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Act44:裏世界の試験



 ここはとある場所のとある地下にある広場。この広場はゆうに500人は収容できようかと言う広場である。そこに集まった500人ほどの人達。みな各々が自らの武器を手にし、ガヤガヤとしている。その広場の一角には扉があり、その扉はゆっくりと開かれた。

「集まってるな」

 扉から現れたのは、以前ティキ達が麻薬ソーマのアジトに行った時に現れた狂部隊”七曜”の一人であり、副リーダーであるソルだった。


 突然現れた少年の姿に、その場にいた者達がざわめく。

「よく集まってくれたな。今日は集まってもらった理由については、最初に渡した資料を見てもらって分かるように、先日七曜の一人であるゼリスムがやられた。よってその代わりの人間の補充だ。今からお前達には試験を受けてもらう。合格したものだけが、次の最終試験に進める」

「試験?」

 その場にいた筋肉質な男の一人が言った。

「質問は受け付けない。試験の内容も実に簡単だ。七曜はまず大前提として強い者が求められる。よって弱い人間は必要ない。そこでだ。これからこの場で殺し合いをしてもらう。生き残った一人が最終試験に進めることになる」

 突然のことに集まった男達は、ざわめき出す。

「それじゃあ、俺がこのドアを閉めたら開始だ」

「ちょっと待てよ」

 ソルがドアの取っ手を持とうとした時、一人の男が言う。

「殺し合いだと? 俺達は、そんなことでここに集まったんじゃねぇ。それに……、てめぇみたいなガキの言う通りにする義理もねぇぞ」

 結論から言うと、この場にいた者のほとんどが、この時の男の発言に同調したのは事実である。しかしすぐにそれが愚かな事だと、気が付かされることになる。

「そうか、ならどうする?」

「こんな場所にくるんなら、ガキとは言えそれなりの立場なんだろ? だったら話は早ぇ。お前をとっ捕まえて上に掛け合うんだよ。俺を七曜のメンバーに入れろってな」

 そう言いながら、男は両手の指を胸の前で鳴らす。

「そうか……、なるほどそれは名案だな。ただ……、お前程度にそれが出来るのか?」

「実践してやるよ!」

 そう言いながら、男はソルに掴みかかろうとする。しかしそれはどこからともなく現れた巨大な腕によって阻止される。巨大な腕は、ソルの背中から生えている。

「なん……だ?」

 男は何が起こっているのかさえ、理解できていない。巨大な腕は、男の腕を掴むと男の身体ごと持ち上げ、振り上げ前方に投げ飛ばした。投げ飛ばされた男は、後方の壁まで飛んでいき、壁にぶつかって気絶した。それを見た他の男達は、息を飲み、場は一瞬にして沈黙が支配した。

「他にあの男の案に乗ってくる奴は?」

 ソルの言葉に対して誰も答えるものはいない。

「いないなら、開始だ」

 そう言いながらソルは、ドアを閉めた。その瞬間、広場からは地響きが起こりそうなくらいの、大きな声が木霊する。それは、雄たけびであったり、叫び声であったり、断末魔であったりと様々だ。しかし、ソルの予想とは裏腹に、そんな大声も数分も経たない内に消えてなくなった。


 ドアの反対側にいるソルには、中で起こっていることを確認はできない為、再びゆっくりとドアを開け確認する。そこにはソルの予想を遥かに上回る光景が広がっていた。


 約500人もいる大の男達が、全員床に這いつくばって息絶えている。その光景はまさに地獄絵図。惨劇。そして、倒れている男達の遥か奥にいるのは、黒い髪に黒い剣を持った一人の少年だった。少年は、澄ました顔で、ソルの方を見ている。ソルは、その少年の方へと歩み寄っていく。

「キミがやったのか?」

 ソルの問いかけに、少年は無言で首を縦に振った。

「そうか、フフフ……お前は合格だ。最終試験へと移行してもらおう」

 ソルが最終試験について、説明しようとした時、二人の頭上から不気味な啜り笑いが聞こえてきた。その声に驚き二人は頭上を見る。

「クスクス、私も仲間にいれてー」

 そこには天井からぶら下っているまだ見た目幼い少女がいた。ソルは正直驚いていた。この少女の存在にまったく気が付かなかったことに。気配を完全に殺し、自分の頭上にいた少女。

「やるじゃないか。いいだろう。お前達二人共合格だ。最終試験について説明するぞ。最終試験は……」








 ここは、ウォーターリファリンという国名を持つサガルマータ。別名”水の都”。遥か上空に存在し、雨雲よりも遥か上空に存在するサガルマータには珍しく、水を基調した国家である。


 遥か昔、各地にてサガルマータを建設していた時の話である。生活用の水を貯め、使用するために貯水用のサガルマータが必要だった。このサガルマータの存在によって、長期間に及ぶサガルマータの建設効率が飛躍的に上がったのは言うまでもない。そしてサガルマータの建設が終わった頃、今度はこのサガルマータにて都市の建設が始まった。当時使用していた水と循環システムはそのままに、水の上に都市を作る形で。


