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29.スーパーマーケットの従業員が揃えば最強無敵です

第2回・ざっくり登場人物まとめ


・ラムネ。抜けているところが多い破壊者。好きな食べ物は焼き栗と姉が作った山の(さち)鍋。


・セブンス。育ち盛りが終わっている気がする小さな大魔女。金銀財宝が好き。好きな食べ物は珍味全般とチーズ。


・フーラン。周りが変人ばかりなので常識人に収まりがち。好きな食べ物は野菜と激辛料理。


・リビィ。まだまだ育ち盛りの死神(本人談)。好きな食べ物はブドウ、シャインマスカット、ワイン。


・ハイピス。優れた美貌の持ち主だが、その思想は邪神そのもの。見習いだからなのか、気弱になった時は女の子っぽい一面を表に出す。食べる事も料理することも大好き。

ラムネが流砂に呑まれてしまう中、触手に絡まれているハイピスは必死に平静を保とうと独り言を早口で呟く。


「大丈夫です。私は見習い女神ハイピス。皆に(あが)められ、幸福を授ける救世の神。ですから、窮地に陥ろうとも慌てる必要はありません。このような時こそ、神に相応しい威厳を示し、妙案を……あひゃん…!」


ハイピスは不意に急所を撫でられた感触を受けて、女の子らしい悲鳴をあげた。

能力が通用しない以上、無事では済まされないと分かって危機感が増幅する。

せいぜい出来る抵抗と言えば、全身に力を込めて暴れようとする事くらい。

しかし暴れようとするほど触手も必死になり、更に多くの触手が彼女を縛り付けようとしてくるのだった。


「あぁ、容赦無いですね。なぜ私がこのような目に遭うのでしょうか。私は、ただ大勢の方々に幸せな人生を歩んで欲しいと願っているだけなのに。……ひぐっ……」


突如、ハイピスは涙ぐみながら嗚咽を漏らす。

そうとなれば大粒の涙を流し始めるまで数秒とかからず、一般人と同様に泣いて顔を濡らしていた。

生えている尻尾や耳も力が抜けきったように垂れ下がり、もはや抵抗する意思は完全に()がれてしまっている。


「あうぅ~……っううぅ……!ひいふっ…はぁ……ぅあぁ~…」


ハイピスは窮地で勇気が湧き立つような性根で無いため、不安定となった精神に左右されて泣くだけだった。

その様子はまるで迷子になった子ども。

そして触手が彼女の体を浸食しようとした直後のこと。

彼女の頭上で激しい掘削音が聞こえてきた瞬間、精霊の大群が地下空間へ突入してくるのだった。


「ハイピスさん!」


「ラムネお姉ちゃんはどこなんだ!?ラムネお姉ちゃ~ん!」


突入してきたのは精霊のみならず、リビィとフーランも一緒だ。

それから二人を呼ぶ声が地下へ響くと共に、飛び交う精霊は一瞬で触手を跡形も無く撃退する。

更にリビィの方は物体透過で縦横無尽に()り抜けてみせ、再び砂に埋もれかけていたラムネを回収するのだった。


「ラムネお姉ちゃん、無事で良かったんだ!リビィ安心したよ」


「はぁ~リビィさん、間一髪のところ本当にありがとうございます~。もう、どうやって暗闇の中で暮らそうかなと、脳内で検討会を開いてましたぁ~」


「その切り換えの早さは、さすがに(たくま)し過ぎるんだ」


そう呑気に話して砂まみれのラムネの汚れを落とす(かたわ)ら、フーランは(かが)んでハイピスの容体を調べる。

先程の触手による外傷は無いようだが、精神的なダメージを受けていることは彼女の泣き顔で分かった。


「ハイピスさん、相変わらず泣き虫で安心しましたの」


「はぁ……フーラン先輩、ありがとうございます。そして……ぅう、すみません。情けない所をお見せしました」


「そんなこと気にしなくて良いですのよ。ほら、まずは吸水性抜群のハンカチで涙を拭いてあげますの。おまけに精神安定の効果付きですのよ」


フーランは様々な事態を想定しており、どこからともなく花柄の大きなハンカチを取り出す。

それから丁寧にハイピスの顔を拭いてあげたとき、先ほどまで泣いていたはずの彼女は恍惚(こうこつ)とした表情を浮かべていた。

更にハイピスは湧き上がる甘い感情に酔いつつ、物欲しそうな目つきでフーランの手を握り締めた。


「あぁ、素晴らしいですフーラン先輩。貴女様の慈愛を一身に受ける度、私めはこの幸福に満ちた感情を大勢に体験して貰いたいと願うのです。フーラン先輩こそ、(まこと)の女神です」


「あらま。ハイピスさんったら、いきなり変なことを言い出すなんて。ワタクシは女神では無く、武闘派なハーフエルフですのよ」


「種族など取るに足らない事です。凛々して神々しく、大勢から尊敬される者は神です。つまり……、フーラン先輩こそ最高神!神レベルが限界突破していて、私が(もっと)も手本としている女神です!」


「お世辞も相変わらず大げさですのよ」


「世事ではありませんよ。私はただ、フーラン先輩に全てを捧げたい一心なのですから」


ハイピスは泣いていた事など忘れて、キラキラとした目で熱烈の想いを語る。

そのキラキラと輝く様は態度に留まらず、実際に辺りを照らすほど発光しているようにラムネは見えた。

また予想外の関係性に少女は驚き、それとなくリビィに問いかけた。


「リビィさん。ハイピスさんって、もしかして……」


「うん?あぁ、あれは見た通りなんだ」


「そうだったんですね!ハイピスさん自身が信仰されている神様なのに、まさかそのハイピスさんがフーランさんを信仰しているなんて驚きです!」


「えっ?いやぁ、うーん……。まぁそう見えても仕方ないんだ。でも信仰とは無関係の話で、ハイピスはフーラン先輩に助けられているから、ちょっと思い入れが強いんだ」


「それはつまり恩があるからってことで、えーっと……?わちきがお姉ちゃんを大事だと思っている、みたいな感じですか?」


「うん、多分それと同じなんだ。ただハイピスはフーラン先輩のことを(した)う気持ちが強すぎて、あんな感じに接しちゃうだけなんだ」


そう言われてみれるとハイピスはフーランからの救いを求めておらず、ひたすら尊敬しているように思えた。

そしてハイピスが相手のことを過剰に神聖化して(うやま)っているのは間違い無いのだが、フーランの方は世話が焼ける同僚の一人くらいにしか思ってない素振りだった。


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