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Act22:復讐者は眠らない

 ――そこはとある国のストラム。

 

 洞窟を改造し入り組んだ地形を持つ奥にいるのは、黒い服に身を包んだサングラスをかけた男だった。手には強固そうなアタッシュケースを持ってタバコを吸っている。そんな男の前に一人の男が現れた。

「少し遅刻ですよ。私も命があぶないんですから時間は守ってください。……リクさん」

「許容範囲だ」

 そこに現れたのは、以前星の導きのアジトを爆破しようとしたティキの昔からの旧友のリクだった。

「これが星の導きの情報です」

 そう言うと男は、アタッシュケースをリクに渡した。それと引き換えにリクは持っていたケースを男に渡す。リクの持っていたケースはお金のようだ。

「まいど。ところでリクさん、本当に闘るつもりですか? 相手は星の導きの狂戦士と言われた七曜ですよ。いくらリクさんとはいえ……」

「……関係ない」

 リクの表情は怒りに燃えていた。それは以前とは変わった髪形にも起因してるのだろうか。リクの覚悟が以前にも増したことを意味していた。その髪は怒りの炎のように少し逆立ち、赤みを帯びている。それはまさに鬼の形相。怒りと復讐の化身。近くにいた男はそのあまりもの気迫に鳥肌が立っていた。真に恐怖を感じるとはこのことだろうか。男は、腰を抜かしてしまった。

 

 リクは男から渡されたケースを持ってその場を後にする。しばらく入り組んだ道を歩いていくとリクの前に数人の男が立ちふさがる。

「よう、にいちゃん。ここを通りたかったら通行料を置いてきな」

 それはこの辺りを縄張りとしている不良達だった。元々ストラムはサガルマータに住めなかった者達が住む奈落の底。そこには法を無視した輩が多く住んでいる。入り組んだ地形もその助けとなっているのかストラムのほとんどはまさに無法地帯である。

「おー。なんか金の詰まってそうなカバン持ってんな。おい、にいちゃんそれ置いてきな」

 不良の男の言葉にリクはケースを放す。地面に落ちたケースを取ろうと男がケースに近づいた瞬間。額に冷たいものを感じた。男が自分の額にあるものを見ようと目線を上に向ける。そこには銃の銃口が額についていた。男は驚き身体を後ろに引こうとした。その瞬間、その銃を持っていたリクの引き金が引かれた。

 銃声と共に男は後ろに飛ばされえる。額に撃たれたはずだが、弾の跡もなく男は死んではいなかった。しかし、男は身体をまったく動かすことはできなかった。それを見ていた他の男が言う。

「な、なんだよ。あんたその……紅い銃は?」

 その言葉が合図のように、リクの持つ銃の銃声が空に響いた。






 

 そこは、サガルマータにあるとある国。リクのいたストラムからはそう遠く離れてはいない場所。そこにある割と大きな豪邸のような建物。その正面玄関の前にいる一人の男。短髪で青色に染まった髪を持つ男は左目には不思議な模様のタトゥーを施している。大柄な身体に筋肉質で見た目からして力がありそうだ。

「この場所で間違いなさそうだな」

 男は手に持っていた紙を見て確認する。そして、その紙をクシャクシャに丸めると地面へと捨てた。よく見ると男は拳になにやら武器のようなものを付けている。男はその拳を振り上げると、正面の玄関に向けて放った。


 その衝撃で玄関は凄まじい音と共に破壊された。そのことで警報が鳴り複数の男が銃を持って現れた。

「何者だっ!? ここがどこか分かっているのかっ!?」

 中から出てきた男達は全員が玄関を破壊した男に銃を向けている。銃を向けられた男は、少しばかりの笑みを浮かべて問いに答える。

「ああ、国のお偉いさんの家だろ?」

 男は一歩前へと歩み寄る。その行動を見ていた銃を持つ人間が言う。

「動くな! 動くと発砲するぞ!」

 だが、男は歩みを止めることなく進んでいく。それを見た銃を持つ男が玄関より歩んでくる男に発砲する。銃声と共に、弾は発射され男目掛けて飛んでいく。

 

 だが、その弾が男に当たることはなかった。男は目にも止まらぬはずのその弾を素手で受け止めたのだ。親指と人差し指の二本だけで。その光景に驚いた銃を持った男達は一斉に発砲する。凄まじいまでの発砲音と硝煙で辺りは埋め尽くされた。