 そして、ウォーターリファリンは世界に誇る水の都として、景観都市として、世界中に名を馳せることになった。それ故に、ここには多くの人が集まる。その為、多くの情報が行きかう国でもある。ティキ達がまずここに降り立とうとしたことになんら不自然はない。


 ウォーターリファリンに降り立ったティキ達は近くの喫茶店へと入る。とりあえず水分補給とこれからの動きを決める為だ。

「さてティキさん、これからどうしますか?」

「セイ・ユグレシア国へと行く前にやることがあるな。まずは新しいリバティーの購入、そしてその為の資金集め。それにこれは俺個人の我侭だけど……リクに会いたい」

 その言葉にリディアとルクスは黙り込む。リクが置かれている状況を考えれば、ティキが会いたいと思うのは当たり前のことである。国に利用され、ボロボロになっているであろうリク。星の導きという巨大な組織を一人で相手していると思うと、ティキはすぐにでもリクに会いたいと思っていた。

「ティキ……」

「でも今、リクは消息不明なんだよな?」

「ええ、リクさんは政府関連の施設での、七曜の一人との戦闘後に行方が分からなくなっています。動向も分からず、痕跡もない」

「そうか。……まぁ、今出来ることはとりあえず金稼ぎだな」

 ティキ達の席にそれぞれ頼んだ飲み物が、置かれた。

「でもどうします。有効な金策でもあるんですか? 国の援助金は対象外ですよね?」

 ルクスはティキの方を見る。

「ああ、悪いけど俺はそれだけは嫌なんだ。それを受けてしまったら、俺の今までの人生が意味を失くしてしまう」

「金策か。……あっ!」

 リディアは突然なにかを思い出したような声を出す。

「どうしたリディア?」

「思い出したよ。あるじゃんあたし達にピッタリのお金を得る手段が」

「え? どんなことだよ?」

「前にプレシデントさんから言われたでしょ? ”共同討伐依頼”」

「あっ! そうか、ゴタゴタしてて完全に忘れてたよ。そういえばそんなのがあったな。確か、オームを狩ってそれで出てきた月のカケラを国に売る仕事だよな?」

「うん、この仕事なら同盟国のどこでも買取はしてくれるしね。幸いこの国も同盟国だし、月の産物を持つあたし達三人がいれば、案外簡単に月のカケラも手に入るかも知れないしね」

「月の産物で思い出したけど……」

 ティキが突然なにかを思い出したかのように言う。

「リディアの月の産物……発動しなかったんだよな?」

 ティキの言葉にリディアは少し悲しそうな表情を見せた。

「うん、あれから何度か試して見たんだけど、一向に発動しないの。こんなこと初めてだから原因も分からなくて」

 ティキとリディアの会話を聞いていたルクスが、横から会話に入ってくる。

「前にアイシスさんに聞いたんですが、月の産物が発動しないのには、いくつか理由があるみたいです。その中でも主な理由は、月の産物が持ち主の心に呼応出来ないことによって起こるそうです」

「呼応できない?」

「はい。例えば、戦いによって完全に負けを認め心が折れてしまった場合。月の産物は心に忠実に呼応しますから、戦意を失えば月の産物の発動は非常に困難です。後、なにかに心の呼応が邪魔されたり、分散されたりしてても発動できません。だから、二つの月の産物を同時に扱うことは、相当訓練を積んだ人でも難しいんです」

「でも、それだと今も発動できないのはおかしいよね?」

 リディアが最もな質問をした。

「ええ、確かに。後、ひとつ原因と考えられる可能性のあるのが、そのリディアさんの抱えている奇妙な生物です」

「え?」

 ルクスの言葉にティキとリディアは反応する。

「リディアさんの話だと、確かその奇妙な生物は月のカケラが変化してできたって言ってましたよね? もしかしたら、その生物は月の産物と同等のモノで、その奇妙な生物の所為で、発動できないのかも知れませんよ? リディアさんに懐いているのは、リディアさんと心の波動が合っているからかも」

「タッピーがあたしの月の産物の発動の邪魔になってるってこと?」

 ティキとルクスは一瞬固まる。しかし、ティキがリディアに質問をした。

「……なんだよ。タッピーって?」

「ああ、この子の名前。ずっとタタタタッタって『タ』の一言しか言わないから、タッピーって名前付けたの。可愛い名前でしょ?」

 そう言いながらリディアはタッピーの頭を撫でる。


 とその時、ルクスの携帯が鳴った。ルクスは携帯を手に取ると、ティキとリディアに外に出て話してくると伝えて外に出て行った。そして、ルクスが出て行ったのとほぼ同時にティキはトイレに立った。そして、座席にはリディアとタッピーだけが残った。


 リディアが、飲み物を飲みながら二人が戻るのを待っていると、一人の男が声をかけてきた。

「よー、お姉ちゃん。ひとりー? 良かったら一緒にお茶でもどう?」

「え?」

 リディアは、突然見知らぬ男に声をかけられ戸惑った。

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