起きたら断罪の最中でした
なんとなくかいたものなので設定や内容がゆるゆるです。それをご理解していただいた上で暖かな、ものすごく暖かな目で読んで頂けたら嬉しいです( *¯ ꒳¯*)
「フォルミナ・クーリエ!!!今この瞬間で俺、カイゼル・フォン・ベールナーとの婚約を破棄してもらうッ!!!」
……あんた誰?
ーーーーー
突然変なところから始まってしまってごめんなさい。私も今気絶しそうなぐらい驚いています。
何があったかは取り敢えず置いといて、お前誰だって感じだと思うので自己紹介をしたいと思います。
私の名前は柳瑞奈。
生粋の純日本人家系に生まれた現在17歳。花のJK。
顔も体型も平々凡々。自慢出来るのは剣道、柔道、弓道…等の武道系が全国取れるくらいには強いことぐらいの平凡女子。
だったんだけど…
ここから最初の場面に戻りますね。
今何故か私は断罪というものをされている模様。
目の前にはいかにも頭の悪そうな顔をしたイケメンが右腕に可愛い女の子を侍らせて私を睨みつけている。
騙されてはいけないからもう一度繰り返そう。
『ものすごく頭の悪そうな』イケメンが女の子を『侍らせて』いるのだ。
なんというか気持ち悪い…
しかも女の子は女の子の方で怯えたうさぎのようなフリをしていながら私の事を侮蔑を含んだ瞳で見つめている。
私は思った。
こいつ絶対悪女だわ。と
夢かと思って思いっきり頬をつねってみたが効果はない。というか痛い。
「お前はマリーに散々嫌がらせをしてきたそうだな!!!今までは我慢してやっていたがもう我慢ならない!!!貴様は平民にでも堕ちるがいい!!」
落ちるも何も元から一般市民なんですけど?
嫌がらせって私に言われてもその女の子見たことも喋ったこともないんですけど?
そもそもあんた誰?
さっきっからお前とか貴様とか私にはミナっていうちゃんとした名前があるんですけど?
「はっ貴様自分の悪事を暴かれて何も言えないのか?どうせ王妃になれるとでも思っていたのだろう?」
は?何こいつ。めっちゃウザイ。
「さっきっからお前とか貴様とかうっさいんだよ!!!てかあんた誰?あんたみたいな女の子に騙されやすそうかつ馬鹿そうなやつ私の友達にいなかったと思うんだけど?!!しかも婚約破棄とか私誰とも婚約した覚えないしっ!勝手に言ってんだったら自意識過剰!!勝手な想像に巻き込まないでくれるっ?!」
あーすっきりした!!
でも…私の声ものすごく可愛くなかった?
よく小説とかで美少女とかに使われるまるで鈴を転がしたような声、っていうのがぴったり当てはまっちゃうくらいに可愛かったんだけど。
言ってることは全く可愛くないけどね。
「貴様ッ!!!誰に対して言っている!!?」
なんかめっちゃ怒らせちゃったっぽいですね。
…ギャーギャー煩いんだよ。
「あんた人のこと公衆の面前で断罪みたいなのしといて私の名前もまともに呼べないの??そもそも誰に対してってあんたしかいないでしょ!このとんちんかんの女好き馬鹿男!!あんたのせいですっごい注目集めてるんですけどっ?!」
そうなのだ。私は今この男…カイゼルとか言ったっけ?とそいつにくっついてる女の子と対峙する形で周りを野次馬に囲まれている。
野次馬たちの目には様々な感情が現れていた。
あるものはまたやってんのか馬鹿だなぁという呆れ。
またあるものには私に対する同情。
その中で1番多かったのはどうしちゃったんだこの人というものだ。
どうしちゃったも何も私あなたたちの方がやばい人にしか見えないんですけど…。
まず髪と目の色。
緑とか金とか紫とか自由すぎでしょ!
しかも服装っ!!
なにこれドレス???
キラッキラゴッテゴテこんなん着ててよく重くないなとしか考えられない程ゴテゴテなドレス。
それは目の前の女の子も例に漏れずでせっかく可愛いのに勿体ない。
ふと気付いた。肩が重い。
恐る恐る下を見た。
……は?
