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Act53:幼い女と黒い男


 ここはウォーターリファインの飛行場。ウォーターリファインの実に10分の1を占める巨大な飛行場は、各国からの中継飛行場となっている為に、様々な国のヴィマーナが止まっている。そこに降り立ったヴィマーナの中から二人の人間が降り立った。

「クスクス。ここがウォーターリファインか。キレーなところだなぁ」

「……」

 それは星の導きの七曜選抜試験で生き残った二人だった。幼き少女と黒髪に黒い剣を携えた無口な男の異色の組み合わせである。

「ソルさんの言ってた情報だとこの国にいるんだよねー。私たちの標的がー」

 少女と違い男は相変わらず無口で少女と会話をしようとせず、まっすぐ前を見つめている。少女はそのことをまったく気にする様子もなく続ける。

「じゃあ、さっそく正確な位置を知る為に検索でもしようかなー。携帯くらいちゃんと持ってるよね。ティキちゃん」

 少女は幼い顔に似合わず不適な笑みを浮かべた。少女は手に持っていた小型の端末を操作しはじめた。

「クスクス。見つけたよー。カフェかー」



 一方こちらはティキ達。アンクレストから戻ったティキ達は近くのカフェで食事をとっていた。ティキは弄っていた携帯をポケットにしまうと、リディア、ルクス、ヴィートに向けて話をし始めた。

「さぁ、説明してもらおうかヴィート。どこでアイツと知り合ってなんであんなことになってたんだ?」

「ちっ。まぁ今回はおめぇ等にも迷惑かけちまったからな。全部説明してやるよ」

 ティキも椅子に座る。

「まずレティンと知り合ったのは2週間ほど前だ。ネットの情報サイトで知り合って実際に会ったのは数日前だよ」

「情報サイト?」

「ああ、俺様はトレジャーハンターをしてんだけど、レティンの奴が情報サイトでお宝を見つけた節の書き込みをしててな。俺様から連絡したんだ。レティンはすぐに俺様に興味を持ち会いたいと言ってきた。俺はそん時は宝の情報を直に会って言う為だと思ってたんだ。まぁ実際そうだったんだけどよ。それだけじゃなくて、俺様に取引を持ちかけてきやがったんだ。最強の存在にしてやる代わりにお宝の発掘を手伝ってほしいとな。ところがヤツの言うとおりの場所へ行くと、ギアがむき出しで置いてあったんだ。俺様が行った時には既に発掘された後だったってわけだ。その場所でレティンが俺に言ったんだ。『あなたの望みを叶えてあげます』ってな。気がついたら俺様はギアに乗っていた。あいつに操られていた時も意識は朦朧としてたけどあったんだ」

「すべてはあなたをギアに乗せる為でしょうね。レティンは『ギアの実践データーは取れた』と言っていました。星の導きはギアを使って何かをするつもりなのかも知れません」

「何かってやっぱ戦争を始めるってことかな?」

 リディアが問いかける。

「文献によると確かにギアは800年前の戦争で使用されていました。はじめは戦争で勝つ為に使用された兵器が、やがて兵器を奪い合う為の戦争に発展していった。ギアは世界に8体存在していたそうです。今残っているのは3体だと言われています。ウォーターリファインのアンクレストにあるギア。これは驚異的な防御に特化したギア。そして驚異的な機動性に特化したギア。そしてもうひとつが通称ルシフェルと呼ばれる謎のギア」

「ルシフェル?」

「ええ、古代神話にも残る天使の名前です。ルシフェルについては全てが謎に包まれています。ただ、ひとつだけ分かっていることがあります。それはルシフェルはセイ・ユグレシア国にあるらしいと言うことです」

「セイ・ユグレシア国……」

 ティキはその言葉に驚く。そこはティキ達の最終目的地であった。

「ルクス前から聞きたかったんだけど、セイ・ユグレシア国ってどんな国なんだ?」

「それは……」

 ルクスがティキの質問に答えようとした時、外から突然異音が聞こえティキ達は外を見る。その瞬間、窓ガラスが割れ外から何かが放り込まれた。それは煙を上げながら転がっている。一番近くにいたルクスはそれが何か瞬時に気がついた。

