表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/75

33.野原でのんびり撮影会です

「この焼き菓子さん。サクサクのホロホロで、とってもウマウマですよ~」


ラムネは野原に座り込みながら、至福の表情でクッキーを頬張る。

彼女ら4人は今、美しく色鮮やかな花が咲き乱れる草原へ来ていた。

というのも魔神を撃退後、無事『ジャックの箱』を入手したので帰るつもりだったのだが、その帰り道の途中でラムネが一息つきたいと言い出したからだ。


彼女が最大の功労者であること、そして単純に他の3人も休憩したいと思い、適当な場所へ降り立って(くつろ)いでいる最中だ。

同じくリビィもクッキーを食べては、フーランが淹れた紅茶を飲んで(やす)らいでいた。


「はぁ~……。思っていたより早く仕事を終えられて良かったんだ。服はボロボロになったけど、フーラン先輩が裁縫で応急処置してくれて助かったんだ」


「フーランさんって、本当に器用ですし何でも用意しているんですね。まさか裁縫道具と布類まで持ち歩いているなんて驚きです」


「まさしく世話好きのおば………面倒見の良い先輩お姉さんって感じなんだ。それよりラムネお姉ちゃん、リビィとの結婚式はいつにするんだ?」


さも当然のようにリビィは結婚の話を推し進める。

その様子にラムネが驚くのも当然であって、彼女は目を丸くして咽込(むせこ)んだ。


「ぶふっ!?げほっごほっ……!えっ、あれれ!?その話って本気だったんですか!?」


「もちろんだよ。姉妹で結婚すれば、もうこれ以上ない親密な関係性なんだ」


「う、うーん?まだ色々早いというか、ちょっと踏み込み過ぎているというか。わちき、あまりリビィさんのことを詳しく知らないというか。そもそも結婚する必要が無いような……?」


決して悪い話だとラムネは思って無いが、それでも戸惑いが強いのは正常な反応だ。

なにせ一度も同意した覚えが無い。

また、あやふや(・・・・)ながらも鬼娘の言い分は正しいだろう。

しかしリビィは彼女の煮え切らない返答に満足せず、この話の落ち所を自分勝手に決めた。


「じゃあ、まずは恋人関係で我慢するんだ。それで心の整理が付いたら結婚!つまり今は婚約者なんだ!」


「それって結局は結婚することが前提じゃないですか?あとリビィさんのことは大好きですけど、わちきには結婚自体がよく分からないままなんです。だって、生涯を共にするわけですよね」


「リビィの事が好きなら細かいことは気にしなくて良いんだ。ちなみにリビィの父親は無間(むげん)地獄を治める死神大魔王だから、いつか挨拶しに行くんだ。そのためにも愛想笑いとお笑いコントの練習が必要なんだ」


「あの、さりげなく約束事が増えてないですか?結婚の話だけでも心の整理がついてないのに……。わちき、悩みが尽きないですよ」


ラムネとリビィは本物の仲良し姉妹みたいに、そして2人らしいマイペースな話題で盛り上がりながら休憩時間を楽しむ。

その一方でハイピスは落ち込んでいて、摘んだ花に向かって暗い顔で話しかけていた。


「あははは……。お花さん、せっかくですから私の信徒になりませんか?お花さんにも(へだ)てりなく幸福を授けますよ」


落ち込んでいる女性が花に宗教勧誘する光景は、恐ろしいほど怪しさ満点だ。

また、()んだ雰囲気も相まって近寄りがたい様子だった。

だが、彼女を気にかけるフーランは自然な振る舞いで近づくなり、今しがた編んだ花冠をハイピスの頭へ被せた。


「ハイピスさん。過ぎたことを気にしてばかりでは、他の信徒に落胆されますのよ」


「フーラン先輩……。ですが、私は信徒を増やせず、あまつさえ異教徒を見逃してしまった惨めな見習い女神です。もはや崇拝される価値すらない、愚かで不甲斐ない存在です。しくしくしく……」


