44.運命の最終決戦!セブンスの因縁に決着を……って何の事ですか?
それからラムネ達4人は姉のロゼラムと談笑し、控え室で交流を深め合っていた。
特に全員揃って賑わうのが好きなため、自分の好み一つ語るだけでも盛り上がった。
そうなると彼女らは外の出来事や時間など気にかけず、ひたすらに話し込み続けるのみ。
そして時間があっという間に過ぎると、やがて廊下の方から慌ただしく駆ける足音が聴こえてくるのだった。
「あらま、この騒々しい足音は……」
フーランは思い出したような口ぶりで呟く。
この店内で走る人物は限られている上、現時点だと心当たりは1人しかいない。
実際、彼女の思った通りの人物が走っており、その人は控え室の扉を全力で吹き飛ばした。
「ちょっと~!?なんで寛いでいるのさ!今、店長である私の葬式&結婚式だよ!?それなのに部屋から出てこないって、おかしいでしょ~!?」
セブンスは部屋へ突入するなり大きな叫び声をあげ、和やかだった雰囲気を壊す。
それによってラムネ達が戸惑う中、フーランが一番の先輩として言い返した。
「もうワガママはよろしいですのよ。それに最初の目的から逸脱しておりますの」
「そんな事ないからね!死んだ私がラムネちゃんの愛情たっぷり濃厚キスで生き返り、目覚める!そして運命だと悟って結婚する!これで運命共同体で一蓮托生だねってなって、一生を共にする!つまりラムネちゃんは店に残る!」
「ちなみにですけれど……、それにも作戦名をつけておりますの?」
「もっちろんだよ!これぞ『居眠りの姫様と天使のラブロマンス作戦』だよ!」
「『ワガママ店長のパワハラ作戦』の間違いですのよ」
「それは言い過ぎでしょ!えっ、言い過ぎ……だよね?パワハラだってラムネちゃんに思われてないよね?ねっ!?」
よほど心配なのか、セブンスは本気で辛そうな声色と表情でフーランに縋りつく。
その姿は哀れなものだが、独りよがりの強硬手段を秘密裏に実行していたのだから相手に嫌われても不思議では無い。
最低でも数日間は敬遠したくなることを彼女は犯している。
しかしラムネ本人はまだセブンスの真意を理解しておらず、呑気に応えてみせた。
「そのぱわはら?というものが、わちきには分かりませんけど、とにかく大丈夫ですよ!それに何でも許しちゃいます!だって、わちきはセブンスさんのことを仲間として愛し……」
「下位魔法・音響断裂絶!」
彼女が話している途中、セブンスは唐突に魔法を使って言葉を遮った。
この魔法の力によってラムネは声を発することが封じられ、口パク状態になってしまう。
その傍ら、セブンスは呼吸で肩を動かすほど息切れ気味で顔は紅潮していた。
更に床へ垂れ落ちるほどの鼻血も出している。
「あ、あぶなぁ……。また死ぬ一歩手前だったよ。まだ鼻血だけで済んだけど、ラムネちゃんってば一瞬の油断も許してくれないね。そんな所も可愛いけどさ」
「変なことで攻防を繰り広げるのはやめて欲しいですの」
「そんな事よりも、ロゼラム!ここで会ったが百年目!この時を待ちわびたよ!さぁ今こそ因縁に決着をつけようじゃないか!ラムネちゃんを賭けて、正々堂々と勝負だ!小細工は無しだよ!」
「卑怯なことをしているのはセブンス店長だけで……」
「フーランちゃん、揚げ足取りするために喋るのはやめて!下位魔法・音響断裂絶!」
「っ……!………!!?」
セブンスは実力行使を続け、フーランまで魔法で黙らせてしまう。
そのため、次第にフーランの顔つきが呆れて物も言えない様子になる中、肝心のロゼラムは落ち着いていた。
言い掛かりで面倒事に巻き込まれているのに不満を言わず、ただ平常心だ。