「やばい! 伏せて!」

 瞬間、閃光と爆音と共に激しい爆発が巻き起こった。その爆発によりティキ達がいたカフェは半壊した。火薬の匂いと砂煙が漂う中、瓦礫の中からティキ達は姿を表した。

「ててて、おい、みんな大丈夫か?」

「大丈夫よ」

「俺様も」

「ええ」

 ティキの問いにそれぞれから返事が返ってくる。ティキは周りを見渡すが他の客や従業員にも大きな怪我をしたものはいないようだ。

「いったい何が起こったんだ?」

「手榴弾です」

「手榴弾んんん!? なんだってそんな物が?」

「恐らくは彼らの仕業でしょうね」

 ティキはルクスの視線の先を見る。そこには陽炎の中一歩ずつ歩いてくる男と少女の姿があった。

「なんだアイツら?」

 ティキはその姿をよく見ようと目を細める。

「クスクス……。ティキちゃんはっけーん。それじゃあミッションスタート!」

 その声がティキ達に届くか否かの細く短い時間の間に、黒いマスクをした男がティキに瞬時に詰め寄る。そして間髪入れずに黒い剣を振り下ろす。ティキは男の突然の攻撃に身を捩らせ紙一重で避ける。対象を失った剣はそのまま地面に叩きつけれる。瞬間激しい轟音と共に地面が抉られた。紙一重で攻撃を避けたティキは、手を地面につくと身体を回転させ体勢を立てなおす。

「なっ……」

 突然の攻撃にその場にいた全員が声を出すことが出来なかった。ティキ達が戸惑っていると後ろから幼い声が聞こえた。

「クスクス……。間違いないティキちゃんだー」

 全員がその声のした方を見る。

「なんなんだ。お前たち?」

「はじめましてティキちゃん。私の名前はメイリィ。そっちの彼はジルク。あ、ジルクは口を開かないからジルクに話かけても無駄だよー。何か言いたいことがあったら私に言ってねー」

 その場に似合わない幼く明るい声に全員が呑まれる。

「俺が聞いてんのはそんなことじゃねぇ。お前らが何者かって聞いてんだ」

 ティキが再び聞く。

「クスクス、私達はねぇ。七曜候補生だよー」

「七曜……候補生?」

「そうだよー。この間七曜の一人が死んじゃったんでー、その後釜を決める為の最終試験。その試験の内容はティキちゃんを殺すことー。つまり分かりやすく言えばー」

 ティキは少女の話が終わる前に少しだけ距離を取り間合いを開ける。そして、月の産物を発動する準備を整える。

「私達はティキちゃんの"敵"だよー」

 少女は不適な笑みを浮かべる。

「あ、そうそう私たちのターゲットはティキちゃんだけだから、周りのおねぇさん達は邪魔なんで彼らの相手でもしておいてくださーい」

 少女の背後から複数の足音が聞こえる。ティキ達はそっちの方を見て驚く。


 そこにいたのは、百人は超えるかというほどの一般市民。全員が全員焦点の合っていない目をしている。ティキ達がその光景に驚いていると不適な笑みが聞こえる。

「クスクスクスクス。たった3人でこの100人もの人間を相手に出来るかなー。そーれ、みなさんやっちゃってくださーい」

 それが合図となり一斉に一般市民が動き出す。ティキ以外のリディア、ルクス、ヴィートはその場から少し離れようとティキから距離を取る。すると大衆はその動きを追うかのように移動した。

「ちょっとどういうことなの? こんなのどうすれば」

「とにかく彼らを無闇に傷つけるわけにはいきません。あの目を見れば分かるでしょう。どうやってるのかは分かりませんが彼らは操られているだけです」

「攻撃してきやがったら俺様は戦うぜ」

「とにかくここは分散して逃げましょう」

 ルクスのその言葉に二人は頷くと散開した。


「クスクスクス。邪魔者もいなっくなったしそろそろはじめるー?」

「あの一般市民達は関係ないだろ。巻き込むなよ」

 ティキはメイリィに睨みつける。

「もう遅いよー。彼らを開放したかったら私達を倒すしかないよー。さぁおしゃべりはおしまいー。いけージルク!!」

 その声に反応しジルクはティキとの間合いを詰める。

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