1話 恋する月曜日①
私がまさか『女の子』に恋をするだなんて…。
一体いつどうやったら予測出来ただろうか。
今まで生きてきた中で数多の男と付き合ってきたけど何も感じなかったのに。
今はどうだろう、頭の隅から隅まであの子のことで埋め尽くされていつの間にか顔は真っ赤だ。
長い黒髪、色白の肌、ジャージの袖から見え隠れする小枝のように細い指。
柔らかいがどこか鋭さも併せ持つ視線が私を心の中で射抜く。
「私何してるんだろ…はは…。」
自分で自分が分からずに嘆いていると、私の手に柔らかな肌が触れた。
「海ちゃん…大丈夫?」
顔を上げるとそこにいたのは楓花…ではなく高校で出来た数少ない女友達である夕日 八重であった。
八重の優しさに目頭が熱くなるが、必死に飲み込み穏やかな笑みを浮かべる。
「どうしたの…?はっ…また男の人!?危ないよ…!?」
「ふふっ…大丈夫…ありがと八重…。」
誤魔化すように八重の温かい体を抱きしめる。
こんなふうに楓花のことも抱きしめられたら…。
そんなふうに思うのだった。
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同日正午を回った頃の話。
いつものように私橋本 さやと友達の毛馬 楓花はゲームをしながら他愛のない話をしていた。
「んなぁ橋本ちゃん?」
「んー毛馬ちゃんどした?」
「最近気になることがあってさ?」
「おーなんだ?」
ここまで言って毛馬ちゃんはきまりが悪そうに髪をくるくると弄り始める。
「あのさ…最近井上さんに見られてる気がするんだけど…。」
「まさかw 勘違いじゃなくて?」
「でも…最近頻繁に視線感じるし…今も見られてると思うとさ……。」
気疲れした毛馬ちゃんの顔を見るとどうやら嘘ではないらしい。
彼女の背中のほうを見てみると確かに井上さんが「熱い眼差し」を向けていた。
「ねぇ橋本ちゃん私どうすればいいと思う??」
「ん…。どうだろ。」
「私あの人正直苦手なのよ。軽そうっていうか、何となくビッチっぽいなって思って。関わったら面倒なことになりそうだから関わりたくもないの…。」
「あーーーなるほど?」
適当に相槌を打って誤魔化す。
幸い彼女は気がついてないようだが私の中ではある予想が脳内を駆け巡っていた。
____まさか井上さんは毛馬ちゃんのことが好きなのでは?
それが本当かどうかを知るのはまた後の話であった。