表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/56

Act23:復讐者の信念

 そこはとある国の主要人物の家。成り上がりの金で手に入れた豪邸で多くの財産が詰まっている。その家の前に現れたのは、短髪で青色に染まった髪を持つ大柄な男。彼の目的はこの家を破壊すること。家の持ち主がこの場にいようといなかろうと関係ない。ただ破壊するのみ。それが与えられた任務を確実に遂行する”七曜”のやり方。


「ここが次のターゲットか。まったくどいつもこいつも権力に授かった金ででけぇ家を建てるんだな」

 男はそう言うと正面にあるドアを蹴破った。蹴破られたドアは地面をエグりながら飛んでいく。それだけでどれだけの勢いで蹴られたのかは容易に想像できる。そのドアの行方を目で追っていた男は蹴破られ地面へと落ちたドアの先にある足を見つけた。

 男は足から頭に沿ってゆっくりと目線を上げる。目線を上げていくとそこにいるのは逆立った赤い髪一人の男だといことに気がつく。男は目の前にいる男の顔を確認すると言う。

「なんだてめぇは? この家の人間か?」

 目の前にいた男は答える。

「違う。この家にはすでに誰もいない。重要な資料等もすでに持ち出された後だ」

「……へぇ、俺がここに来るってことが分かっていたのか? だとしたら妙な垂れ込みってのは正解だったのか。それじゃあお前が俺達を狙ってるって奴か?」

「そうだ」

「わからねぇな。一体どんな理由があって俺達を狙ってる? 俺がなにかしたか?」

「分からないだと? よくそんなことが言えたものだ。散々人を殺しておいて」

「それは任務の邪魔になるんだから仕方ねぇことだろ」

 目の前にいる男は青髪の男を鋭い目線で睨みつける。

「貴様らの勝手な任務でどれだけの人間を殺したんだっ!」

 青髪の男は笑みを浮かべて言う。

「そんなの覚えてるわけねぇだろ。お前は自分が殺した虫けらの数を覚えてるのか?」


「……。悲劇の第九候補生のことを知っているか?」

「第九候補生? ああ知ってるぜ」

「その事件に関わった二人組の男女の行方を知ってるか?」

「そいつぁしらねぇな。残念だが俺が関わったのは作戦実行の許可だけだ。ってかつまり復讐か? ありゃー惨劇だったらしいからな。なんせ施設の人間を皆殺しだ」

「……あそこには俺の大切な仲間がいた。それを貴様ら星の導きが全てを奪ったんだ」

「そいつは気の毒だったな。まぁ人生、生きてりゃそういうこともあるさ」

 その言葉に男は目をギラギラさせる。

「俺はお前達を許さない。心に刻め俺の名前は”リク”。お前を冥府に送る者の名だ。あの世で仲間達に土下座しろっ!」



 その言葉が合図のようにリクは青髪の男に突進していく。そして右拳を握り締めると青髪の男の顔面目掛けて放った。だが、その拳が当たる事は無く空を切る。拳を横に避けた男は今度はリクの顎に右拳を繰り出す。だが、それもまた空を切る。それを隙と判断したリクは開いていた左手で男の顔に殴りかかる。だがそれは男の左手で止められた。その瞬間二人は再び距離を取る。

「へっ!」

 青髪の男は笑みを浮かべると、一瞬で間合いをつめる。それに対応してリクは後ろへと下がる。だが逃がすまいと男はさらに距離をつめる。後ろへと下がり続けたリクは後ろにあった豪邸の壁に阻まれる。それを確認するために一瞬目を離した刹那、男の拳がリクの身体を捕らえる。

 リクは凄まじい音と共に家の壁を破って家の中まで吹き飛ばされる。相当な威力で殴られたのは言うまでもない。崩された瓦礫が軋み音を立てる。

 自らが破壊した穴から青髪の男が中に入ってくる。

「どうした? 威勢がいいわりにはたいしたことねぇな」

 男は穴のところから中を見渡すが、どこにもリクの姿を見つけることができなかった。だが戦闘経験の豊富さが幸いしたのかそれとも本能的に殺気を感じ取ったのか上を見る。そこには上から両の拳を握り迫ってくるリクの姿があった。間一髪でそれに気がついた男はそれを見事に避けると、今度はリクの身体目掛けて蹴りを繰り出した。だがリクは驚異的な反射神経で後ろに下がり避ける。

