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28.どこでも最初の手段は破壊から

ハイピスは、ハムスターと同じ大きさのラムネを肩に乗せながら瓦礫の道を強引に歩き進んでいた。

どこへ行こうとも人が住める環境では無く、自然と同化した一帯。

そんな状況下でハイピスは()ちて風通りが良くなっている塔へ足を踏み入れる。


「この辺りですね」


ハイピスは下へ視線を向けながら呟いた後、足元を丹念に調べ始めた。

彼女が探し物をしていることは分かるが、具体的に何を見つけたいのか不明だ。

またラムネは少しでも他者の力になりたいと考えて、彼女に声をかけた。


「ハイピスさん、探し物ですか?それくらいなら、わちきも手伝いますよ」


「ありがとうございます、ラムネ様。実は追跡対象の信号が、この真下から発信されているみたいなのですよ。ですので、地下通路に繋がる道があるはずと思ったのですが……」


「なるほど。それっぽい入り口が見つからないということは、まったく違う場所から地下へ行けるようになっているのかもしれませんね」


「もしそうなら困りましたね。このような地で、しらみ潰しに探索するのは困難を極めます」


「うーん。それじゃあ、ここはわちきに任せて下さい。小さな体を活かしてみせます!」


そう言ってラムネはハイピスの肩から飛び降りて、塔内で大地が剥き出しになっている床へ着地する。

そして地面を見つめながら狙いを定めた後、拳を大きく振り上げた。


「えいっ!」


ラムネが拳を地面へ叩きつけた瞬間、ドシンと重々しい打撃音が周辺にまで(とどろ)く。

合わせて彼女らが居る塔は揺れ動き、激しく(きし)みながら土埃を舞い上がらせた。

この一連の流れからラムネが力技で突破を試みている事は明らかで、ハイピスは軽く戸惑うのだった。


「あのぉ、ラムネ様?小さい体を活かすとは、隙間を見つけて通るとかじゃないのですか……?」


「んー、少し手加減が過ぎましたかね。次は半分くらいの力でやってみますね!」


ラムネは役に立ちたいという一心から目先の事に集中してしまい、ハイピスの言葉をほとんど聞き流していた。

何より自分から申し出たからには、どうしても早く結果を出したい。

そのため少しでも事態を進展させようと、二発目のパンチは先程より更に力が込められていた。


「ふんやっ!」


拳を振り落とす勢いのみで衝撃破が発生して、塔の瓦礫が外へ弾き飛ばされる。

そして拳が地面に直撃したとき、真下の地下空間はラムネが与えた衝撃に耐えきれず崩落が発生した。


「ラムネ様!?」


想定外の事態を前にして、名前を叫ぶことしかできない。

同時に彼女らが居る場所を中心に、大規模な陥没(かんぼつ)が起きてしまう。

その陥没は周りの建物を呑み込むほど巨大な穴となっており、多くの建造物が一気に倒壊して地中へ呑み込まれていった。

もしアクシデントに備えていても、抵抗や脱出する猶予を感じさせないほど全てが一瞬の出来事だ。

よって彼女らは成す(すべ)も無く陥没に巻き込まれて、あっさりと落下する羽目に遭ってしまう。


「ハイピスさん!あわあわあわあわ!?」


「ひっ、きゃあ!」


二人は悲鳴をあげながら、土砂と共に地下へ押し流される。

そうして行き着いた先は、緑色の光りに包まれた空間だった。


「うぅ~ん、はぁっ!」


ラムネは妙な掛け声をかけながら、建物の残骸と土砂が入り混じった中から自力で這い出る。

一方でハイピスは、女神の御業(みわざ)により生き埋めにされる難を逃れて、地べたに座り込む姿で呼吸を整えていた。


「けほっけほっ、粉塵(ふんじん)が凄まじいですね。髪も痛んで……あぁ、全てを放り出して入浴したいものです」


「ハイピスさん!ちょっと焦ることになりましたけど、なんとか地下へ行けましたね!大成功です!」


「え、えぇ……それはそうですね。それにしても、ラムネ様が破壊者という話について納得いきました。やり遂げようとする意思が強く、突っ走る癖があるのですね」


「わちき、もしかして何かやっちゃいました……?」


「安心して下さい。とても鬼らしい豪胆(ごうたん)な気質ですね、というだけの話です。何がともあれ、無事に地下へ辿り着けましたので、あとは獲物を追うだけです」


もはやハイピスは隠す気など無く、追跡対象を獲物だと当然のように言いきる。

そして行動を起こすために立ち上がろうとするも、彼女は思うように手足が動かないことに気が付いた。


「あら、これは困りましたね」


体が動かないのは、今の事故で負傷したからでは無い。

落ちた衝撃と薄暗いから早く気が付けなかっただけで、いつの間にか彼女は地下に潜む触手によって拘束されていた。

対して体が小さすぎるラムネは触手からは対象外だと認識されていて、自由のままだ。


「あれ、ハイピスさん!?ヌメヌメがいっぱい体に(まと)わりついていますよ!」


「どうやら大きな騒ぎを起こした事が原因で、私の能力が十分に発揮できなかったようですね。あまり警戒され過ぎると、意識を逸らさせることはできませんので」


「落ち着いて説明している場合じゃないですよ!今すぐ、わちきが助けます!そこで待って、はぅ……うひぃいっ!?」


ラムネは焦るあまり、土砂に足を取られて呆気なく転んでしまう。

しかも、そのまま地下空間に響き渡る絶叫をあげながら滑り落ちるという無様を(さら)すので、助けを期待できる様子では無かった。

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