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Act29:消えた男


「ティキさん、見えてきましたよ。あそこがイルマシア国です」

 ティキとルクスは依頼をこなす為、リバティーに乗ってイルマシア国へと向かっていた。

「ホラ、見てください。上空からだと良く分かるでしょう? イルマシア国のすぐ隣にあるあの国がディセルパス国です。世界でも珍しいサガルマータ同士で橋が架かっている国です。イルマシア国とディセルパス国は姉妹国と呼ばれていて、ディセルパス国はリゾート地なんですよ。今日は平日なのでそんなに人はいませんが、休日は人で賑わう場所です。依頼が終わったら帰りにでも寄りましょうよ」

 ルクスがティキに説明しているディセルパス国とイルマシア国はサガルマータ同士の距離が非常に近く、世界でも珍しいサガルマータ同士で橋が架かっている国である。ディセルパス国は国土が小さく自国だけでは、経済発展が不可能に近いのだが、幸い隣に比較的大きめのイルマシア国があるおかげで、リゾート地として潤っている。この星ルーファでサガルマータが橋同士で繋がっているのは五つだけである。

「それで、依頼者はなんて?」

「ん? ああ……」

 ティキはルクスに聞かれて、今回の依頼者のことを思い出しながら、ルクスへと説明しはじめた。


 それは今から数時間前、ティキは手紙に書かれている住所へとやってきていた。

「ここだな。すいませーん!」

 ティキは門の前から、中にいるであろう人に向かって呼ぶ。家の中にいた人はその声に気がつき、出てくる。

「はい?」

「あ、えっとヘレイムさんの家ですよね?」

「……はい」

「俺は、依頼を受けて来たルティーをやってるティキと言うものです」

「あー、わざわざ来てくださったんですね。どうぞ中へお入りください」

 ティキは依頼者に家の中へと招きいれられると、それに従い中へと入っていった。家の中へと通されたティキは、椅子へ座るように言われ椅子へと座る。そして依頼の内容について話を聞き始めた。

「えっと、依頼の内容は息子さんを探して出してほしいってことですよね」

「ええ、息子はジャーナリストをしていまして、仕事でイルマシア国へと行ったんですが、仕事を終え乗ると言っていたヴィマーナが墜落してしまい、息子の消息が分からなくなってしまって……」

 ティキは依頼主であるヘレイムの言葉を聞きながら、あることを思い出していた。それは、ルクスの特訓の最中にアンクレストで見つけたヴィマーナの部品と思われる残骸。あれは後の調査でイルマシア国を出国したヴィマーナの部品であったことが判明している。死者200名以上を出した大事故だが、原因は現在調査中だということ。このヘレイムの息子もそのヴィマーナに乗っていたということだ。

 しかし、ティキはヘレイムの話を聞きながらも少し違和感を感じていた。それはヘレイムが息子を失ったにしてはあまりにも冷静すぎるからだ。まだ事故から数日しか経っていない。普通ならもっと取り乱してもいいくらいのはずだが……。

「回収された遺体の中に息子さんの遺体はなかったんですか?」

 その言葉にヘレイムは少し言葉を濁す。

「……ありませんでした。それに実は事故のことを聞いたその日の夜、息子から電話があったんです」

「え? なんて?」

「『俺は生きているから安心しろ。けど今は事情があって帰れない』と。ただそれだけを言って電話は切れました」

「……搭乗者リストには息子さんの名前は?」

「ありました。でも電話をしてきたということは……生きているはずです」

 ヘレイムの話を聞いたティキは頭の中で今得た情報を整理していた。

「分かりました。とりあえずイルマシア国へと行って、手がかりを探してきます。なにか分かればまた連絡します」

 そう言うと、ティキはヘレイムの家を出て行った。

 

