【第1騒動:少年ソアル】
神様の気まぐれか、全パラメーターの潜在能力が限界値を振り切った少年が生まれた。
少年は、どんな職業にもすぐさま順応し、遂には都市伝説と化していた特殊職業を発現させた。
それにより、巷は少年の噂で持ちきり。
ただ、少年ソアルにはただ一点問題があり、人々はまだそれを知らなかった。
一方、当の本人ソアルはというと、少年から青年に成長し、4人一組のパーティを組み、あるダンジョンに挑んでいた。
そこは、緑宝のダンジョンと呼ばれ、洞窟の外から入ってきた陽光が緑色の半透明の鉱石の中に入り、乱反射を繰り返すことで、仄かな緑光が空間を照らし、幻想的な景色を作り出している。
宝石がキラキラと光っているように見えることから、名付けられた場所だ。
そして今は、ダンジョン攻略中のため、1階層には騎士団が常駐しており、冒険者や騎士ではない一般の人も、観光することが出来る。
観光するのはカップルが多く、騎士団員のカップルたちも休憩時間には、いちゃいちゃし、とてつもなく甘ったるい空気が充満していた。
そんな中、ソアルたちは最下層にて攻略を進めていた。
「ソアルさん、ちょっと待ってください!まだ騎士団の方たちが追い付いていません!」
ツインテールの少女が、パーティの先頭を歩くソアルの横までちょこちょこと走って追いかけ、声をかける。
「追いつけなければそれまで。ワタシたちが待つ必要はない。先に進む」
そんな少女に、一切目を向けずに真っ直ぐ前を向いて進むソアル。
「ソアルさん!もう!」
「やれやれ、しょうがないよ、ミルりん。あいつはそういうやつだ」
ミルりんと呼ばれた少女、本名はミネルバ・アライム。
青と緑の入り混じった髪をツインテールにした13歳の少女。職業は赤の魔法使い。
服装は、大きめの黒帽子に、銀製のステッキ、動きやすそうな赤黒いローブ。
いかにも魔女!といった雰囲気を醸し出している。
「ミルりんは最近入ったばっかだし知らないのも無理はないね、けど諦めな」
「え、でも、騎士団の方たちには共闘って」
「それは名目上、そうしようって言っただけさ。騎士団の連中もそんなんで、あいつを止められるなんて思っちゃいないさ」
そう言うと姉御肌の女性、マーム・ラインはなおも言い返そうとするミネルバを置いて、先へと歩いていった。
「はぁ〜憧れのパーティに入ったのに…これじゃ先が思いやられるよぉー」
ミネルバは、大げさにため息をつきながらも、前を歩く3人の後をちょこちょことついて行くのだった。