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転生者を探せ! 乙女ゲーム世界破綻対策本部局 新人かがやまちの場合  作者: 家具付
三章 封印されていた異世界

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こればかりは予測不能

「日本風ごちそう」


アルヴィダの館での食事は立食方式で、皆立って食べて談笑している。意外だったのはここで血の気の多い海賊達が、争わない事だった。

その代わりなのか、自分の今の一番のお気に入りを自慢して火花を散らしている。


「こいつはべらぼうに美人だろう?」


「うちのが最強の美女だ」


「俺の女が一番髪の毛が綺麗に決まってんだろう!」


「自分のこれはと思う女性は本当に聖母のような女性で」


お気に入りが、全員女性というあたりで、男達が自分の彼女を自慢したい、日本の男子学生の乗りに似たものを思い出させた。

彼女自慢をしたいのが、男の性質なのだろうか。逆に彼女を下げる男も無数にいるわけだが、ここの海賊達は自慢しまくりたいらしい。

そして女性達も、自慢されるに値する、大変な美女や可憐な美少女揃いで、私は芋でしかない。この芋を連れてくるよりも、美女を連れてきた方が恥ずかしくなかったんじゃ無かろうか。

そう思いつつ、私は速やかに食事の方に近付いて、海賊達のマウント合戦から遠ざかった。

遠ざかるの大事、絶対。

そして立食の中身が、異世界よりも地球風とすぐに察する事が出来て、私は戦の前の腹ごしらえとしていくつかつまみ、味付けも日本風だな、とちょっと懐かしく思いつつ、館の億に潜り込めないか、様子をうかがっていた。

アルヴィダは、どう動くかと見ていると、イケメン海賊達に声をかけてしなだれかかってるのに、皆扱いがちょっと雑だ。海賊だから雑なのかもしれないし、お気に入りに不快な思いをさせて嫌われたくないから、邪険な扱いなのかもしれない。


「……探知機は鳴らない?」


この距離で鳴らないのは何故か。私は物陰に隠れて、探知機を引っ張り出した。


「やべえ、サイレントモードにしっぱなしだった」


港町でびいびいと目立つ音を鳴らせない事情から、サイレントモードにし続けていたのだ。


「これどうやって音を鳴らすんだっけ」


私はしばし物陰で、すっかり使い方の半分を忘れた探知機と格闘をし……どこかのボタンの一つを押せば、ガイダンスが流れると言う事を思い出して、こそこそとそれを鳴らして説明を聞き、サイレントモードを解除した。

そして物陰から宴の会場に戻ると、そこにはアルヴィダがいない。

逃げられたか。だったら追いかけると言う選択肢が必要だ。


「……こちらかがやまち。これからアルヴィダ追跡に入ります」


私は口元に探知機を当てて、小さな声で呟く。咳き込んだという調子に見せての行動だ。だから誰も疑わない。海賊達の葉巻の煙で、女性の数人は咳き込んでいるのだから。


「お、シンの連れてきたガキじゃねえか。あいつこんな趣味が合ったんだな」


「どなた?」


「すげー! 見た目泥臭いガキなのに、初手からどなた? とかとんでもない落差だな!」


追跡に回ろうとすると、一人の海賊が声をかけてきて、剣呑に返すと豪快に笑われた。


「アルヴィダさんを探したいんだ。是非ともこのおいしい料理を開発するきっかけを聞きたい」


「あ? 今は行かない方がいいだろ。シンの事捕まえてたから、今頃しっぽりやり始めてるだろうからな」


「……ここの海賊は皆そういう事をした事があるって空気だ」


「出資者としてのアルヴィダは優秀だからな。適度にご機嫌を取っておくのが吉ってやつだ。でもうっとうしいからな、あんまり懇ろな仲になるのはよくない」


そのイケメン海賊はそう言った後に、私の首元に赤い斑点がある事に気付いた様子だった。

それから、あからさまに言わなきゃ良かったという顔をした。


「お前らまじかよ、そんな関係だったのかよ」


「邪推はどうだっていい。……アルヴィダさんはどっちに行くのが決まってる? しっぽりやる場所は決まってる?」


「夫の浮気に殴り込みに行く女って顔してるぜ……まあ、シンが紅葉の痕をつけてんのも面白そうだからな、おい、アルヴィダってどこでやるか覚えてる奴いるか?」


海賊がそう言うと、ほかの海賊達も面白い事が始まると言う顔をして、近付いてきて、私にいくつもの情報をくれた。

それらを統合すると、二階の一番豪華な部屋で、イケメンと混浴してからのしっぽりを、アルヴィダがお気に入りにしているという結果になった。

だから私は、彼等にこう言った。


「いまから殴り込みに行く。……着いてくるとアルヴィダさんの機嫌をあなた方が損ねるはずだから、自分達の利益と興味を天秤にかけて行動しろよ」


「お前、熟練の占い師みたいな口調だな」


「はっ、新米占い師だけどな」


そう言って私は、アルヴィダの関係者が最初の一人なのか、それともアルヴィダこそ最初なのかを確かめるべく、彼女とシンが向かった先に、行く事にしたのだった。




通路は迷いそうだったが、海賊達の情報からなんとか到着できた。途中で捕まえた使用人の人に、困り果てたちびの顔をして、こう聞いたのも効果があった。


「人によって気持ちが悪くて帰りたい、でもシンに何も言わないで帰ったら斬り殺されちゃう。一言声をかけたいから居場所が知りたい」


海賊の残酷さをよく知っている人達は同意してくれて、場所を教えてくれたわけだ。

その結果私は、めちゃくちゃ豪華な扉の前に到着した。

気配を探ればいいだろうって思うかもしれないが、館の扉が多すぎて、気配を探っての進路検索が厳しかったんだ。サイレントモード解除の後にやってみて、迷子確定だったから人に聞いたんだよ。

気配を探るのは、部屋の扉を開ける最短ルートまではわからない。だだっ広い海なら方角がわかるとかで進めるし、人を目の前にしたらその人に着いている気配とかであれこれ出任せが言えるけれども。それに……人に聞くのは、アルヴィダが違っていた時の保険だった。

こういう話を聞いたちび助が、血相変えて飛び出していったという話を作っておいた方が、後々便利だ。

情報は適当に引っかき回す物を用意した方がいいわけである。


「ここか……もうすでにおっぱじめてて気配読まなくても感じる」


豪華な扉の前で、ちょっと神経をとがらせるだけで、室内でぬれた音がするのが伝わってきそうだった。

私はキャプテン・シンがほかの女の人と組んずほぐれつをするのが嫌というわけじゃない。

だって相手は海の荒くれ者の海賊だし、そういう関係の女性をいっぱい持ってても変な話じゃない。

ただまっただ中に突入するのは嫌という、普通の感覚があるだけだ。

しかしそれをねじ伏せて、私は扉を開けて、周囲を見回し、大きな寝台の上で絡まろうとする二人の男女を発見し、実行部隊を呼び出すための範囲まで近付いて……びいびいと、探知機が音をがなりたてた。

当たりだ!

私はそう思って、探知機を取り出して、実行部隊を呼ぶための紐を引っ張ろうとし……


「だめだ」


何が起きたかわからなかった。


「……え?」


気付いたら手の中の探知機は吹っ飛ばされて……いや、ちがう。


「ぐ、あっ……!!!」


私の片手の探知機ごと、ナイフで手のひらが貫通されていた。

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