「あざとい泣き方ですのに涙の量が本気ですのよ」


フーランは再び精神安定のハンカチを取り出し、(みずか)ら卑下するハイピスの涙を(ぬぐ)う。

それによって彼女は少し落ち着くものの、残念な思いまでは解消されなかった。

そんなネガティブ思考に陥っている彼女を見かねて、フーランは慰めの言葉を優しくかける。


「元はと言えば、彼らを見逃す条件で『ジャックの箱』を大人しく渡して貰えましたのよ。そのような経緯がある以上、ハイピスさんには何も落ち度などありませんの」


ハイピスの宗教勧誘から全力で逃げていたグループは、彼女らが魔神を倒す様を目の当たりにした後、すぐさま降伏して従順な態度になっていた。

それを機にハイピスが洗脳を施そうとした矢先のこと。

ラムネは怯える相手を見て、すかさず(かば)うように言い出したのだ。

「その箱を渡してくれたら、お家まで送ってあげますよ」と。


それから相手グループとラムネの間で話が淡々と進み、他の人が口を挟む前に取引が終わった。

ラムネからすれば対等な条件下で、家に送る代わりに『ジャックの箱』を貰ったつもり。

しかしハイピスからすれば、宝を渡して貰う代わりに見逃してあげたようなもの。

よってハイピスのみ不満が残る形になってしまい、信徒を増やすことを最大の目標にしている彼女は気に病んでいた。


「たとえ落ち度が無くとも、私の『全種族を幸福にします計画』が(とどこお)ったのは事実です。あぁ自分自身が嘆かわしい」


「いつの間に変な計画名を付けましたのね。しかし壮大な夢を持つのは結構ですけれど、だからと言って事を焦る必要は無いと思いますのよ。焦りは失敗を招くだけですの」


「そうかもしれません。ですが………」


「それに、あの場面で無理()いするものなら、きっと貴女はラムネさんに見限(みかぎ)られてましたのよ。あの子は優し過ぎるあまり、気弱になっている相手の意思を最大限に尊重しますもの」


「それは……、確かに避けたい事ですね。ラムネ様の気遣いは手本になるところがありましたし、何よりも私のせいで気分を害されるのは望ましくない事です。彼女は、私の大事な信徒の一人ですから」


「それと望み通りにならなくても、とにかく次のことを考える方が良いですのよ。そうして次々と行動を起こせば夢は実現するものだと、ワタクシが保証しますの」


フーランは大勢の人と関わりながら長生きしているだけあって、割り切る心得を持っている。

また(はげ)まし上手で、相手に活力を与える話術にも卓越(たくえつ)していた。

そんな彼女だからこそハイピスにとっては憧れの先輩であり、手本となる存在だ。

それほど深く敬愛している相手に励まされるのだから、落ち込んでいた彼女が立ち直るのは当然だとさえ言えた。


「ありがとうございます、フーラン先輩。あと花冠もありがとうございますね」


「えぇ、綺麗なハイピスさんにとてもお似合いですのよ」


そう言ってフーランは、どこからともなくカメラを取り出した。


「それでは、ハイピスさんが再奮起した証に写真に収めますの。そして写真を見るたびに元気を出して欲しいですのよ」


「ふふふっ。憧れのフーラン先輩から贈り物を頂いた日という、記念撮影でもありますね。でも、せっかくですから皆さんで撮影しませんか?」


「それは素晴らしい提案ですの。ただそうなると、セブンス店長を()け者にしてしまっているようで少し申し訳ないですのよ」


「セブンス店長は……、あとで写真の(すみ)に顔写真でも合成しておきましょう」


「バレて怒られる未来が見えますのよ」


「おそらく大丈夫ですよ。セブンス店長は見た目以上に心が広く大きな方ですから。それよりも日が暮れる前に撮影していきましょう。一枚だけでは無く、何枚でも撮って……たくさんの思い出を残しておきたい気分ですから」


ハイピスは我ながら子どもっぽいワガママを言っていると思い、照れ隠しの笑顔を浮かべる。

そんな恥ずかしがる彼女の手をフーランは取り、明るい表情で応えた。


「奇遇ですの!ちょうどワタクシも沢山の写真を撮りたい気分でしたのよ」


そして彼女ら2人は手を取り合いながら歩き、おやつとガールズトークを堪能するラムネとリビィの所へ向かっていった。

それから彼女達は4人でポーズを決めながら撮影したり、2人ペアで撮るなど野原で楽しく時間を過ごした。

やがて他にも色々なシチュエーションで撮影する遊びへ発展していき、全員が乗り気で変わった写真も撮り始める。


例えば、ラムネにとって馴染みないお嬢様演技でお茶会風景。

リビィによるイケメン男優(ふう)や死神っぽいポーズ。

わざとらしいほど可愛(かわい)く振る舞うことで、普段見せること無いギャップを演出するハイピス。

あえて体格を見せつけるようにして、美しさとセクシーな魅力をアピールするフーラン。


こうして賑やかな4人で遊べば、あっという間に時間は過ぎていく。

だから最後は夜の星空をバックに撮影した後、彼女らは多くの思い出と達成感を胸に抱いてスーパーマーケットへ戻るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