 そして、時は再び戻りティキはイルマシア国へと降り立ったところだ。ティキとルクスはリバティーを降りると、一番近くにあった街へと入る。

「つまり、搭乗リストには載っていたはずの息子さんは、離陸時にはヴィマーナには乗っておらず、そのヴィマーナはイルマシア国を出国した後、原因不明の出来事により墜落し、死んだと思っていた息子さんから電話があったが、消息は不明……というわけですね」

「ああ、そうだけどなんでルクスがついて来るんだ?」

 すると、ルクスは突然立ち止まりカバンから資料を出し、ティキに見せる。

「……ヴィマーナ墜落事件調査書?」

 ティキはその資料に書かれている一番上の部分を読んで見せた。

「そうです。先日墜落したヴィマーナの調査を任されたんですよ。イルマシア国発のヴィマーナなので、イルマシア国が調査するんですが、リシュアレス国の者も搭乗していたのでリシュレアス国に住んでいた被害者の調査と原因究明のお手伝いが仕事です。つまりティキさんと同じような仕事です。同じ仕事だったら別々にするより、二人でやったほうがはかどりますからね」

「なるほど、まぁ俺は別にいいけどな」

「あー、そうそう。仕事の前にせっかくこの街に寄ったんだからティキさんに会ってほしい人がいるんです。というか、その人に会ってもらうためにわざわざこの街で降りてもらったんですが」

「会ってほしい人?」

「そうです。今、ティキさんの月の産物を預かってもらってる人です」

 その言葉にティキは驚いた。無理も無い。月の産物はそれ一個で兵器にも匹敵するほどの威力を発揮する。本来なら簡単に他の国の人に渡してもいいものではない。下手をすればそれが原因で戦争が起きる可能性もある。

「おまっ! 預けてるって他の国の人に渡したのか!?」

 ルクスはティキの焦り様を見て笑っている。

「はははっ……、大丈夫ですよ。ティキさんの月の産物を預けている人は、『産物の師』です」

「え?」

 

 産物の師……月の産物を製造可能な技術を持つ者のことである。月の産物の製造方法は国家機密で一般には一切知られていない。そんな中、月のカケラより月の産物を製造可能な技術を持つ者が、公式には世界で10人ほどいると言われている。(ただし、月のカケラの性質である、人の意思に反応するということは広く知られているため、一般でも比較的正解に近い仮説は立てられている。国が製造技術を隠している理由はくどいようだが、月の産物はそれ一個で兵器にも匹敵するためである)

「ティキさんの持っていた月の産物は、彼女が作ったやつのはずです。国で資料を見せて貰ったので間違いないと思います」

 ティキは、月の産物をリシュアレス国から貰っていて、ティキ自身は月の産物の製造者にあったことはなかった。

「なんのために預けてあるんだよ?」

 その言葉にルクスは口の両端を上げる。

「もちろん、月の産物のパワーアップです。ティキさんは、僕の特訓でかなり基礎的な強さはあがったはずです。それに合わせて月の産物もグレードアップが必要と思いまして」

 その言葉をルクスが言い終わるかどうかという瀬戸際、突如ルクスの頭を軽い衝撃が襲った。それはティキがルクスの頭を軽く殴ったからであった。

「ちょっと……いきなり何するんですか?」

「あはは、ごめんごめん。なんか特訓のこと思い出したらムカツイきて……」

 どうやらティキにとってあの特訓はトラウマ以外の何者でもないようだ。

「じゃあ、さっそく行きましょうか」

 そう言って、ルクスはティキを産物の師の元へと案内を始めた。ティキも月の産物の製造者には少し興味があったので、大人しく連れて行かれることにしたようだ。


 ――同時刻……ここは、遥か階下アンクレスト。

 月のカケラの粒子が、自ら光り輝き渦巻く。それはこの世のものとは思えないくらいの美しさを秘め、そして静かに鼓動する。

 ティキ達がサガルマータで動いている頃、アンクレストにて歴史上かつてないほどの大きな力が動いていた。そして、これから起こるこの出来事はティキ達の今後の運命を,大きく変える出来事となる。




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