 銃を構えていた者達全員が弾を撃ちつくし呆然とする中、硝煙の隙間からそのありえない光景を目の当たりにして男達は身体を動かすことさえ出来なかった。

「どうした? もう終わりか?」

 銃を向けられ弾を何発も撃たれたはずの男は、その弾を全て素手で捕り自身の身体には一発もかすり傷さえ作らず平然と立ち尽くしていた。銃を構えていた男達はそのあまりの光景に銃を捨て逃げ出そうとする。唯一の武器である銃が効かなければどうしようもないのだから逃げるしかない。

「へっ! 一人も逃がすかよ」

 逃げ惑う人達の背後から男はものすごいスピードで迫り、次から次へと逃げる人々を惨殺していく。

 

 男がその場にいた人間全てを冥府へ送るのに3分とかかりはしなかった。男の周りには無残にも引き裂かれた男達が散らばっていた。

 男は目の前の家に火を放つと、その場所から出てくる。炎は男を始末しようと銃を持って出てきた男達と豪邸を焼いていった。まるで地獄に咲く大きな花のような業火を醸し出して。男はポケットから携帯電話を取り出すと、電話をかけ始めた。

「よう、俺だ。任務達成だ」

『ごくろう、次の依頼はまたこちらから追って連絡する。それと、妙な垂れ込みが入っているから気をつけろ』

「妙な垂れ込み?」

『我々”七曜”を始末しようと狙ってる奴がいるらしい。まだ不確かな情報だが一応警戒してくれ』

「わかった。だが、本当にもしそんな奴が目の前に現れたらどうするんだ?」

『その場合は各々の判断で始末してくれたまえ』

「へっ、じゃあ警戒もなにもねぇじゃねぇか。邪魔する奴はぶっ殺せ。任務を完璧に全うする為には多少の犠牲は仕方ない……だろ?」

『……その通りだ。では』

 電話を終えると男は携帯を再びポケットにしまいその場から離れていった。






 暗い空間にモニターが円形状に複数映し出されていた。そこはどこかは定かではないがあらゆる技術が集められている感は否めない。モニターには、年齢を重ねていそうな老人達が各モニターに一人ずつ映っている。中央にはプレシデントが一人立ちモニターに映っている老人を眺めていた。

『最近星の導きの活動が活発化してきたな。この二週間だけで同盟各国の主要人物の家や施設が破壊されている。ここ数十年、極力お互いに大きな争いは避けてきたのにどういうことだ?』

 短い髪に黒髪の老人が言う。

『決まっている。これは星の導きによる”宣戦布告”だよ』

 その横のモニターに映っている眼鏡をかけた老人が続く。

『再び戦争を始めようと言うのか?』

『それはないでしょう。戦争をしてもなんのメリットもない。星の導きの目的は戦争ではなく、月を復活させる活動を辞めさせることでは?』

 全ての老人達の中でも1番若い感じのする男が言う。

『いずれにしてもこちらも手を打たなくては』

 最初に話を始めた老人が、他の者に聞く。

『だがどうする? 月のカケラを手に入れるために共同討伐依頼を発動してしまい、月の産物を持つ者はほとんどが動けない状態だ』

『例の兵器の様子はどうだ?』

 それを聞いていたプレシデントがモニターを見ながら言う。

「今は使えません。他を頼るしかないですな」

 プレシデントは、直立の姿勢で答える。どうやらここに映っている老人達は相当な権限を持っているらしい。

『タイミングがあまりに悪すぎる。誰かいないのか? 星の導きの活動を止められる者は?』

「……”悲劇の第九候補生”での生き残りがもう一人います。彼なら星の導きに強い恨みを持っているはずです。ただ、恨みが強すぎてやりすぎてしまう可能性も。そうなれば逆にこちらからの宣戦布告となりかねない。今は、星の導きとの抗争は極力控えるべきでは?」

 プレシデントが老人達に提案する。

『いや、その者を使おう。一時的に囮にでもなれば良い。後はこちらでなんとかしよう。とにかくこちらの準備が整うまではその者を利用し星の導きの動きを止めてもらうのだ』

「そう仰ると思いすでに手は打ってあります」

 プレシデントが一礼する。

『してその者の名は何と言う?』

 プレシデントは一瞬沈黙すると、唾を飲み込む。そしてその者の名前を挙げる。

「……”リク”という者です」



 今夜は晴天。月のないこの世界の夜はあまりにも……暗い――。

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