そこには私には縁がないと思っていたものがあった。
物凄い存在感でドカンと
藍色のシンプルなラインに銀糸の刺繍が入っている派手さはないが凛とした雰囲気のドレスに包まれてもなおその存在が主張を控えることは無いと見ればわかる。
しかもその存在の前に垂れている長い髪は銀色…。
体型はまさに妖艶の一言で髪は銀色という…もうエルフじゃん。
ここまで来たらもう驚きません。
これはどうせ夢です。夢なんです。
「さてはフォルミナ・クーリエ!!私との婚約破棄が嫌で気を引こうとしているのだな?!」
「は?」
何言ってんの?
「お前がどうしてもというのであればその美貌を買って側妃くらいにはしてやってもいいぞ!!」
…こいつ1発殴ってもいいかな?いいよね?
カイゼルの隣にいる可愛いマリーちゃん?がめっちゃふざけんなって目で見てますけど?
私の勘は正しかった。こいつは女の敵だ。
「私が側妃…?」
あくまでも警戒されないように笑顔でゆっくりとバカイゼルに近づいていく。
我ながらなんて素晴らしいネーミングセンスだろう。ピッタリではないか。バカイゼル。
そんなことを考えながらも優雅に歩を進める。
バカイゼルのほんの1m前まで来て私は歩みを止めた。
どうやって殴ろうかな?
ここはやっぱり女からの復讐ってことで王道の平手打ちか。
…うん、そうしよう!!
手のひらをグーパーと体操して構える。
構えると言ってもたっているだけなのだけど。
「誰が貴様みたいな可愛い女の子に鼻の下伸ばしてるようなクソ男の愛人になんてなるんだよっっっっ!!!!!!!!」
バッチーンッ!!!
ザワザワ!!
王太子に平手打ちをするというとんでもないことをしでかした当人である私は周りの空気など関係ない。
はーすっきりした!!!
そう思って周りを見ると私達を囲んでいた人達の中から知っている人物が出てきた。
真っ白な淡く光る長い髪を編み込んで背に垂らし、直接顔を見ることを躊躇ってしまうほどに美しい顔は胡散臭い微笑みを称えている。
しかも瞳の色は人離れした美しい色彩を放ち見る角度によって様々な色に変化していた。
察しのいい人は気が付いただろう。
この人が私をこの会場、この体にした張本人。
神様といえば伝わるだろうか。
「ミナ。僕の質問の答えは出たかな?」
と、言いながら微笑む。
キャーとかいう外野の声がうざったい。
「神様には悪いんですけど私、自分より美しい人と並ぶの嫌なんですよね。なので無理です。」
私は取り付くしまもなく一刀両断した。
あー皆さんにはなんの事やらさっぱりですよね。
簡単に説明すると、前世っていうところで私は死んでしまってですね、天界という所に行ったんですよ。
支離滅裂なこと言ってんじゃねーよと思った人は正常な人です。はい。
でもこれ真実なんですよ。
そこでこの人に私、なんかものすごく気にいられてしまってですね。その場で求婚されたんですよ。
んでもって私は上で言ったことをそのまま伝えたら君も美しければいいんだね?って言われたと思ったら気がついた時には一番最初の断罪の場面で…
っていうことなんですよ。
いくら神様だからってふざけんなって感じですよねー。
「今ちょうど婚約破棄されたんでしょ?このままだと君はこの国で大罪人になってしまうんじゃないかな?そこのバカイゼルってやつ王太子みたいだし。でも僕だったらこのアホみたいに君に不快な想いをさせないし、君を幸せにすると誓うよ。」
うぐっ!!
確かに…。
よくよく考えたら私って転生…しちゃったんだよね。
もう否定できないくらいに私の前の記憶が消え始めてこちらでの記憶が徐々に蘇ってきている。
その思い出した記憶からしてもこの世界で生きていくことは無理そうだ。
あぁどうしてこんなことになってんだろ?
世の中理不尽じゃありません?
しょうがない。腹を括ってやろうじゃない!!
「受けてたってやろうじゃない!!!いいわ!!結婚しましょう!!」
ざわっ!!
