する。


「これが現代のコンビニなんだ」


「お、大きい……。圧倒的に大きいです……」


「昔は酔っ払った邪神が店内で暴れたり、飲酒運転の宇宙戦艦が突っ込むことが多かったんだ。それで今の武装に至るんだ。でも店内は普通だから安心して良いんだ」


ざっくりとした説明と共に、リビィは高さ10メートルはある鋼鉄扉を通る。

その後をラムネは付いて行くのだが、入店した直後に店の奥から悲痛な叫び声が響いてきた。


「やめろぉおおお!俺は転売するためにカードを買ったわけじゃない!信じてくれぇえええぇえ!!」


「我に浅はかな嘘は通用しないぞ!転売目的の購入は即刻処分と決められている!貴様を(しか)るべき場所で塵一つ残さず消去(デリート)する!くだらない戯言(たわごと)(つつし)め!」


「ひぃいいいぃいい!頼むから、やめてくれぇえええぇえ!誤解だあぁああああぁ!」


無実を必死に訴えかける男性の悲鳴だ。

ショッキングな事態にラムネが硬直したとき、前方からは見慣れない種族が1人の人間を引きずって来ていた。

その種族は数多の猛獣が混じったような生物であって、どれほど観察しても理解が難しい姿だ。

更に無数の黒い触手も生えており、目視できるのに正体が掴めないと言っていいほど奇怪な造形だった。


また、(うごめ)く触手は連行相手の体を貫通しているのにも関わらず、傷や出血は見受けれない。

おそらく自然の摂理に反した怪物なのだろう。

しかも当然のように壁を通り抜けた後、煙となって消えてしまった。

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