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Act2:複雑な目的

 ――ルティー。



 そこには、様々な依頼が舞い込んでくる。金さえ払えばどんな依頼でやる。それがルティーの方針だった。数々の依頼、そのほとんどが警察を頼りに出来ないような依頼だ。

 この星”ルーファ”にはもちろん、国が存在する。そして、その中心である政治が存在し、それに従事し人の治安を守る警察なども存在する。国は島ごとに分かれている為、政治は島ごとに違う。島は主に地上から伸びた土台の上にあり、そこは天空の楽園という意味から”サガルマータ”と呼ばれている。サガルマータは、ルーファに100以上存在している。そして土台の数だけあるサガルマータの中層に存在するのが”ストラム”という場所である。それよりもさらに下いわゆる土台がある地上は、アンクレストと呼ばれる場所で人間はおろか生物すら一切存在していない。



 なぜ生物が一切存在していないのか。それは、遥か昔起きた大戦争で起こった”月の裁き”。その出来事により破壊された月の破片が地上に降り注いだのだ。そして長い年月をかけ月の破片は粒子となり、地上を太陽の光がほとんど届かない霧が覆い尽くす暗闇の世界へと変えた。地上で暮らしていた生物達は地上を追われ、霧がなく太陽の光が届く遥か上空に、サガルマータを創った。


 ティキもそんな地上から伸びるサガルマータの国の一つである、リシュレシアという国の街に住んでいた。そして、そこでルティーを営んでいた。ティキの目的は月の復活。月の破壊により、ルーファの重力バランスが崩れ、星が崩壊への道を歩んでいるのだ。それを救うには、月を復活させるしかない。そして、その目的のためにルティーを開いて、情報を集めていたのだ。



 そんなルティーに現れた一人の男。見た目には、特に特徴のない黒髪の普通のどこにでもいるような男だ。ティキは自分が椅子に座り、男に立たせたまま男の話を聞いている。このルティーには椅子は一つしかないので、必然的にティキが座る形となるのだろう。

「それで? 依頼はなんだ?」

「ああ、俺の家の近くで暴れまわってる暴走族の奴らを追い払ってほしいんだ。金なら出す」

 男は机の上にカバンを置き、中身を開けた。そこには大量の現金があった。軽く500万オーラムくらいはあるだろうか。(オーラムはこの星の共通通貨。aurum。略称はAU)

「お前、これ……」

 ティキは大金を目の前にして目を丸くして驚いている。

「頼む。奴らを追い払ってくれたらこれを全部やる。だから、奴らが俺に近づかないようにしてくれ」

 ティキは男のほうを見る。そして、椅子から立ち上がると男の肩を掴み男を移動させた。移動させた先は、椅子。そして、ティキは再び男の前に立つ。

「いやー。失礼しました。このルティーを営むティキ。お客様の依頼にはどんな内容でも快く引き受けさせていただきます。あ、お茶も出さずに失礼しました。今、お持ちしますんで」

 どうやら、お金に釣られたようだ。単純というか非常に素直で分かりやすい。ティキはお茶を男に出すと話の続きを始めた。

「それでえーと、お宅の家の近くで暴れまわってる暴走族を追い払えばいいんでしたっけ?」

 ティキの顔はとてもニコニコしている。

「あ、ああ。奴らなんだか知らないが急に現れて、俺の家の周りで暴れまくってるんだ。迷惑ったらありゃあしない。だから追い払って欲しいんだ」

「おまかせください。この僕に不可能なことなどないので、すぐに追い払って見せますよ」

「ありがとう。じゃあ、地図を描くからすぐにでも頼む」

「え? あなたは一緒に来られないんですか?」

「あ、ああ。追い払うことに関わってるなんて思われたら嫌だしね」

 男の額からは汗が染み出してきていた。よほど、その暴走族達に会うのが嫌なのだろうか。



 ティキは、男から地図を受け取ると店の外に出た。そこにはティキ自慢の愛車が置いてあった。愛車とはいっても車ではない。この世界でのシェアは世界一。この世界の主要の乗り物『リバティー』と呼ばれる小型の飛空型のバイクだ。それは白く輝き、研ぎ澄まされたフォルムはまるでダイヤを思わせる輝きを放っている。

 ティキはそれに跨りエンジンをかける。エンジン音は凄まじいほどの快音を出す。それにまたがっているティキは、サングラスをかけるとハンドルを捻る。同時に左右にあるマフラーが火を噴く。しかし、このリバティーにはタイヤは存在しない。島である各国を自由に周れるように、空中を走るのだ。それは、空中を最高速度300キロで自在に飛び回る隼のような乗り物。ティキはそのリバティーに名前を付けていた。