なんだよ外野!!いちいちうるさいわね!!
わたくしが結婚するのがそんなにおかしいのかしらっ?
「本当っ?!!じゃあ早速式の準備をしなくては…!!ミナはどんなのがいい??」
はぁ子供っぽいんだから。
「おいお前っ!私の婚約者に何を勝手なことを言ってるんだ!!」
あ、こいつ死んだな。
「へーフーンバカイゼルそんなことを僕に言っちゃうんだ。へー。…おい国王。」
「はっはいッ!!なんでございましょうか?!」
うわ国王急に出てきたんだけど…何なの?黒子?
「こいつがこの国の王になる限りこの国は衰退する。それだけは心に留めておいて。あーそれと、いるだけでも不作が続くかもね。」
ニコッ
…最後のニコッ、が1番怖いですわっ!!
なんなんですのっ?!
あとさりげなく近ずいてきて腰を抱き寄せるのやめていただいてもよろしいかしらっ!って言いたいところだけど…今触られるまで柳瑞奈としての記憶が無くなりかけてた。
嘘っぽいけど本当に。
何事も無かったかのように消えてしまった。
楽しかったことも苦しかったことも大好きな親友のことも全部。
そんなことってないと思う。
こうやってみんな生まれ変わっていくんだ。
私ももし神様に求婚されていなかったら失ってしまっていたはずの記憶。
感謝…した方がいいよね。
これだけあからさまに好意を示してくれているのに私が不誠実では人としてダメだと思う。
よく見たら、いや見なくても美しい顔だし好きになる努力はいつかきっと努力じゃなくなるかもしれない。
そんな日が来たらいいな。
…なんで私こんな思考回路になったんだ?
いつこんなに優しい聖女みたいな考え方ができるようになったんだろう?
そもそも何がどうなってこう…ねぇ。
あれか、神様に触れたことで心が菩薩化したとか。
だとしたらもう好きになるとか諦めそうだわ。
「えぇぇ!!なんでっ!諦めないでもう少し頑張ってよ!!」
は?
「あっやば」
あっやば、じゃねーよ。
「人の心をさり気なく読むのやめてもらっていいですか?プライバシーの侵害です。」
こんなやつもう知らないわ。
…いくら悲しそうな顔をしたって知らないから。
うぅぅぅなんか私が悪いことしたみたいじゃない!
「ごめんなさい…」
ぅ…
「はぁ次からやめてくださいね。」
私は神様のこの顔に弱いのかもしれない。
この顔をされたらなんでも言うことを聞いてしまいそうだ…
「それじゃあこの国にもう心残りはない?ミナ?」
勿論あるわけないじゃない。
…あ
「マリーちゃんだっけ?どこ?」
ちょっとやりたいことがあったんだよね。
「あの女だったらそこからさり気なく逃げようとしてるよ」
本当に逃げようとしてるよ…
どうせ王太子の地位目当てで近寄ったってところだろう。
ならば尚更。
私はマリーの逃げようとする腕を掴んで口に耳元を近ずけ囁いた。
「覚えておきなさい」と
その時のマリーの顔色と言ったら…凄かったわ。
そして神様…エルは私を連れて天界へと向かった。
神様には名前が無いっていうから勝手につけたものだけれどこの名を読んでいいのは私だけらしい。
ちょっと嬉しいかもしれない。
幸せになれるといいな。
ーーーーー
その後フォルミナは天界で式を盛大に執り行い正式に神様の妻となった。
なんだかんだ言って神様のことを愛したフォルミナは3人の子供を産み、育て上げた。
天界へと籍を置いたフォルミナが老いることはなく、神様が神位を息子達に譲らない限り死ぬことも無い。
このフォルミナ婚約破棄事件の後680年の時がたった時長男に神様が神位を譲ったそうな。
そしてそれはそれは幸せそうに2人で消滅したとかなんだとか。
それは神のみぞが知る話。
この事件の後王太子とその愛人マリーは神の愛し子を愚弄したとして処刑されたとか…。
めでたしめでたし。
読んで頂きありがとうございました!!(ノ_ _)ノ