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転生者を探せ! 乙女ゲーム世界破綻対策本部局 新人かがやまちの場合  作者: 家具付
三章 封印されていた異世界

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幕間 大昔の約束

小さい頃に、おばあちゃんにきつく言われていた事がある。


「いいかい、この世には見ても認識しちゃだめな物がある。そんな物をうっかり見てしまったら、あんたは絶対に見ないふりをしなくちゃいけない」


「見ないふりをやめたらどうなるの?」


「あっという間にそちら側に丸呑みされちまうよ。いいかい、絶対に見なかった事にするんだ。見ても見なかった事にしちまえば、後はあちらとそちらの根比べになる。いいかい、平和な人生が欲しかったら、あんたは絶対に負けちゃいけないよ」


小さい頃、おばあちゃんの膝の上で聞いた話だ。まだサバイバル大会にも参加できない小さな親戚達が、ほかの家族達が帰ってくるまで、おばあちゃんの家でおばあちゃんのお世話になっていたんだ。

私はその中でもおばあちゃんが心配になる様な、危なっかしい子供だったから、いつでもおばあちゃんは私から目を離さなかった。

ほかの親戚達も、うっかり川に流されそうになったり、狸について行こうとする危なっかしさ満点の私の事を見張っていて、危なくなったらおばあちゃんを呼んでいた。

この話を聞いたのは、たしか、たしか。


「あんたはあんまりにも、そちら側に好かれやすすぎる。今時それだけ好かれたら厄介だ」


ああ、知らない男の子に、川の中にある、不思議な神社に遊びに行こうと誘われて、気付いたらおばあちゃんに小脇に抱えられていた日だ。

あの時は小さかったし、その神社のおかしさなんてわからなかったから、遊びに行っちゃだめだと言うおばあちゃんや、どこに行くのと止めてくる年上の親戚達にふてくされていたのだ。

そして、あんまりにも機嫌を損ねたから、おばあちゃんが膝の上に特別に乗せてくれて、お話をしてくれたのだ。

おばあちゃんの膝は争奪戦になるから、それなりの年齢になったら乗らないと、皆におばあちゃんが言い聞かせていたのに。

あんまりにも私がすねてすねて仕方が無かったから、おばあちゃんが特別なお話をすると言って、膝の上に乗せてくれたのだ。


「見ないふり、聞こえないふり、知らないふり。みざるきかざるいわざる。この世と違う場所の相手には、これが絶対に必要になる。古代からの忠告は確かなんだよ」


おばあちゃんの言った言葉の意味を、当時はわからなかったけれども今なら、よくわかる。

それは確かに、真実だった。





「……」


私はどんと室内にそびえ立っている謎の扉を横目で見た後に、何も見なかった顔をしてあくびをした。

その扉の存在を、一人きりの室内で口に出してはいけない。どう何に聞かれるかわかった物じゃないからだ。

知らないふり、見えないふり、聞こえないふり。

私もだいぶそれが上手になったと、おばあちゃんは褒めてくれるに違いない。

扉なんて知りませんって顔をして、身支度を済ませて、私は今日も乙ハタの総務の手伝いに回る。

私の探知機の修理が、なかなか終わらない結果だ。じょなさと先輩が特別に仕立てたそれなので、ほかの探知機よりも修理に手間がかかるのだろう。

ちらっと左手の手の甲を見ると、貫通した傷跡がくっきり残っている。

あおやどまがる先輩も傷跡が残っているで、深い傷の何割か少数は、跡が残ってしまうのだろう。

私はそれを見ないようにするために、よいしょと指先のあいた紫外線を防ぐ長い手袋を装着する。日本で見られても、違和感の無い装備品なので、これは結構重宝するのだ。

どの季節でも紫外線が嫌いなのだという調子でいれば、傷はいくらでもごまかしがきくという奴だ。

総務課に入って、すぐに探索班の持ってきた情報と、解析班の分析や解析がされた情報を照らし合わせて、どれがどう作用しているかを確認するのも総務課だが、私に回されてるのは、有給を使わなくちゃいけない人に、有休を使うように連絡したりする、まさに雑用だった。

雑用が居なければ世界は回らないので、そう言った細かい仕事もたくさんある。

解析班に新しい情報を渡す場合もあるし、強制帰還装置の作動をしなくちゃいけない時もある。

私は探知機が壊れているからと、扉のある転移の部屋への出入りが禁止されているため、そちらの手伝いは出来ない物の、解析部と総務課を行き来する雑用は一手に引き受けている。

それくらいしか出来ない新米というのも大きかった。



「”最初の一人発見しました、転移装置作動します”!」


「”承認しました”実行部隊を転移させます!」


そう言った声が入り乱れて忙しい。いくつもの世界が助かっても助かっても、新たなる世界の危機がやってきて、乙ハタの仕事が楽になる事はしばらく無いだろう。

私は戻ってきた実行部隊の人のために連絡事項を連絡したり、怪我をした人を扉の外で待ち構えて、担架で治療班の所に引っ張っていく手伝いをしたり、とにかくしばらく毎日駆け回っている。


「お前はどこに居てもそれなりにやっていけるのがすごいな」


と褒めてくれたのはめちすばず先輩である。先輩は探索班歴が長いので、総務の仕事を手伝うときに足手まといになる事もあるのだと言っていた。


「捜索班の暗黙の了解が通じなかったりな」


苦笑いをしたのはやかぶ先輩だったりする。この人も歴が長いと言っていた。


「ここより福利厚生のいい給料のいい仕事場が無い。オレには」


そうとも言っていた。

私は今日も担架を引っ張る仕事を手伝い、横目に見えたあり得ない扉を黙殺する。

私は何も見ていない。きっとあれは見えちゃいけないし語っても行けない物。

……あとから考えると、誰かに相談した方がいい物だったが、おばあちゃんとの約束があった私は、自分が言わなければそれでよし、と思ってしまっていたのだった。


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