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村の異世界スーパーマーケットへいらっしゃいませ~新人の鬼娘が入りました~  作者: 鳳仙花
・3章~ラムネ姉妹とセブンス店長の宿命?~
34/75

34.ロゼラムお姉ちゃんから贈り物が届きました

ある日の昼下がり。

ラムネは店外の出入り口付近で、桃色の毛並みを持つ丸くて小さな生物を抱えていた。

その生物は「きゅいきゅい」と鳴く愛玩動物であり、前にセブンスが彼女の採用試験で持ち出してきた生き物でもある。

本来なら絶大な力を発揮する危険度が高い動物なのだが、今は警戒心を持たず無邪気に遊び、エサを食べて寝るだけの飼いやすいペットだ。


「今日はポカポカ陽気で、とっても良い天気ですね~。こうなると、なんだか何でも出来る気がしてきますよ!」


昼食を終えたばかりのラムネは、快晴の心地良さに当てられて一人前の店員気分だった。

だが、実際は1人だから人目を気にせず舞い上がっているだけで、重度の人見知りは健在だ。

そのため彼女はどれほど張り切って自身を鼓舞しても、やはりお客が来る度に赤面して(うつむ)いてしまう。

事実、今しがたラムネは大胆な事を言ったのにも関わらず、人の気配を察知した瞬間に苦しそうな顔へ早変わりしていた。


「あっ……。心なしか、遠くからお客様が向かって来る気配を感じます。えへえへ……、あぁミニキュイさん。わちきに勇気を与えて下さい。わちき、頑張ります」


「きゅう~?」


少女は助けを求めて、両腕で抱えている小動物にミニキュイと呼びかける。

だが、そのミニキュイは不思議そうに鳴くだけだ。

ラムネの言葉に反応したとなれば、ある程度は言語を理解しているはず。

しかし、あいにくミニキュイは相手に恥ずかしがるという感覚には共感できないようで、むしろ新しい出会いに期待を寄せるタイプだった。


「あぁ、ミニキュイさんの元気が爆発してます。その堂々した心意気、わちきにも少し分けて欲しいですよ……」


「キュイ!」


「う~ん。もしかしてミニキュイさんの真似をすれば、わちきも堂々とできるのかなぁ。……こほん。きゅい。きゅっきゅ~い。いらっしゃませきゅい~」


ラムネは既に冷静さを欠いており、解決にはならない方向性で練習を始める。

そして彼女はミニキュイの真似しつつ、お客が来店する前に挨拶を反復した。


「きゅい、いらっしゃいませきゅいー……。よし、わちき言えてる。いらっしゃいませ、あときゅいって言うだけ。そうしたら、お客さんは気にせずお店に入るから、何も心配しなくて大丈夫。うん、わちきは出来る子!」


「きゅきゅい!!」


「よーし、元気よく挨拶するぞ~。それが仕事だから。そして皆さんに役立つことで、少しでも期待に応えないと。頑張れきゅい、わちき!」


絶対に失敗したくないという気持ちばかりが膨れ上がり、ラムネは自分へ暗示をかけることに没頭する。

ただし成功させたい一心のあまり、そのせいで思考力に余裕を持たせることを忘れていた。

そうなると不意の出来事に弱くなる上、目先のことが見えなくなってしまうもの。

だからお客と思わしき男性が既に近くへ来ていることに気づかないまま、相手から先に声をかけられてしまうのだった。


「あの~すみません」


「ひゃい!?あっ、わちき!?わっ、えっと……いつの間にじゃなくて……。い、いいっいら……。あへうへ……えへへへ。きゅい、えへえへえへ」


彼女は臨機応変が極端に苦手であるため、一度(つまず)くと自力で立ち直ることは不可能だった。

まして予想に反して声をかけられたので、それだけで頭の中は大パニック状態だ。

これでは相手に不信感を持たれてしまう。


だが、不幸中の幸いながらも相手はお客では無く、制服姿からして配達員の人だった。

それでもラムネは(いぶか)し気な視線を送られてしまう始末だが、相手はいくつかの荷物を持って言葉を続けた。


「どうも宅急便です。こちらのお荷物、住所がスーパーマーケット()てになっていますが、店内の方へ持って行きますか?すみません、ここだと受け渡しが大変ですものね」


「えっ!?あう、あうあう………あぇ~っと。大丈夫です。ここで受け取って、わちきさいん(・・・)します。それだけなら、わちき一人で持って行きます!行けますので!きゅい!」


「きゅい……?あぁすみません、ありがとうございます。では箱2つと、封筒が2通で以上になります。こちらの方に印鑑かサインをお願いします」


「はい、はいはい。わちきの名前は……らむねっと」


ラムネは渡されたペンでサインするのだが、意外にも名匠(めいしょう)レベルの達筆で自分の名前を紙へ記入する。

しかも不安定な姿勢で整った字を当たり前に書くので、とても地味な事ながらも配達員は感心していた。


「字、とても綺麗ですね」


「へ?そ……そそそ、そうですか。えへへ。あ、ありありがとうござぁ……す」


「あははっ。はい、サインありがとうございます。大丈夫ですか?よろしければ、荷物をお運びしますよ」


「えっ、いえ……うん。わちき持ちます。ミニキュイは、わちきに付いて歩いてね」


それからラムネはミニキュイを自分の足元で歩かせる事にしつつ、愛想の良い配達員に心配されながら荷物を受け取った。

そして配達員との挨拶も程々に済ませた後、終始しどろもどろの対応だった彼女は店内の方へ足を進める。


「あ~、ビックリした。そういえば、配送の受け取りで何とかってフーランさんが教えてくれてたかな」


「きゅい!」


「ありがとうね。わちきが頑張れたのはミニキュイさんのおかげ。……ところで、この封筒に書いてある宛て先の名前。なんでわちきの本名なんだろ?よく見たら、箱の方もわちき()て?」


ラムネは遅れながらも、全ての配送物が自分宛てだと気が付く。

ただ差出人の名前は包装や送り状に書いておらず、誰が自分に向けて発送したのか一見すると不明だ。

まだこの異世界における知り合いは数少なく、交友関係どころか面識ある人物は片手で数えられるほど。

だから余計に心当たりが無いわけだったが、思いつく節があるにはあった。


「わちきがヒーローショーの時に悪い人を捕まえて、色々と報道されたってセブンス店長が言っていた気がする。それで、わちきの事を知ったとか?」


ラムネは自分なりに考えてみるが、すぐにそれだけでは説明がつかない点があると気がつく。


「でも、わちきは誰にも本名を教えて無いはずだし……。それなら、名前を書けるのはお姉ちゃんだけのはず。って、うん?まさかお姉ちゃんから!?」


閃きを得たラムネは慌てて通路を駆け込む。

そして、そのまま一直線で荷物をバックヤードへ運び込み、興奮する気持ちを抑えきれず力任せに封筒を破り開けた。

すると紙袋から出て来たのは数枚の手紙で、書かれている文面に軽く目を通した彼女は更に興奮する。


「うわ、うわうわうわ~!ロゼラムお姉ちゃんからのお手紙だ!なんで!?わちきのこと、報道で知ったのかな!?えっと……ふんふん。えへ、あははは」


他の荷物も姉からの送られたものだが、ラムネは最初に手に取った手紙を何度も熱心に読み返した。

それによって心に空いていた穴が埋められたような気がして、やっぱり姉が一番大好きで大切なのだと再認識する。


「うぅ、良かったぁ~……」


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