39.お姉ちゃんと再会!でも、何かおかしいです?
「ロゼラムお姉ちゃん、まだ来ないのかなぁ。もしかして急用でも出来ちゃったのかなぁ?わちき、早く会いたいのに」
すっかりラムネは平常時と変わらない心持ちとなっており、今はお店のスタッフルームで愛玩動物のミニキュイと戯れていた。
時刻は既に午後過ぎ。
てっきり午前中に姉が来ると思っていた彼女は、緊張よりも不安を覚える。
「お姉ちゃんはしっかり者で何でも出来るから、心配することは何も無いと思うけど……。ハッ!?このお店に来るのが初めてだから、どこかで迷子になっちゃった!?それならありえますよね、ミニキュイさん!」
「きゅい?」
「やっぱりそうですよね!もうそれ以外に思い当たる節がありません!あぁ、なんでわちきは気づかなかったんだろ!よーし、それなら外へ行って呼びかけてみましょう!」
ラムネは思い込みが激しく、勝手な思いつきだけで断定を下す。
もちろん、実際は大人しく待っていられないだけなのだが、彼女のことだから姉が迷子になっていると本気で信じているのだろう。
そのため思い立った彼女はミニキュイを抱え、軽い駆け足で部屋を出た。
それから脇目も振らずに店外へ出たとき、なぜか彼女は呆然としてしまうのだった。
「あ、あれ?わちき、いつの間に異世界転移しました?色々と違うような気が……?」
朝とは全く異なる光景が広がっていて、ついさっきまで考えていた事を忘れるほどラムネは困惑する。
彼女はずっと店内で姉の事ばかり考えていたから気づけなかったが、いつの間にか店前では大勢の大道芸人がパレードを開催していた。
とても賑やかで華々しく、誰もが楽しそうに踊っている。
そして空からはお菓子が降り注いでおり、花火が絶えず打ち上げられていた。
「お祭りですかね。そんな気配は無かったはずなのに、いつから……?いえ、ここは本当にわちきの知っている場所なんですか……?」
どこを見渡しても状況が一変しているため、まったく理解が追いつかない。
とにかく自分が知らない事が起きているのは確実だ。
しかし、何が起きたらこのようなお祭り状態になるのか、いくら考え込んでも分かるわけが無い。
そうして置いてけぼりを受けた彼女は立ち尽くす他なかったが、ふと遠くから聞き馴染みある声が聞こえてきた。
「おーい、ラムネちゃ~ん!」
「あっ、セブンスさん」
声が聞こえてきた方へ視線を向けると、セブンスが笑顔で手を振りながら駆けよって来た。
これによりラムネは小さな安堵を覚え、自分からも彼女の方へ歩み寄る。
「あの、セブンスさん!これは一体何事なんですか!?お店が大繫盛じゃないですか!」
「あぁ、この人達のこと?残念ながらお客さんじゃないんだよね。ラムネのお姉ちゃんに楽しんでもらおうと、私が呼びつけたスタッフ達だよ」
「いきなり過ぎませんか?それにこんな事をしたら、いつもと違う雰囲気になっちゃいますよ?」
「良いの良いの。単なる賑やかし役だけじゃなく、セキュリティも兼ねているから」
「せきゅ……?えっと、それって守ることですよね。そういうのはフーランさん達で手が足りていると思いますけど。また何か、別のことですか?」
「うん、今日は何もかもが特別だからラムネちゃんは気にしなくて良いよ。それよりも!そろそろお姉ちゃんが来るよ。今、ここまで案内させているから!」
「あぁ、なるほど!そうだったんですか!よかった、やっぱり来ているんですね!ありがとうございます、セブンスさん!」
ラムネは、いつも以上にセブンスの意図を読みきれていない気がした。
まるで大きな秘密が隠されているような、なんとも言い表し難い漠然とした感覚。
しかし、それより自分が気にするべきことは姉との再会だ。
だから今は素直に喜ぶ。
そしてセブンスと話している間に、巨大で豪華な装飾が施された山車が店の方へ向かって来ていた。
その上にはロゼラムの姿があり、まるで祭りの主役のように運ばれているのだった。
「やっほ~、かわいい妹よ!ロゼラムお姉ちゃんが会いに来たよぉ~!」
「わわっ、お姉ちゃん!?」
ラムネの予想を遥かに越える盛大な歓迎であって、姉の登場に驚く。
合わせて姉の顔を見て感激する気持ちが盛り上がり、ラムネは念願の再会による嬉し涙をこぼしていた。
「うぅ、良かったぁ~。お姉ちゃんに……ひぐっ、会えるなんて……」
笑顔で迎えたかったが、元気に生きていたという実感が湧いて涙が止まらない。
そんな彼女を見かねて、山車に乗っていたロゼラムは跳躍してラムネの前へ着地した。
「よいしょ!なんだなんだラムネ~!この私、お姉ちゃんに会えたのが嬉しくて泣いているのかぁ~?会いに行くって先に伝えていたのに~!」
「あ、当たり前じゃないですか!だって、やっぱり寂しくて、もう会えない場合もありえて……。今日も、もう来ないのかと……!」
「もう!こうして会えたんだから泣かない!よしよし、泣き止むまでお姉ちゃんがいっぱい慰めてあげるよ~」
「あぅ~ロゼラムお姉ちゃん~……!」
それから2人は再会の感動に満たされた想いで、強く抱きしめ合う。
仲良し姉妹がお互いに喜んでいる姿は、とても微笑ましい光景。
その様子をセブンスは隣で悪魔的な笑みを浮かべながら見守っており、またロゼラムの方も同様に歪な笑みを見せていた。




