凍れる町/冬行軍【詩】【冬の詩企画】
【凍れる町】
雪が刺す 凍れる指
頭上を仰げば
天は低く雲は重くなってゐる
ああ 風が厚い布地を通り 体を突き抜けてゆく
雪は 手を 耳を ほほを じくじくと刺す
長く縮めてゐた所為で肩が凝ってしまった
来し方を思ふ
この白きは何ぞ
何ものぞ 吾が視界を遮るは
例へば幼き稚児であった頃
そは清き歌であった
天女の衣ずれの音楽であった
今なほ聞こゆるものか
再び聞こゆるものか
雪は吾が記憶の四辻に降積もる
(其のやはらかなる夢は やがて消えん)
空にまどふ指を透いて見ゆるは
凍れる 町
凍れる こころ
【冬行軍】
その年
渡り鳥をはじめて見た夕暮れ
埋立地に整列する倉庫群が
息をそろえて足踏みしています
その銃口から放たれる金属音が
空へ空へと追いかけていきます、隊列を
姿は見えねど冬の軍靴
きんと鋭い将軍の眼光
沖へ沖へとせきたてます、隊列を
羽毛おどろに
宙を裂くはばたきが聞こえてくるよう
駆け足いいいいいいい 進め!!
ざっざっ!
2008年制作。
本作は「冬の詩企画」参加作品です。
企画の概要については下記URLをご覧ください。
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1423845/blogkey/2157614/(志茂塚ゆり活動報告)
なお、本作は下記サイトに転載します。
http://huyunosi.seesaa.net/(冬の詩企画@小説家になろう:seesaablog)