「ちっ。すばしっこさにだけは自信があるようだな。だが逃げてるだけじゃ俺は倒せねぇぜ」

 男の言葉にリクは何も返さない。

「ふん、シカトかよ。まぁそれならそれでいいけどよ。そっちがそのつもりなら俺はお前を逃がさねぇようにするだけだ」

 そう言うと男は左腕に付けているブレスレットを右手で握り締めた。握り締めた手からは水がだんだんとあふれ出ている。

「そういや俺の自己紹介がまだだったな。俺の名前はウォルス。七曜の一人。属性は”水”」

 それを言い終わると同時にウォルスは握り締めていたほうの手をリクのほうに放った。その手からは水が飛ばされリク目掛けて飛んでいく。咄嗟の出来事にリクは動き出すのが遅れてしまいその水を身体に浴びてしまった。

 その瞬間リクは身体に重みを感じた。まるで重しを身体に付けられたかのように。

「……これは?」

「驚いてくれたか? これが俺の月の産物”マルエ”だ」

「月の産物? これが?」

「どうやら知らねぇようだな。月のカケラはただの石ころじゃねぇ。人の意志に反応する特異な性質を持っている。人の意志に反応し月のカケラは姿を変える。昔は月のカケラで願い事が叶うと思われていたらしいが、願いは叶うんじゃねぇ。月のカケラが人の意志に反応し叶えるんだ」

 リクはウォルスを睨みながら話を聞いている。

「俺は月のカケラを使い水を自由に操れる力を手に入れたいと願った。俺の意志の強さに月のカケラが反応し、そして月のカケラはこの月の産物を創り上げた。俺はこれを使い水を自由自在に操ることにが出来る。今てめぇに放った水は重水と呼ばれる通常の水よりもはるかに重い水。お前の衣類は水を吸い込みお前は身体が重くなったように感じるはずだ」

「七曜は全員がそういう特殊な属性使いなのか?」

 リクは身動きがうまく取れない身体でウォルスに聞く。

「ああ、まぁお前にはもう関係ないがな。中途半端な力は己を早く滅ぼすだけだと痛感して死ぬがいい」

 

 ウォルスは再び間合いをつめる。リクは動きを取りづらい身体で応戦する。

「動きが鈍ってるぞっ! そんな身体でどうしようってんだっ!?」

 ウォルスの拳がリクの顔面を捕らえる。殴られたリクはバランスを崩し倒れる。倒れたリクを見てウォルスはまるでボールを蹴るかのようにリクの身体目掛けて蹴りを入れた。その衝撃でリクの身体はさらに先まで飛ばされる。家の中を突き抜けなんとか止まった身体をリクは必死に起こす。

「ちっ」

 口の中を切ったリクは血反吐を地面へと飛ばす。

「俺の攻撃を何発も喰らってまだ生きてられるなんてタフな野郎だ。俺は少しばかりお前を甘くみていたようだ。だが、お前はここまでだ。大人しく死ね」

 リクはダメージを負った身体でウォルスを睨みつける。

「俺もお前の力を見くびっていた。だからこんな下らん攻撃を喰らってしまった。だがその言葉をそっくりそのまま返すぜ。お前はここで終わりだ」

「へっ。そんなボロボロの身体で何が出来るってんだ?」

「出来るさ。いや、お前らを始末するためならなんだってするさ」

 そう言うとリクは右手を突き出す。その姿を見ていたウォルスをリクのその動きに疑問を持つ。

「アルタイルっ!」

 叫びにも似たその言葉と共にリクの右手を布のようなものが覆っていく。そしてそれはやがて形となり姿を現した。それは、拳に巻かれた紅い銃だった。ウォルスはそれを見て咄嗟に感じた。それが月の産物だということを。

「ザリっ!」

 リクは再び叫ぶ。その瞬間その紅い銃の銃口から目にも止まらぬスピードで弾が飛び出した。それは、ウォルスの肩を撃ち抜いた。ウォルスはそれが月の産物だとは気がついてはいたものの、リクの予想を超えた攻撃スピードについていけなかったのだ。

 肩を撃ち抜かれたはずのウォルスだったが肩には傷跡がなかった。ウォルスはそれを疑問に感じたが、その瞬間身体の自由が利かなくなったのを感じた。まるで自分の身体ではなくなったかのように完全に脳の伝達回路と身体が切断されたのだ。

「ぐっ、これは……」

「これが俺の月の産物”アルタイル”。……お前はもう動けない」

 リクの持つ月の産物アルタイル。その銃の色はリクの怒りそのものの色のように、鮮やかにその鈍い輝きを放っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