 その名前は『ファルコン』。改造を重ね最高速度600キロを誇るティキの愛車の名前である。とはいえ、実は違法改造をしまくりなのだが。




 男が書いた地図の場所へとやってきたティキは、辺りを見回した。すると、辺りからリバティー特有とも言えるエンジン音が聞こえる。入り組んだ街中のとある一角のこの場所は、いくつかの家が密集していて、住人からすればそのエンジン音は騒音以外の何者でもないだろう。男の依頼ももっともだと思ったティキは、そのエンジン音のするほうへと向かった。


 そこは、少し開けた公園のような広場だった。そこには、リバティーに乗った何人ものいかにも暴走族ですと言わんばかりの人間が群れていた。ティキはファルコンから降りると、その群れへと向かって歩いていく。

「あ? 誰だあいつは?」

 ティキの接近に気がついた族の一人がティキのほうへと向かってくる。

「おい、おめぇ誰だよ? なんか用か?」

 ティキの目を睨みつけながら言う。ティキはその族の目を見て笑顔になる。

「ああ、お前らの頭に用があんだよ。呼んできてくれねぇか?」

「あぁ? 何言ってんだお前? 俺らの総長に用だ? 俺達が誰だか分かってんのか?」

 男はティキの顔に自分の顔を近づけて言う。

「分かってねぇのはお前らだろ? お前らに話したって仕方ねぇから頭を呼べって言ってんだ」

「なんだと! この野郎っ!」

 男はティキの服に掴みかかり、ティキを締め上げる。

「……一度しか言わねぇぞ」

「あ?」

「離せ」

 ティキは掴みかかっている男の目を睨みつけた。男はティキの気迫に押されるように、まるで蛇に睨まれたカエルのように動けなくなり、ティキの服を離した。ティキは、掴みかかられていた部分を手で払う。

「早く、頭を呼んでこい」

「てめぇ調子のんじゃねぇぞ!」

 ティキと男のやり取りを見ていた他の族達が、ティキの周りに集まってくる。ティキはため息をつく。

「やめろ」

 今にも飛び掛りそうな男達を止めたのは、その族達を率いるこの暴走族の総長だった。他の野生の獣のように殺気だった男達とは違い、これだけの人数をまとめているだけあってさすがといったところか、男は冷静そのものだった。

「ラルさん。でも……」

「わかんねぇのか? お前達が束になってかかった所で、この男にはかすり傷一つ付けられやしないさ」

「あんたが、頭か」

 ラルと呼ばれた男は一人前に出てくる。

「ああ、俺が頭だ。俺達になんの用だ?」

「俺はティキって言うんだ。ルティーっていう、まぁいわゆるなんでも屋をやってる。その俺の店に依頼があったんだよ。この辺りで噴かしている族共がうるさいから追い払ってくれってな。なぁ俺も無駄な争いは好きじゃないんだ。大人しくここから立ち去ってくれよ」

「……そうか。この辺りに住んでる人達には迷惑をかけちまったな。けどな、悪いがその頼みは聞いてやれそうにない。まだ目的を果たしてないからな」

 ティキはその言葉に疑問を浮かべた。

「目的?」

「ある男を捜してるんだ。そいつはこの辺りに住んでる。だからそいつを見つけるまでは、この場所から去るわけにはいかない」

 ティキは腕を組み、足の先をリズムよく上下させる。

「んーじゃあ、俺もそいつを捜してやるよ」

「……? 捜すって、あんたには関係のない話だろ?」

「いや、関係ないって言いたいんだけど、俺も報酬500万オーラムがかかってるからなぁ。なんとしてもお前らをこの場所から追い払わなきゃいけないんだよ」

 ティキの言葉にラルはハッとする。

「500万?」

「そうなんだよ。なんか見た目はパッとしない奴なんだけどな。依頼してきたと思ったら、いきなり目の前に500万オーラムもの大金が現れたんだよ。ビックリしたんだけど、お前らをこの場所から……」

 ラルは突然、ティキの肩を掴みティキを揺する。

「どこだっ! その男はどこだっ!?」

「お、おい。ちょっと」

「俺達が捜してるのはその男だ。あいつは、あいつは仲間を……仲間を殺しやがったんだっ!」

 

 男の声は、周りのエンジン音にも負けないくらい大きな声で、遥かな空に響き渡った。


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