むしろ親しみある温かい眼差しであって、彼女は優しい物腰でセブンスに話しかけた。
「その勝負は、どういうつもりの勝負ですか?あたしに勝ったらラムネと結婚するってこと?それとも、ただ妹と一緒に居たいってこと?」
「どっちも!なんと言っても私は欲張りだからね!ぐうっへへ~!」
「それも本音なんだろうけど、あたしはもっと素直に話して欲しいです。例えば結婚すると言い出すのも、一緒に居たい気持ちが何よりも強いからだとお姉ちゃんは推測しています。要は束縛したいだけで、結婚である必要は無いんでしょう?」
「うぐっ!?う、うるさい!この私に口答えしないで!」
「あたしの迂闊な発言で怒らせてしまったのなら、ごめんなさい。そして、セブンスさんの事はよく分かりました。勝負を切り出したのも、踏ん切りをつけるための理由付けを欲しいからだと。それならセブンスさんに合わせて、勝負を受けます」
「今、受けるって言ったね!?二言は無しだよ!当店はキャンセルを受け付けないから!ただしクーリングオフは許す!」
セブンスは躍起になって言いきる。
ここまで拗らせてしまうと、やはり説得という手段は通じないのだろう。
そのことをロゼラムは一早く理解したからこそ、勝負の申し出を受けたわけだ。
しかしセブンスの実力を知る者からすれば、この勝負はあまりにも無謀そのもの。
だからリビィは心配を覚え、ロゼラムにこっそり話しかけた。
「セブンス店長は並外れた万能の力を持っているんだ。それなのに勝負を受けるなんて、全くもって賛同できないんだ」
「リビィさん、心配してくれてありがとうね。でも大丈夫だよ。お姉ちゃんにはちゃんと勝つ算段があるから」
「うーん。道理が通じない相手だから、必勝の作戦が無数にあっても勝てるわけ無いんだ」
「まぁ負けても何か失うわけじゃないから、リビィさんがプレッシャーを感じてなくてもいいよ。それよりラムネ達を連れて、荷物を開けておいてくれない?」
ロゼラムは当然のように言うが、これまた当然のようにリビィは荷物の話をされても困るだけだ。
なにせ心当たりが無いから、少女は首を傾げて訊き返す他なかった。
「荷物?荷物って、何のことなんだ?手荷物?」
「あたしが郵送しておいた荷物のこと。手紙に『まだ開封しないで』って書いたから、ラムネは律義に守っているはずなんだよね。それを開けて、準備を進めておいてね。とりあえず荷物の中身を見れば分かるから」
「分かったんだ。正式に認められた婚約者として、その役目は果たしてみせるんだ」
「あははっ、ありがとうね。将来の義姉として、リビィさんを頼りにしているよ」
「義姉!?リビィの勘違いじゃなければ、義理の姉って意味なんだ!?うん、しっかりと任されたんだ!さぁさぁラムネお姉ちゃん!あとハイピスとフーラン先輩!リビィに付いて来るんだ!義姉に迷惑をかけたらダメなんだ!」
ロゼラムは相手が求めている言葉を自然と送るので、リビィは必要以上に張り切って行動を起こす。
ただリビィが皆に部屋から出るよう促しても、ラムネだけは不安の眼差しで立ち尽くしていた。
少女が不安を覚える理由はロゼラムへの心配もあるが、そもそも2人が争って欲しく無いという想いが強いからだ。
どちらも大切であるし、どちらも大好き。
だからケガを負う心配している以前に、この状況自体が好ましくなかった。
その心情を姉のロゼラムは目配せだけで察し、笑って手を振る。
「安心して、アオ。ちょっと話して、すぐに仲直りするだけだから」
彼女の笑顔は、まるで愛娘に向けるような安心感を与えるもの。
そんな心強く優しい笑顔をラムネは信頼して、大きく頷いてから部屋を出ていった。




